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インフレ!!!  作者: おまんじゅう
5/13

カフェ

静かで落ち着いた雰囲気を醸し出すこの空間に似つかわない男、インフレ。

彼は前回の試合に未だ納得していないようで、ふてくされて肩肘をテーブルにつく。そして正面に座る敗北宣言者を睨んだ。

そんな態度のインフレのことなど構うことなくコーヒーをすするエリカ。そして彼女とインフレを交互に視線に捉えながらその男、ローウェルは綺麗に盛りつけられたパフェを口に運んだ。

そして恍惚な表情を浮かべながら二口目に手を出そうとしたが、目の前の睨みにそれを断念しナプキンで口を拭った。


「まぁ落ち着きたまえインフレ君、そんなに睨んでは君の綺麗な顔が台無しだ」


とぼけたように、すました顔で再びパフェを口に運び始めたローウェルにインフレはすかさず反論する。


「そうさせてんのはお前だよ、なんでギブアップした?一回あの武器の攻撃防いだぐらいでよ!勝負はまだまだついちゃいなかっただろうが!」


敗北宣言は無条件で降格を意味する。それは選手生命を絶たれるに等しい行為と言われている。Aランカーともなればその影響は甚大だ。そこでの敗北宣言はそれまでその選手を応援し、課金してきたユーザーにとって裏切り行為以外の何物でもない。ユーザー達は手のひらを返したようにその選手への課金をやめ、あらたな選手に投資し始める。もちろん根強く同じ選手を応援し続けるものも存在するが、その選手をAランカーへと再び上がらせるほどの人気、資金を維持することは難しくなる。そうして大抵の選手は引退をしていくこととなる。それが、現在のカプセルの主流となっていた。


「それだけの価値はあったということだよ、インフレ君。ブリューナクの閃光に突っ込んできた人間は未だかつて存在しない、高耐スーツと全金額つぎ込んだ複数のレーザーシールドを持っていたとしてもね。あんな無謀で馬鹿げた行動はそうそう取れるものじゃない。その時の僕の高揚はこのパフェの比ではなかったよインフレ君。そう!僕は可能性、未来の話をしているんだ。それを実感できた時点で僕にとっての試合は終わっていたんだよ。それに何も本当に僕を倒して欲しいわけじゃない、僕だってまだ生きていたいんだ。道楽でこの世から離れるわけには行かないからね。僕の本当の目的は成長を見届けることだと言ったはずだよ?それに僕には新たにやりたいことが見つかったんだ!」


次第に熱を帯びいつもの演説口調で長々続けるローウェルの話を聞きながら目の前に置かれた自分のパフェに手をつけたインフレはいままでの威嚇など何処かへ飛んでいってしまったかのように目を丸くすると、黙々とそれを口に運んでいた。


「ふーん。まぁ納得はしねーけど、あんたの言いたいことはわかった」


完食し終わったパフェのグラスを名残惜しそうに見ながらスプーンを舐めるとそれをグラスの中へ戻す。そんな二人のやり取りを何も言わず聞いていたエリカは最後の一口を飲み干すとようやく口を開いた。


「で、本日の要件は?」


ローウェルからの連絡があったのは試合からおよそ2週間経った頃。どうやって調べたのかエリカの端末へ直接連絡が入った。インフレにその旨を伝えるとすぐにそれを了承。そのことをローウェルに伝えるとそうそうに会う場所と日時を指定する連絡がはいった。インフレ自身はローウェルがなんの目的で会いたいのかなど全く気にしておらず、敗北宣言の理由を問いただしたいだけだったのだが、ここに来た本来の目的をようやく思い出したインフレもまじまじとローウェルを見つめた。


「失礼。それでは本題に入らせていただく。わたくし、ローウェル・マクナイトは財閥の名のもとにインフレ君のスポンサーになることをここに宣言するっ!」


「承知しました」


即答。エリカはその申し出をすでにお見通しだったのか、なにやら鞄から書類のようなものを取り出し始めていた。当然のことながらその話についていけないインフレの頭には疑問符が浮かんでいたが、それに気がついたローウェルは優しく微笑みながら説明を始めた。



「ユーザーが試合の観戦権を得るのに必要なのは1,000pまぁこれは学生のお小遣いでも十分に払える額だね。そして、そこから更に1,000p以上課金することで得られる権利が、コネクトによる主観映像権。課金した選手目線の試合を観ることができる権利だね。つまり、僕ら選手が試合中などでアイテムを買うことのできる所持金はこの主観映像権から得られる資金次第で増減することになる」


「お、おう」


「君がAランカーとしての初戦、つまり僕と戦った時の所持金はおよそ4000万pでもこれは観戦権と映像権の合計ではないんだ。観戦権はすべて運営の資金に充てられている。それが問題といえば問題なんだ」



「なんでそれが問題なんだ?」



「各ランクには試合に参加するために設定された必要観戦権数というものが存在していね・・・・・」



「ちょっとまて、俺そんな人気無いのか?」



「いや、その前にこれを見て欲しい」



そういうとローウェルは映像端末を取り出すとインフレに差し出した。












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