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小仙女――わけありで汚れ役の傷ものヒロインがけなげに頑張る  作者: 壺中天
第2章 水底の指輪(みなそこのゆびわ)
18/19

分配相談

小仙女、野盗の屍から身包み剥ぐ

 

「畜生、汚ねえふんどし。あたい、こんな腐れ摩羅まら、突っ込まれたのか」

 たすけた娘は死体の身ぐるみ剥ぎながら情けなそうにぼやく。さっきまで泣いていたのに呆れた変わり身だ。

「しけてるけどあんたの分け前だよ」

 視線に気づいたのか野盗の所持した金品を半分にわけて差し出す。

「えっ、足んないかい? なら、全部やるよ。たすけて貰って文句いえないし」

 開いた口が塞がらないのを誤解したらしい。

「なんだい……あんたもあたいを抱きたいってのか? いっ、いいよ、いまさらだし。どうせ散々姦られたんだから」

 怯えた幼顔でからだを固くした。

「いらん」

 苦々しい気分でいう。


「……そっか。あたいみたいな化け物は厭だってわけか」

 傷ついたような荒んだ眼の色をして髪を振り分け、人族のものではない片耳を曝け出した。それは先が尖った大きな耳で縁がぎざぎざに裂けていた。

「金やお前の身体がめあてでたすけたのではない」

 そういう。娘は猫のように縦長だった瞳を真円にみはらした。

「あんた、人がいいだね。傭兵の癖にそんなんじゃ、よく生きてこれたもんさ」

 娘が如何にして生きてきたやら思うだに頭が痛くなる。


「だいたいね、この世知がらい世の中――」

 ふいに言葉が途切らせ、糸の切れた操り人形のようにくずおれる少女をかろうじて腕に抱きとめながら、その身の儚いまでの軽さにおどろかされた。



「この娘、どうしたのだ」

 気を失ったままの少女をその場に横たえ介抱する。

「いささか厄介な奴らに狙われている身でな。ようやく逃れたところを先ほどの立ち回りだ」

 鴉の口調は苦い。

「この賊共か」

「いや、人ならざるやからだ」

「いかなるものだ」

「そこまではかかわらぬほうが、よいのではないか。或いは、後戻りできぬやもしれぬ」

 鴉は謎めかした答えをする。


「それはともかく娘をどうするんだ。このままにはしておけんしな」

 場所を変えて野営することにした。




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