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小仙女――わけありで汚れ役の傷ものヒロインがけなげに頑張る  作者: 壺中天
第2章 水底の指輪(みなそこのゆびわ)
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水魔昏冥

 

 鴉に斥候役をさせ、俺は少女を抱えていく。

 日の沈む頃、森の奥まった場所に来ていた。


 とねりこの木の根本で清く澄んだ泉が湧き出していた。辺りはひっそりとして物音もしない。

 森の何処かに聖域のような所が有りうると聞くが、ここがそうではないかと思わせる雰囲気があった。


「そいつを泉の中に放り込むがよい」

 鴉がぞんざいな扱いを促す。

「昏睡したままの娘にそれどうかと思うが」

「大事ない。それが人ならざる血をひくと察していよう。四半分は人間だが、半分は風妖、後の残りが水魔。いってみれば、魚を水に返すようなものよ」

「うむ、それならかまわないのか」

 躊躇いながら、抱えた娘を泉に浸けていく。

 頭まですっかりと水に沈んだ。

 金の髪が揺らめくが、気泡は浮かばない。息をしていないのかと危惧する。

 すうっ娘のまぶたが開かれる。片眼は閉ざされ、片眼は青味泥あおみどろの沼の暗い(みどりをした妖魔の瞳だった。

 心臓を攫み潰されるような恐怖に駆られ、添えていた手を思わず放し身をひいた。


「あれっ、ここどこ。あたいはどうしてたのさ」

 娘は我に返ってきょろきょろと辺りを見回す。昏冥の瞳は閉ざされ、碧空の瞳が開かれていた。





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