食料
クラブとの戦闘があった翌日、ブリーフィングルームに適合者が集められていた。
「タイガー君は残念でした……」前に立つ博士は黙祷でもしているかのように目を閉じていた。
部屋の後ろのほうに座っている神父は十字架を額に当てなにやら唱えている。
「なんであのとき、コックピットハッチは開いたんだ」スターが首を傾けながら博士に質問した。
「整備不良ですかね、なにせ開発中の機体ですから」
目の上のタンコブが取れたような、晴れやかな笑顔でキツネが、
「いいじゃないか、静かになってさ」と。
「あんなヤツ、いなくなって正解なんだよ」静かな部屋に小さくつぶやく声が聞こえた。
初めてネギの声を聞いたかもしれないと、その場にいた人たちは思った。
――こいつ、タイガーと何かあったんか?
その神経質そうな声に敵対心が含まれているのをキツネは感じ取った。
「――さて、相談があるのですが」タイガーの事など既に記憶から抹消したかのように次の議題へ移る博士。
「食料の備蓄が不足しています」
ざわっとする室内。
MSが襲ってくると聞かされるより驚いただろう。それほど、この惑星では食料は重要な位置づけなのだ。たとえ不味くてもだ。
「そもそも職員だけの予定でしたし、採掘プラントにいれば補給を受けられました。しかし今は逃亡の身、補給を受けるのは事実上無理でしょう」
そこにいた囚人たちは博士が何か良いアイデアを出すだろうと次の発言を待っていた。
「そこで――」博士がキツネを指差す。
「え?」
「そこで――」博士がモノクルを指差す。
「食料運搬車を襲う?」
「さすが囚人の皆さん、罪を恐れぬ所業ですね」さらにわざとらしく、
「そうですね、研究所としては脅されたので、仕方なく皆さんの要望にお答えしましょう」
――イッラァッ
スターの胸に何か込み上げる物があったが、背に腹は変えられない。込み上げた物を何とか落ち着かせた。
「食料運搬ルートの情報は監獄側の管理で、研究所も把握しておりません。そこで食料プラントが見える位置まで移動し、出てきた車両を追いかけるというプランでいこうと思います」
他に良いアイデアもなく、誰からも反論は出なかった。
「次に鹵獲したクラブですが、Gの足に取り付けようと考えています。設計図が完成したらまた力仕事手伝ってもらいますよ」
「働かざる者食うべからずだな、了解さ」キツネが返答した。
研究所の進路が食料プラントに向けられ、Gの改修が職員と囚人総出で行われた。




