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インフレ!!!  作者: おまんじゅう
6/13

カフェ2

ブリューナクの威力とレーザーシールドの耐久検証。


そうタイトルされた動画を二人は覗きこむように見つめた。動画の検証者、投稿者は匿名となっており顔や場所の特定すら考慮された作りになっていた。

僅かな時間、およそ数十秒間のなかで前回の試合を否定する形でそれは投稿されていた。

放たれたブリューナクの閃光が重ねられたレーザーシールドを次々と貫き、やがて高耐スーツを纏った人形を貫通させたのだ。そこに至るまでの秒数が明らかに先日の試合の結果とは異なるとしてその動画にはコメントが付け加えられ、再生回数を伸ばしていた。

見終わったインフレはすでに真っ暗になった画面を見つめたまま何も言わず、固まった。

しばらくその様子を伺っていたローウェルだったが、そっと端末の電源ボタンを押すとインフレの視界からそれを遠ざけた。


「これが全ての原因かどうかはわからない。でも、今君は出始めたばかりのルーキーだ。爆発的に出た人気というものは不安定なもの。こういう疑惑が出るだけで、影響を受けてしまう。ルーキーであるゆえにそれは危うい立場だということをわかって欲しかった。もちろんそれはこの動画が事実であるかどうか関係なしにね」


インフレはその言葉を納得できない様子で視線を向けることなく聞いていた。


「明らかに仕様の違いでしょうね。カプセルが通常使う実体化装置には独自の設定、設備が施されています。それはどこにも開示されていないものです。一般的な実体化装置でそれを行えばという域での憶測でしかありません。もし万が一全く同じ実体化装置を用意出来たのだとすればそれは情報漏えいどころの問題では済まされません。それこそカプセルを揺るがす大事件となりえます。第一、あのような簡易な施設でそれが再現できるとも思えません、あの規模の施設でできるのはやはり一般的に手に入る具現化装置ぐらいが関の山。よってこの動画における信憑性は皆無と言っていいでしょう。安心してください、運営措置によりこの動画はじき削除されることになっています。」


冷静に、淡々と説明するエリカ。その様子にはなんの動揺もない。


「そうか、それは余計なことをしたかな?エリカ殿。すでに運営も動いていたのだね」


「よくあることです。人気があるということは反面、それを良しとしない輩も存在するということです。話を戻します。スポンサーの件について詳しく話をさせて下さい」


動じることなくこれまでの話を寸断させたエリカは書類をめくりながら業務を遂行する。


「な、なんだよ。そういうことかー。ふざけやがって、ちょっと信じちゃったじゃねーか!あ!そういえば俺、用事あるんだった、そろそろ行くわ!」


唐突に、気持ちを切り替えるように言葉を発したインフレは立ち上がるとその場をあとにした。その発せられた言葉のニュアンスを感じ取りながらもローウェルは引き止めることなく見送った。そしてすかさず執事にそのあとを追わせる。


「インフレ君はこちらで送らせていただく、安心してくれたまえ」


軽く礼を返したエリカ。しかし、その表情は先程までの冷静沈着なものとはすこし違ったものだった。


「なぜ、あの動画を?その必要があったとは到底思えませんが」


「彼に必要なことだと僕は判断したんだ。もちろん、こんなことをすれば彼は動揺するかも知れないが、そんなことで終わる彼じゃない、それは君もわかっているはずだ。でなければ君が自ら彼をカプセルに引き込むはずないからね。それに、そもそもインフレ君をここに連れてきたのは君じゃないか」


「・・・・・・しかし、あの必要観戦権数に関してあの言い方は誤解を招きかねません。なぜそんな不安を煽るようなことまでしたのか理解に苦しむ」


エリカの言葉通り、インフレのそれは決して必要数を下回るものではなかった。一時的に減少傾向にあったというだけでその件に関して運営も危機感を抱くほどのものではないと結論を出していた。そもそもその情報自体、ローウェルの知るところではないはずのもの。どのようにその情報を入手したのか。そんな疑問は当然あったが、そのことまで触れることをしなかったエリカ。しかし、それを含めて彼とのスポンサー契約は必要なものだと確信していた。


「多少打算的ではあったと後悔はしているよ。でもね、彼には現実を知って欲しい。そして、その上でさらに高みに登って欲しいんだ!そして、そして!それを僕は一番近くで見守り続けたい!」


「虫唾が走ります」


「彼の前で嘘はつきたくないだけだよ。エリカ殿」


まっすぐローウェルはエリカを見つめた。


「・・・・・・私が嘘をついているとでも?」


「いや、そんなつもりは。それともあれかい?何か心当たりでもあるのかな?」


「・・・・・・愚問を」



あるのかないのか、それぞれの思惑は表面化されることなく交わされたスポンサー契約書の前に一時沈静化されることとなった。しかし、それはほんの一時的なものに過ぎなかった。

次の試合まで一週間と少し。

















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