勧誘
「知ってると思うけど、この惑星は天然の牢獄さ」
ニヤついていた顔が若干真剣になった細目の彼は話を続けた。
「吹き荒れる砂嵐の影響で草木も生えない荒野、施設の外に逃げたって数日後には乾燥ミイラの完成さ。自殺志願者を止めるほど看守様は暇じゃあない、そんなだから外に見張りなんていやしない、施設の外に出るのは楽なのさ」
これまでの説明は服役期間の短い二枚目の彼も理解していた。
「この惑星唯一の玄関口であるシャトル発着場までは数百キロ、給油なしで走破できる距離じゃあないさ。点在するプラント間の往来なんて食料運搬車ぐらいなもんさ」
「食料運搬車は銃座付きの装甲車です、奪うのは無理でしょう?」
確認するように眼鏡の彼が質問した。
「その通りさ、仮に奪えたとしてもシャトル発着場の門前で蜂の巣にされるのがオチさ。私が目をつけたのは別の車両さ。数日前から巨大なプラントが逗留しているのを知らないか」
「ああ、それなら知っている。巨大なイモムシだろ」と二枚目の彼が答えた。
大中小と並ぶ3つのブロックで構成された構造物が連結されており、各ブロックはキャタピラ付きなので移動が可能なようだった。
「面白い例えだな」と、またニヤニヤしはじめた。
「そう、そのイモムシなんだけど、どうやら兵器開発プラントらしいのさ」
何かを言い出そうとした眼鏡の彼にまあまあというジェスチャーで落ち着かせ
「先日、私は看守に連れられて中に入ったのさ。そこで簡単な質疑応答と検査を受けたんだけど、それは新兵器のテストに必要なサンプルとして適合するか調べてたらしいのさ」
「サンプルって何だよ」不可解な顔をしながら二枚目の彼が質問した。
「新兵器のサンプルって言うんだ、きっとパイロットさ」
「おい、その話俺もかませろ」
細目の彼と背中合わせに座っていた隣のテーブルの囚人が、振り向きながら話に割って入ってきた。
スキンヘッド、日照時間の短いこの惑星には似つかわしくない焼けた肌(黒人ではない)、筋肉の隆起した太い腕に厚い胸板、2mに近い身長に大きくウルサイだみ声。
そんな大男が、――断るわけないよな――と威圧感を剥き出しにしながら細目の彼の隣へ座った。
「あ、ああ、問題ないさ」
若干顔が引きつりながら細目の彼は、
「作戦はこうさ……」