1999年の真実
テーマ「暗黒の失望」制限時間15分
その日、世界は崩壊した。勇猛果敢に挑んできた人類の精鋭たちも、魔王の前では無力であった。
その世界に君臨するのは魔族のみ。人類が幾百年の月日をかけて築いてきた文明は脆くも壊滅し、ただただ凄惨な荒野が広がるばかりである。
「虚しいな」
魔王はポツリと呟く。この状況を作り出した当人ではあるが、自らの所業を振り返ってみると、そこには満足だの、栄光だのという感情はなかった。ただ、胸の中に広がる虚空。これはどうしたことか。
人間たちが刃向ってきた頃は、それなりに張り合いがあった。勝てぬと分かっていても、知恵を駆使して挑んでくる愚か者ども。それらを叩きのめすだけの毎日であったが、今と比べると充実感は桁外れであった。
なのに、今となってはどうだろう。残されたのは同族の魔族のみ。彼らが魔王である己にたてつくとは思えない。それがどれだけ無意味かはわきまえている、そんなやつらばかりなのだ。
失意の底にあった魔王は、ふと妙案を思いつく。
「おお、神よ。願わくば、今一度人類を作りたまえ。今度は我を討伐せんための、強靭な人類を頼む」
こうして現れた新人類は、以前とは比べ物にならないほどの血気盛んさと知恵を有していた。あまりの能力差に、魔王は呆気なく倒された。だが、悔いはなかった。
人類たちは、その類まれなる力を発揮し、崩壊した世界を再び創りなおした。そして、世紀末の終わりとともに、新たな時代が始まったのである。
「これが、ノストラダムスの魔王予言の真相さ。魔王は確実にやってきて、人類はあの日生まれ変わったのさ」
と、友人は誇らしげに言う。信じるかどうかはあなた次第だ。