僕ら変人集団の唐突な出会い
自分が幼い頃、他人とは違う存在でいたいと思うことは誰にでもあるのだろう。
人が生きるのは人とは違う存在になりたいからであり、そのために努力を継続し成果を得て、自分が唯一無二だと証明するのだ。
アイデンティティを見つけ、優越感に浸り自分を過信する。
これが人間の生態系であり、俺自身もその気持ちが人1倍強かった。それは事実である。
どんなにいびつな形でもその願いを叶えたいと思っていたのだ。
まさかこんな形でその願いが叶うとは知らなかった。
「小泉透君へ
あなたは本校の経済学科志望者の中で最も
優秀な成績を出したため、最高委員会に
配属します」
入学式を終え、教室に入るとそんな紙が机に置いてあった。
「え、どういうことだ?俺何も知らされてないんだけど」
隣にいる陣内に問いかける。
「さあ?生徒会みたいなモンじゃないか? そんなことよりこの学校女子が少な過ぎないか?さっき数えたら男女比率が20:1だったぞ」
いや、そっちの方がどうでもいいだろ。
陣内は中学のときからこんなやつだ。
一言でいえば変態。二言目には馬鹿という文字が並ぶ。
「でも首席の子は可愛かったな。あんな子が
家にいたら毎晩が楽しいのにな…透もそう思うだろ?」
「くたばれ変態馬鹿。お前と一緒にするな」
ほんとこいつの煩悩は捨てられないのかな。
「そんな害虫を見るような目をしないでくれよ。それより入学式で最高委員会は第2会議室に集まれって言ってたけど行かなくていいのか?」
「そんなことも言ってな。よくわからんが言ってくるよ」
そう言って教室を出る。廊下に出ると人影はなく、静かだった。
この岬中央学園は去年から新校舎になったので、外観だけではなく、校内のいたるところまで綺麗に掃除されている。
窓から吹き込む風は春を演出している。
中庭にある桜の木もそれを象徴しているのだろう。
しばらくすると、第2会議室の前に着いた。
その時、窓から風に乗って桜の花びらが飛んできた。ふと、前を見るとそこには1人の少女がいた。
彼女は可憐だった。
彼女の艶やかな瞳に見つめられ、自分の鼓動が早くなっていることに気付く。それはまるで恋愛の感情のようだった。俗に言う一目惚れというものだろうか。俺は彼女が自分の運命の人なんじゃないかと思ってしまった。
と、いうのは嘘で俺は淡々と彼女に話しかける。
「あ、首席の人ですよね。第2会議室ってここで合ってますか?」
「そうですよ。あなたも最高委員なんですか?」
教室内へ歩きながら彼女はそういった。
「なんか勝手にそうなっているみたいで…」
そう返すと彼女はくるりと振り返り、微笑みながら言った。
「私は水戸部えりなです。これからよろしくお願いしますね」
こうして俺の異様な日々は幕を開けた。




