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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
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06 いざ異世界へ!

 

 ジークが生み出した小さな扉 を潜り抜けると、真っ暗な空間だった。後ろを振り返ると小さな扉ももう見えない。


「ダイスケ様、とにかく進み続けて下さい。精霊王様がお会いになられるのならば必ず扉が現れる筈です」


 俺の少し後方から声が聞こえてきた。

 どうやら姿は見えないが、ジークが後ろにいるようだ。俺は無言で進み続けている、匍匐前進でな! 扉を抜けて立ち上がろうとしたが、何かに邪魔されて立ち上がれないんだよ。

 そんな訳で匍匐前進で黙々と進んでいたんだが、不意に前方の闇が唐突に切り裂かれ、光輝く扉が現れた。


「ジーク、あの扉に入ればいいのか?」


「はい! あれは精霊王様に通じる扉です!」


 ジークの言葉を聞き、俺は扉を潜り抜けた。

 潜り抜けた先は幻想的な森だった。

 小さな光の粒があちこちに浮かび、目の前には虹色の大樹。大樹の周りには美しい花が咲いていて、俺の掌くらいの羽の生えた人間・・・・・・妖精っぽいものは笑い声をあげながら浮いている。

 それに空気が何というか清らかだ。

 ここにいるだけで、日記を読み始めてからの、悲しみや、焦り、苛立っていた心が癒されていく感じがする。気のせいかもしれないけどね。


「ダイスケ様大丈夫ですか??」


 ぼっーとしていた俺を気遣ってか、ジークが俺を心配そうに見上げている。

 心配してくれるのはいいんだが、お前はまじで、どういうキャラなんだよ。


「あぁ、問題ない。ありがとうな。それで精霊王様は何処に・・・・・・」


「目の前にいるよ」


 俺の言葉を遮り、とてつもない存在感のある声が聞こえてきた。目の前と言われたが、目の前には虹色の大樹があり、精霊王様の姿は見えない。俺が不思議に思い首を傾げていると


「ははは、上だよ。すぐそちらに行くよ」


 全身が光り輝く人型の物体が上からふわりと現れた。


「貴方が精霊王様ですか?」


「うむ、私が精霊王だよ」


 この眩しいお方が精霊王様か。何か物凄く偉い感じが見た目だけで伝わってくる。ってかまじで眩しい。直視できないぞ。ジークは精霊王様が現れてから、頭を下げ続け、何も言葉を発していない。

ジークに命令し本に宿らせた張本人だ。俺の考えが正しければ、俺が求めているものを与えてくれるはずだ。俺は敬意を表し、頭を下げ、口を開く


「未熟者なもので、多少失礼な物言いがあるかもしれませんが、どうかお許し下さい。俺、いや私の希望を叶えて下さりありがとうございます。私が精霊王様にお会いしたかったのは、ある事ができるかお聞きしたかったからです」


 拙いながら、俺の最大限の敬意をもって言葉を並べる。これが俺の限界ってやつだ。今の俺ではこれ以上上手く話せない。これで機嫌を悪くされたら完全にアウトなんだが


「ははは、構わないよ。君の気持ちは充分伝わっているから安心しなさい。とりあえず頭をあげておくれよ? ジークもね」


 器の大きい方で助かったよ、まじで。

 ジークも頭をあげ真剣な表情をしている。何て言うか、ウザい態度を見ているから笑えてくるが、我慢だ、我慢。


 さて、本題に入らないとな。


「お広い心、感謝致します。私がお聞きしたいのは、この大精霊ジークをあの本に宿した理由も、そうなのですが、時を遡る方法をお聞きしたいのです」


「君は本当に優秀だ。我々が思い描いた通りに行動してくれているね。私が思っているよりも早く答えに辿りついた、私はそれを嬉しく思うよ。ジークを本に宿したのは君が考えていた通りだ。君を私の元へ連れてきてもらう為だよ。何故かはわかるね? 今のままだと勇者を・・・・・・と言うよりも【レムレール】という世界を救う事が出来ないからだ。あぁ深くは聞かないでね。あまり詳しくは話せないんだ。そしてもちろんの事だが、時を遡る方法はあるよ。そうしないと、我々の目的が達成できないし、君も勇者を救えないんだからね」


 やはり大まかに俺の考えは正しかったようだ。ジークの目的は俺を精霊王様の前に連れてくる事だった。

 そして、ミアの世界【レムレール】か。我々と言っているからには、精霊王様以外にも他の誰かの思惑も絡んでいそうだが、まぁ今はどうでもいい。


 レムレールを救う事が精霊王様達の目的で、俺の目的はミアを救う事。という事は、ミアが・・・・・・勇者が敗れた世界は崩壊にむかったという事なのだろうか?


 そういう事なら納得がいくな。俺の目的は世界を救う事ではなくミアを救う事だが、ミアを救う事により、勇者が勝利する事により、世界の崩壊を防げるという事だと思う。まぁ、その辺の事情はどうでもいい。問題は時を遡る事が出来るという事だ。これで俺は、ミアを救うチャンスをもらえるわけだ。


 絶対に救ってみせるけどな!


「事情は把握しました。丁寧にありがとうございます。時を遡る方法を教えて頂く事はできますか?」


「もちろんだよ。先程も言ったが、君の目的と我々の目的は、同じではないが、繋がっているからね。時を遡るのは私の力をジークに一時的に貸し与えれば可能だよ。ただ君にとっていくつか難点が出てくる」


「難点?? それは教えてもらう事は出来ますか?」


「まず、時を遡る・・・・・・つまり時空を越えて過去に行く事になるんだけどね、そこにいるジークは大精霊といってもまだ未熟でね、私が与えた力を行使すると、精霊力を使い果たしてしまい、ジーク本来の世界を繋ぐ力も暫くは使えないだろう。簡単に言えば、君の世界にはもう戻れない事になるというのが一つ目だ。後はね、精霊ならともかく人間が時空を越えるなんて過去に例がなくてね。何もないかもしれないが、君の身体に大きな負担がかかる可能性があり、君の身体に異変がおきる可能性がある。最悪には、過去のレムレールに辿りついた時には死に至っている可能性もあるね。それでも君は行くかい?」


 精霊力やら何やら理解できてない事が多いが簡単に言えばもう俺はこの世界には戻れないらしい。

これはそこまで、問題はない。俺に家族はもういない。じいちゃんだけが俺の家族だったし、というか精霊王様がいう我々にじいちゃんも絡んでいたのだろうか? 絡んでそうな気もするが・・・・・・今はそんな事はいいか。


 特別親しかった友人もいないし、 彼女なんてもちろんいない。


 つまり、じいちゃんいなくなった俺は、ぼっちだった。だから、何の問題もない。


 後は身体に負担がかかる可能性があって最悪目的を果たせず死ぬか。

 死ぬ可能性にビビってミアを見殺しにするのか?助けれるかもしれないのに?


 はっ、ありえない。


 死ぬ可能性があるってだけだ。


 前列がないから精霊王様ですらどうなるかわからないと。何もないかもしれないし、死ぬかもしれない。なら何もないと前向きに考えるさ! 仮に死んだとしても、俺には何もないしな、ぼっちだし。


 何より、そんな時空を越えるってだけで死んでしまうような、情けない鍛え方はしてない・・・・・・時空越えた事ないからどのくらい負担かかるのか知らんけど。


 小さい頃から毎日じいちゃんの厳しい修練を続けてきたんだ。じいちゃんの電撃を思い出せ・・・・・・あれに比べたらきっと余裕だ! まぁ結局考えは変わらない。


 俺はミアを助けたい、それが全てだ。


 だが、最悪の場合も想定しないとな。


「どちらも問題ないです。ただ一つお願いがあります。もし私が時空を越えレムレールに着いた時に死んでしまい、目的を果たせなかった場合は、何か手を打ってもらえませんか?」


「まぁ聞かなくても答えはわかっていたのだけどね。何か手とはどういう事だい?」


「ミアを、勇者を救う方法をまた考えて、諦めないでほしいのです。それが精霊王様の目的でもあるレムレールという世界を救う事にも繋がりますし、お願いします」


「はっはっはっ! 君は本当に面白いよ。自分の命の事じゃなく、あくまで勇者を心配するんだね? 聞いた通りの男だよ! わかった! 私に出来る限りの事はしよう。最善が君をレムレールに連れて行く事だったりするんだけどね。まぁ君ならきっと大丈夫さ。君はきっと勇者をレムレールを救えるさ!はっはっはっ」


 楽しそうに笑う精霊王様。


 そんなに笑われるような事言ったか俺? 聞いたって誰から聞いたんだと聞きたいけど、答えてくれなさそうだからやめておこう。俺が最善?? なら俺が死んだらやばくないか? 保険はかけたが、絶対死ぬわけにはいかないな。


 根性で耐えて無事ミアの時代のレムレールに辿り着いてやる。俺が心で強く決意していると、落ち着いたらしい精霊王様が


「愉快だよ。こんなに愉快な気持ちになったのは何百年ぶりだろう。話を戻そう。ジーク! 話は聞いていたね? これは精霊王から君への命令だ! もちろん受けてくれるよね?」


「はっ、はい! もちろんです!」


 ジークが緊張しつつも、即答で答えると、精霊王様がジークに向けて手をかざす。すると、ジークの身体に光の球体が飛んでいき、やがて身体に吸い込まれた


「はい、これで力を貸し与えたからね。後は頼んだよ、ジーク。時がくれば戻っておいで」


「はっ、はい! 有難きお言葉感謝致します!」


 何かあっさり力を得たジーク。

 簡単すぎるだろ? とか思うが、まぁ深くは気にしないでおこう。

 これで準備万端だ。

 待ってろよ、ミア。

 俺がミアの大切全部守ってやるからな! ・・・・・・ってかよく考えれば、俺って魔物や魔法の世界レムレールで通用するのだろうか?


「精霊王様、冷静に考えたんですけど、私は勇者を世界を救える程の力があるのでしょうか?」


 俺の言葉にキョトンとした様子の精霊王様。次第に身体が小刻みに揺れはじめ


「ふっ、ふはっはっはっ、君は本当に何なんだい? 今更すぎる疑問だろ? 普通もっと早く気付く問題だと思うよ? はっはっはっ、失礼、質問には答えないとね。何と言ったらいいかな・・・うん、行けばわかるよ! はっはっはっ愉快、愉快。僕はここから見守っているよ」


 幻想的な森に精霊王様の笑い声が暫く響き続けた。






 その後、相変わらず緊張するジークと共に精霊王様の力で俺とジークは一度俺の世界に戻ってきた。

 ちなみに、戻る際に精霊王様からレムレールに行ってからの行動について、いくつかの約束をさせられて、ついでにある能力を授けてもらった。

 どんな能力かは異世界に行ってからのお楽しみでまだわからないが、精霊王様が笑いながら自分を知りなさいと言っていたので、自分を知る能力だと思う。

 ミアの世界レムレールには、精霊王様の元からすぐにでも向かいたかったのだが、ジークが与えられた力を使いこなすまでに少し時間がかかるらしく、それならばと、もう戻って来れない世界でやる事をやっとこうと思ったわけだ。

 と言ってもやる事なんて案外ないもんで、暇だった。

 ちなみに俺の家は山奥にある。

 人なんて寄り付きもしない。

 じいちゃんが作った小さなログハウスに畑があるだけ。

 生き物も飼ってなかったし、じいちゃんは、もういないし墓もない、というわけで、ジークが力の調整が終わるまでの3日間、特別な事もせず修練をして過ごしていた。

 ちなみにジークだが、一度腹を割って話し合い、言ってやった。

 キャラ固定しろよと。

 偉そうに話したいのか、真面目なのかどっちかにしろと。

 ジークは悩んだ結果


「ふぅ、まったくしょーがないね。ダイスケがそこまで言うんだったら仕方がない。これからは僕と君は相棒として頑張っていくわけだ。だからお互い対等でいこうではないか?いいね、ダイスケ?」


 ウザいキャラを選びやがった。

 こっちが自然なのか?まぁどっちでもいい。俺も殴ったり、怒鳴ったり悪かった所もあるし、我慢しよう。

 それに、ジークとの出会いから希望が見えてきたわけだし、これから共に時空を越えて、異世界レムレールを生きていく相棒だ。契約も交わした事だし、対等の立場としてこれから力を合わせて頑張っていかなければ。


 力を把握し始めたジークに、細かな時間を指定できるか確認した。

 ミアを救うのにどのタイミングで行くのが適しているか、とても重要な事だ。

 ミアの日記によって、ミア目線でだがどの年に何があったかは大体把握はできているし、これを利用しない手はないだろう。


 とりあえずは把握している限りで一つ目の不幸【ミラ達の王都追放】。


 これを何とかすると言うよりも、その後のミラ達が、どうなったのかわからないので、確実に居場所を把握できる王都追放前に行きたかったのだが、ジークによれば、年月の調整は難しくずれる可能性があるらしい。

 つまりどの年月になるかは行ってみないとわからない、ぶっつけ本番だ。

 ジークは申し訳なさそうにしてたが、贅沢は言ってられないし仕方がない事だと思う。俺はジークに何とかなるさ!と頭を撫でてやった。後、ジークに聞いてわかった事だが、時を遡るのは、レムレールという世界だけらしい。


 俺も始め聞いた時はよくわからず、??? 状態だったが、簡単に言えばレムレール以外の世界は時が遡らず、そのまま時が続いていくって事。

 例えば20年前のレムレールに行っても、俺の世界も20年前にって事にはならず今のまま時が進んでいく。

 全てを巻き戻すのではなく一部分を巻き戻す・・・・・・まぁその一部分がレムレールっていう星だからスケールがでかい。 精霊王様が見守っているよ、と言った意味がわかった。

 俺は俺とジークが時を遡った時点で、精霊王様にはレムレールが滅びたのか、救われたのかがわかると思っていた。

 だって普通に考えたらそうだろ?

 過去に行くのだから、今は未来になるわけで、俺達がミアを世界を救えたかが、過去を遡らない精霊王様には一瞬でわかる事だと思ったんだが、時が遡るのはレムレールだけならば納得だ。

 現在のレムレールの時を巻き戻し、過去だった筈のレムレールが現在になり未来は俺達の行動次第ってわけだ。


 3日が過ぎ、力の調整を終えたジークが前回と違い大きな亀裂をうみだした。

 空間じゃなく、今回は時空間だ。

 術者であるジークと離れると時空の狭間に消えてしまうらしいので、ジークは俺に肩車され、俺の頭をがっちり掴んでいる。

 到着予定年は、738年の4月にした。

 ミアが日記を書き始めた時期だ。

 早過ぎても何とかなるが、遅いと全てが手遅れなわけで。

 ミアを救う事だけじゃなく、俺はミアの大切を全て守りたい。

 取りこぼしたくない。

 予定通りにつけば、ゆっくり対策を立てれるだろうし。

 数十年ズレると完全にミア生まれる前に俺じいちゃんとか笑えない事態になってしまうが、そもそもが賭けみたいなもんだし、考えない事にした。

 前向きに行こう、とジークと話している。

 さぁうだうだ考えてても仕方ない。


「頼むぞ! ジーク」


「任せたまえ! 738年4月のレムレールへ」


「行くぞ!」



 こうして俺とジークは亀裂に飛び込みレムレールへと旅立った。




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