プロローグ
高さ10mを超えるMS、その肩に生えているパイルドライバー(杭打ち機)から巨大な杭が射出された。
ひしゃげる金属音とともに杭が相手の体に飲み込まれていく。
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昼食を告げるサイレンが響き渡る。
「ふう、やっと昼飯か」
甲高い騒音を撒き散らしていた採掘機器を停止させ、軽く伸びをした中年男性がつぶやいた。
ここはチタニウム含有量の高い鉱石が採掘できる坑道。薄暗い天井には等間隔で点灯する薄いオレンジ色の光。鉱石を運び出す台車が線路上に放置されていた。
囚人に配給されている屋外用作業着の手袋を外しながら、出口へ進む彼の足取りは重い。
防塵マスクに一旦は手をかけたが外すのをやめた。
この惑星は地球とほぼ同じ大気のため酸素マスクは必要ない、しかし砂嵐が3日に1度は吹き荒れるため防塵マスクは手放せない。
坑道と屋外の照度の差で目をしばしばさせながら彼はぼやいた。
「まだ今日は良いほうか」
どこを見るでなく空中を彷徨う視線は、なびく砂のカーテンを憎らしく追っていた。
坑道から程近い所にある建屋。食堂や囚人の寝室など生活全般に関する施設が集約されている。
他にも隣接した建屋は数棟あり、坑道を含めた一帯は採掘プラントと呼ばれていた。
建屋の入り口にはエアーシャワーが設置されており砂埃を屋内に持ち込まないようになっている。
エアーシャワーを浴び終えた彼は防塵マスクを外し
「美味しくないのに列を作るって」
と愚痴をこぼしながら昼食を受け取るため、列の最後尾に並ぶのだった。




