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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
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07 異世界レムレール

 

「うっ」


「っ!? ダイスケ、大丈夫かい!?」


 歪んだ空間を渡り、俺は今見知らぬ森の中にいる。青い大樹が至る所に生えていて、正直かなり不気味だ。


【元いた世界】では考えられないような不気味な森・・・・・・何とか【異世界レムレール】に辿り着いたようだ。

 乱れた息を整えて膝をついていた俺は、ゆっくり立ち上がり気遣ってくれたジークに声を掛ける


「あぁ、何とかな。心配かけたな」


 全てが歪んだ時空間を渡っている時、俺の身体・・・・・・特に心臓付近に激しい痛みが生じて、正直やばかった。


 精霊王様の話にあった命を落とす可能性が現実味を帯び、あまりの痛みに意識を失いそうになったが、その度に身体を何か不思議な光が包み込み、痛みが和らぐという現象が起こり、持ち堪える事ができた。何故そんな現象が起こったのかはわからないが、生きて異世界レムレールへと辿り着く事ができたし、気にしない事にする。


 落ち着いた俺は、自分の状態を確認する為に、身体を軽く動かす。

 何かが身体中に漲ってる感じがして若干違和感を感じるが、悪い感じはしない。背負った鞄に入っていた荷物も特に問題ないようだ。


「ジークは大丈夫か? それと何年の何月かわかるか?」


「僕は全く問題ないよ。言いにくいんだが743年の6月なのだよ」


 743年・・・・・・微妙だ。

 最悪ではないが、手遅れかもしれない微妙な時期だが、これは想定内の事で仕方ない事だ。


「気にするな。最悪ではないんだ。とりあえずやれる事をやるしかないさ。ジークはこれからどうするんだ?」


 俺がわざわざこんな事を聞くのには理由がある。共に頑張って行く相棒ジークなのだが、時を遡るのに莫大な力を使う為、精霊王様が言った通り、力がスッカラカン状態になっている。


「これからどうするって? 残念ながら予想していたよりはほんの少しましだけど、精霊力はほぼないね。だから僕はのんびりと・・・・・・ダイスケ、愚問だよ? 契約を交わした仲じゃないか? この偉大なる大精霊である僕が手助けした方がきっと上手くいくと思わんかね? もちろん対価は貰うよ? わかっているだろう? ダイスケ君? フハハハハハ」


 腰に手をやり、胸を張りながら、得意気に笑うジーク。手助けしてくれるのは嬉しいんだが、話してる最中に心変わりしたのがバレバレだが気にしない事にする。

 共にこの異世界にやってきた相棒だ。

 ウザいのが玉に瑕なだけで、実は優しい良い子なのだ。ウザさを我慢すればきっと役に立つ・・・・・・よな?


「助かるよ。これからもよろしくな」


「感謝したまえ! フハハハハッ」


 見知らぬ森の中、大精霊様の笑い声が響きわたった。





 先程確認した通り、身体に痛みや危険そうな異常はないし、荷物もしっかりあるので、問題は743年6月という事だけだ。

 予定した年より5年程ずれてしまったが、ずれてしまったのなら仕方がないし、やれる事を全力でやるだけだ。それがじいちゃんの教えであり、俺の生き方でもある。

 ミアは確かこの時期は、勇者として魔物に襲われる各地の村を訪れる日々が続くはずだ。

 神聖国の聖女様や故郷の村も、何とかするつもりだが、未来が変わらない限りはまだ時間に余裕がある・・・・・・という事で結局やる事は元から心配していたミラ達の捜索だな。


「ジーク、とりあえずミラ達を探そう。大きく事が動くまでまだ時間に余裕はあるしな。何かいい考えはないか」


 ちなみにジークはミアの勇者の日記を読んでいない。

 理由は単純だ。

 この偉大な大精霊様は文字が読めないという致命的な欠点を持っていたのだ。


 軽く馬鹿にすると


「・・・・・・教えてくれる精霊が周りにいなかったんだ。僕は孤独を好む精霊だからね」と切なそうに呟いた大精霊にキャンディ3個を与えた。

 出発前夜の事である。ジークには俺の口から大まかに何が起こるかは説明している。


「ふむ、なるほどな。だがダイスケ、僕達はレムレールに来たばかりだ。今いるこの趣味の悪い森が何処なのかもわからない、違うかい?焦る気持ちもわからなくはないが、まずは今いる場所を把握するのは勿論だが、この世界の事を知らないとね」


 何てこった。困った子ジークが、意外に冷静でまともな事を言っている。

 ジークの言う通りだと思う。

 ミラ達を捜索するにしても、まずはレムレールをきちんと把握してからでないと効率が悪すぎる。

 まずこの気色悪い森から出て近くの村か街でも見つける、そこで地図が手に入ればベストだな。

 そもそも忘れてたが、俺がこの世界で勇者であるミアを守れる程強いかどうかもわからないし、精霊王様は行けばわかるといっていたが、身体に違和感を感じるくらいだし・・・・・・うーん、何か忘れてる様な気が・・・・・・そういえば、精霊王様から授けられた能力があったな。確か口に出すだけで発動するって言ってたし、試してみるかな。


「ステータス」


 俺の目の前に俺の能力と思われるものが表示された。




**************



 シンドウダイスケ



 種族 人間??



 力 S

 速 S

 体 S

 魔 G

 防 B

 賢 D

 精 A

 運 C


 G=非戦闘員 F=駆け出し E=普通

 D=努力家 C=一人前 B=熟練者

 A=達人 S=英雄



 ???魔法


 SP 21591


 ステータス 消費0

 解析 消費50

 結界 消費200

 ??? 消費1000

 雷撃 消費100

 落雷 消費400

 雷嵐 消費800

 ??? 消費2000

 治癒 消費400

 解呪 消費800

 極癒光 消費1000

 ??? 消費4000

 ??? ???



 *一定時間毎SP減少



**************



 うん。ゲームみたいに見やすいのはいいんだが種族人間? ってどういう事だよ・・・・・・俺、人間だよな?

 後は魔法を使えるみたいだが、使い方がわからん。ステータスを見た感じだと、SPを使い魔法を使用する事ができる感じだが、魔が低すぎるし・・・・・・大丈夫なのか?まぁ、とりあえず魔法は保留でいいだろう。

 一番大事なのは基礎能力だしな。

 魔法何か使った事ないし、使いこなせる気がしない。よって俺の戦闘手段は基本的に物理攻撃になると思う。

 アルファベットでわかりやすいし、基準もある。見た感じでは何とかいけそうだが魔物の強さがわからないから、結局これも何とも言えない。

 すぐにわかる何かいい方法は・・・・・・

 俺は物は試しにと、近くにあった青い木を思いっきり殴ってみた。




 ドゴォォォォォォォォォォォン!!




「ひっひぃぃ、ダ、ダイスケ。一体何を・・・・・・」


 俺が殴った青い木は、凄まじい音を鳴らしながら遥か彼方へ根元から吹っ飛んでいった。

 うーん、この程度なら元いた世界でも出来た事だ。特に威力が上がっているように思えない。

 怯えるジークを無視して俺はグッと両足に力をこめ、その場でジャンプする。

 不気味な大樹より高い位置まで跳ぶ事が出来たが、元の世界と大体同じくらいの跳躍力だ。

 身体能力は、上がってはないが下がってもなく、多分変わってないと。

 地面に音もなく着地し、考える。

 結局、今までの修練で鍛えた力が通じるかどうかの話みたいだ。


「ジーク、とりあえずあっちの方角に街っぽいのがあったから行こう。途中で魔物を見つけたら積極的に戦うつもりだ。色々確かめたい」


「確かめる必要性が感じられないよ! い、いいかい? 僕とダイスケは対等で相棒なんだから、こ、これから何があっても僕を絶対に殴らないで・・・・・・下さい。い、今すぐ約束して! 精霊は不死ではないんだぁ! 本当にお願いします」


 はいはい、約束な! と適当に返事をしてとりあえず先程跳び上がった時に見えた街っぽい方向に歩き出す。

 ほんとに約束だよ? ねぇ、聞いてる? と涙目で叫び続けるジークを抱えながら。

 相変わらず青い大樹が立ち並んでいる。

 おまけに葉も青なうえに、ぎっしり生い茂っていて、日の光が入りにくいのか薄暗い。

 早く魔物がでないかなぁと思いながら、ステータスを思い出し防御力に疑問をもつ。

 今の俺の服装は、白のスポーツ用のシューズに、緑のカーゴパンツ、黒の柄のないシャツ。

 まぁ鎧とか持ってないし、しょうがないんだが、どう考えても防御力はないだろう。

 能力的にもBランクの熟練者レベル。

 悪くはないんだろうが、攻撃に比べると弱く、防御力に関しては若干不安がある。

 とりあえず先手必勝でいくか。

 素手で、きつそうなら、修練に使っていた棒を使うつもりだ。

 この棒は不思議な棒で、一見するとただの棒なのだが、物凄い頑丈なのだ。

 小さい頃から使い続け、折れる事ない不思議な棒。

 何かの役に立つと思い持ってきたが、早速出番がくるかもしれんな。

 やばそうだったら使う事にしよう。

 考えながら移動していると、前方の方からドシン、ドシン、と何か音が聞こえてくる。

 俺は音を聞きニヤリと笑い


「ジーク! もう少し先に何かいるぞ! 急ごう」


「も、もう少し慎重に行こ・・・・・・うわぁぁぁ」


 逃がすものかと、全力で走り出す。

 ジークの悲鳴が聞こえるような気がするが気のせいだろう。

 数十秒程で遂に魔物らしき姿を発見する。


「おぉ、でけぇな」


 10メートル以上はありそうな巨大な猪がいた。



【グルァァァァァ】



「ひっ、ひぃぃぃぃ」


 魔物の雄叫びと、ジークの悲鳴が聞こえたと同時に、巨大な猪は中々の速度でこちらに突っ込んで来た。


「さぁ、どの程度やれるかね」


 俺は叫ぶジークを放り投げ、突進に備えて身構えた。

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