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監獄惑星  作者: 猫文
博士
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遭遇

中年らしく少し贅肉のついた体、栗色の髪、八の字の眉毛と下がった目尻、温和な声。

目の前に銃器を持った大男が立ち塞がっているのに、手を白衣の後ろでゆったりと組んでいる様は、どちらが凶暴か判断を鈍らせる光景だった。


――何者だ?。

白衣の男を見た二枚目の彼は、心に冷たいものを感じていた。


「この車を占拠したんだよ」

「そのようですね」

正に暖簾に腕押しであった。


――これはヤバイ。

危険を察知した細目の彼は

「取りあえず逃げたいんで、発進させてもらえますか~」と慌てながら白衣の男にお願いしてみた。

後数秒したら、白衣の胸倉を大男が掴んでいただろう。


「かまいませんよ、――船長、お願いします」

細目の彼に軽く頷いた後、乗組員へ声をかけた。


「よろしいのですか」

「はい」


警戒を解いた乗組員たちは持ち場へ座り計器を操作し始めた。



「さて、代表の方はどなたですかね」と改めて問われた囚人たちは、今更ながら決めていない事に気づかされた。

「こいつでいいぞ」と大男は顎で細目の彼を指名し、特に反論の無い囚人たちも了解とばかりに頷いた。


「では、改めて要望をお伺いしましょうかね」


「ゴホン」と、わざとらしく咳払いてから、代表なんて肩書きにされ、若干緊張気味に話し始める細目の彼だった。


「目的は1つ、脱獄したいのさ」

「おめでとう達成できましたね」


思いもしない白衣の男の切り替えしに慌てながら

「え……、いやいやいやいや、そうじゃなくて、んんん何て説明すれば」

頭をかかえながら悶絶していた細目の彼は閃いたらしく、

「目的は一つ、この惑星を脱出したいのさ」


――イラッ。

ドヤ顔している細目の彼に対し、二枚目の彼は――たいした閃きじゃないよ――と不機嫌な顔をした。


「ふむふむ、と言う事はシャトル発着場まで送り届ければよいですか」


グッと、握った拳の親指を立ち上げその通りですと意思表示のジェスチャーをする細目の彼。


「あ、迫り来る脅威の排除もお願いしたいのさ」

「私どもに戦闘なんて無理ですよ」

「一昨日、新兵器の開発って……」

「ええ、話しましたね開発中ですよと」

言葉の続かなくなった細目の彼が、助けを求めるような眼差しを二枚目の彼に向けた。


「武器になるような物は無いんですか」

二枚目の彼の精一杯の助け舟。


「武器ねえ……」


「隠してんじゃねえぞ」と痺れを切らした大男ががなりたてる。


「そうですね、実際見て貰ったほうが話しやすかもしれませんね。

 ハンガーへ案内しますので付いてきてください」

そう言った白衣の男は、皆を先導しつつブリッジを後にした。


イモムシの一番大きなブロックが先頭車両で、最上部がブリッジになっていた。

その下の殆をハンガーが占有している。



ハンガーに到着した白衣の男は、同行して来た囚人たちを整備台の前に案内し、

「これが開発中のMSなんですよ」と告げた。


――人型のMS……だろう。

それは二枚目の彼の率直な感想だった。


なぜならば、手足があるべき場所に何も無く、ボディーからはケーブルが何本も垂れ下がっていたからだ。

白衣の男が回答に戸惑っていた理由も理解できた。


全高はおよそ15m、足が無いので正確な長さが表せない。

頭部はスカイブルーの目が左右にあり人間に近い印象、白いヘルメットに真紅の角が2本。

コバルトブルーのボディに脇の下にはダークイエローの排気口が付いていた。


ほぼ無音に近い作動音でMSの胸部装甲が上に開いていく。

その下には人が出入りできる穴が開いていた。おそらく搭乗口だろう。


整備台に固定されているオープン型の作業用エレベータが搭乗口の手前まで移動した。


その場にいた囚人たちが搭乗口に注目していると、中からライトブルーのパイロットスーツを着たやや小柄な人間が降りてきた。


エレベータに降り立ったパイロットがヘルメットを外す。


二枚目の彼は一言つぶやいた。



「女の子か」



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