表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
監獄惑星  作者: 猫文
キツネ
2/28

不満

「刑期は満了しているんだ、それなのに……」

短く切り揃えられたブロンドの髪、人目を惹きつける二枚目、青い正義感丸出しの声、作業着の上からでも判断できる鍛えられた逆三角形の体、その全身から若々しさを溢れさせていた。

そんな彼が昼食を口にしながら愚痴をぼやいていた。


食堂の一角、6人掛け(3×2)のテーブルに二枚目の彼は腰掛けていた。

室内は食器、椅子、テーブル、人の声がオーケストラを奏で、落ち着いてランチを楽しむ雰囲気ではなかった。


「ここへ来て日が浅いのかい」

食事の乗ったプレートを運びつつ隣へ座った囚人が聞いてきた。


少し伸び始めているダークブラウンの髪、不精ヒゲ、優しさを含んだ落ち着いたトーンの声、少し背中を丸めているが二枚目の彼とはそれほど身長は違わない。年齢は5歳は離れているだろう。

一番の特徴は眼鏡の片方のレンズが外れているところだった。


「ここへ来た者は必ずその言葉をこぼすんだ、私は1年前だったけどね」

自嘲的な笑みを浮かべながら彼は続けて、

「看守にかけあっても相手にされない、追い返されるだけです。ここは同じ境遇の連中が集まっているんですよ……。皆さん死んだ魚のような目をしているでしょう、諦めてしまっているんです」と目を細くしながら淡々と語った。


「そんな事が許されるのか」


「許すも許さないもありません事実なんです、きっと親族には死んだと伝わっているんでしょうね」


――ああ、この人も諦めてしまったのか。

そんな事を考えながら二枚目の彼の拳はスプーンを硬く握り締めわなわなと震えていた。



「良くある光景だねえ」

食事の乗ったプレートを運びつつ2人の正面に座った囚人は、ニヤニヤと笑いながら話しかけてきた。


元気に立ち上がったライトブラウンの髪、いつも笑っているだろう上がった口角、常に人を小バカにしたような声、身長と年齢は二枚目の彼と大差なかった。

特徴的なのは、開いているのか閉じているのかわからない細い目だった。


「あ、気分を害したのなら謝るよ、私もその1人だったからさ」と、まだニヤニヤしながら話を続けた。

「その怒りの矛先これから探すんだろ、暴れてみるかい?、止めはしないよ発散は大事さ~。――反抗的な態度は刑期が延びるかも?、大丈夫さ~心配ない、ここの刑期は全員終身さ~」


慰めてるのか、貶しているのか、煽っているのか困惑している二枚目の彼を見つつ

「数ヶ月もすれば死んだ魚の仲間入りさ」


「俺は仲間になんてならない、諦めるものか」

叫びたいのを必死に耐えている様は、隣に座る眼鏡の彼にも共感できた。


「そこでだ、私に良い考えがあるのだけど」

人差し指をクイクイと動かし近くに寄れとジェスチャーをしている。

明らかに怪しいという表情を隠すことなく、しかし興味のある二枚目と眼鏡の男たちは顔を近づけた。



「脱獄しないか」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ