01 全てのはじまり
初投稿作品です。
拙い文章ですが、よろしくお願いします
荒れ果てた荒野に、大量の魔物に囲まれた1人の人間がいた。
片目は抉られ、利き腕をなくし、全身の至る所から血を流している。
傷ついた身体が地に伏せぬのは、光輝く美しい剣を杖代わりにしているからだ。
【ガァァァァァ!!】
そんな満身創痍な彼女に、魔物達が襲いかかるが
「光聖剣」
彼女は、グッと残った左腕に力を込め周囲を薙ぎ払うように身体を回転させながら光輝く剣を振るうと、凄まじい輝きと共に、襲いかかってきていた魔物達が塵となり消え去る。
彼女は強者だった。
魔物から世界を救う為に神が授けた聖なる力を操り選ばれし者【勇者】。
世界に住む人々の希望。
しかし、今まさにその人々の希望である勇者の命が燃え尽きようとしていた
勇者の強大な力を持ってしても、敵わぬ存在・・・・・・凶悪な魔物を束ねる存在【魔王】だ。
【サッサトクタバレ、メザワリダ】
満身創痍ながらも、魔物を葬っていた勇者だったが、全身が黒の体毛に覆われ、二本足で立つ巨大な獅子の魔王が再び現れた事により状況は一変する。
周りの魔物が巻き込まれようと構わないと言わんばかりに、人間を丸呑みできる程大きな口を開き、そこから全てを燃やし尽くす、絶望の黒炎を勇者に向かって吐き出した。
「っ! 【神聖結界】」
勇者は尽きかけている魔力で、自らを守る聖魔法を唱えるが、既にいつ倒れてもおかしくない程、身も心も消耗した勇者に圧倒的な威力を誇る黒炎を防ぐ事は出来なかった。
ドゴォォォォォォン!!
勇者の結界が破られた同時に凄まじい爆発音が鳴り響き、辺り一面を全て吹き飛ばした。
暫くし、爆発によって舞っていた土煙がおさまると、そこに勇者の姿はなく、勇者の持っていた光輝く剣が半ばから折れ、輝きを失い地に突き立っていた。
【ホネスラノコラナカッタカ。マァイイ。コレデセカイハワレラノモノダ】
魔王は生き残った魔物を引き連れその場から去って行った。
荒れ果てた荒野から西にある森の中で勇者は地に伏せていた。
凄まじい爆発により、とてつもない距離を吹き飛ばされながらも、生きていたが、元々瀕死な状態であった上に、爆発の衝撃を受けた勇者は、両足は吹き飛び、至る所に火傷を負い、既に虫の息、死は時間の問題であった。
「わ、わたしは、ゆ、ゆうしゃ、わた、しが、や、ら、ない・・・・・・き、ぼ・・・・・・いた・・・・・・い、ご、め、んなさ・・・・・・」
誰に告げるのでもなく、呟いた言葉は誰にも聞かれる事なく、人々の為に勇敢に戦い続けた勇者であった少女は死を迎えた。
**********
やがて世界は魔物に蹂躙され滅びの道を迎えようとしていた。
そんな世界に、1人の老人が遥か上空から世界に降りたった。
老人は世界の状況を知り大きく息を吐きながら呟いた。
「はぁ、まったくあの【怠神】が。しっかり管理しとらんからこうなるのじゃ」
僅かに生き残った人々も僅かにいるが時間の問題であろう。
魔物が支配する世界は高濃度な魔素が充満し、とても人が生きていける環境ではない。
老人はこんな状況でも眠り続けている世界の管理者である神を叩き起こし、責任を取らせようと、再び上空へと上昇していると、魔素が充満したこの世界で僅かながら神聖な気を感じ取ったのだ。
「ふむ、どういう事じゃ? 行ってみるかの」
数十年眠り続ける怠神の元に行く前に、老人は神聖な気がする方向へと移動し辿り着いたのは薄暗い不思議な森だった。世界中に蔓延る魔物の姿が見えないのだ。
「やはり何かあるな、しかし一体何が・・・・・・あれか?」
森を探っていた老人は、ある物を見つける。
それは【白の本】だった。
「これから神聖な気が発せられているな。おそらくは・・・・・・勇者の持ち物じゃろう。大切な物だったのだな」
老人は【白の本】を抱え、遥か上空へと消えていった。
**********
俺は神道大助
高校卒業したばかりのピチピチ18才
俺はじいちゃんと山奥で暮らしていた。物心ついた時から両親はおらず、何故いないのかは、聞いてはいけない事の様な気がして訊ねる事もしなかった。
じいちゃんは、歳に似合わず引き締まった身体をしていて、めちゃくちゃ強いんだ。
何かの武道の達人だったとかならまだ納得できた話だったんだが、そんな事もないらしく、子供の頃に一度「じいちゃん何でそんなに強いの? 」と聞いた事があるが
「日々の修練の賜物じゃ。フォッフォッフォッ」
と言われた記憶がある。
そんな強いじいちゃんに俺は子供の頃から憧れて、じいちゃんみたいに強くなりたくて、日々修練を重ねてきた。
修練の内容は単純だった。
ひたすら走って体力をつけたり、やたらと重い謎の棒をひたすら振り続けて筋力と握力を鍛えたり、滝に打たれて精神力を鍛えたり、謎の古代文字、言語を習得させられたり、他にも様々な謎の修練があったが一番謎だったのが修練の締めに【雷】に打たれる事だ。
・・・・・・これは正直何を鍛えていたのか未だにわかっていない。
そもそも、じいちゃんが空に向かって手を掲げ振り下ろすだけで雷が毎回落ちてくる意味がわからない。
まぁそれも、じいちゃんだから何でもありなんだろうと意味のわからない納得をしていた。
打たれてる時にじいちゃんが
「死ぬなよっ! 大助なら耐えれる! 根性みせてみろっっ!」
と、毎回叫んでいたから根性を鍛えていたのかもしれない。
我ながらよく死ななかったと思う。
そんな修練をやり続け15年たったある日の事、いつものように雷に打たれ、ヘロヘロになって、じいちゃんと飯を食っている時の事だった。
「大助。儂はそろそろ天に帰らねばならないようだ。これまでよく修練に耐えてきたな。明朝出て行く」
「っ!! じいちゃん何言ってんだよ!? どっか調子悪いのか? だったら今から病院行って、それか・・・・・・」
「どこも悪くないぞ?? これはな定められた事なのだ。覆す事はできぬのだよ」
慌てる俺の言葉を遮って、じいちゃんが俺の頭を優しく撫でながら微笑んでいた。
突然の事で訳がわからなかったが、じいちゃんは嘘や冗談は言わない。
つまり、じいちゃんは天に帰ると言っているが、それはおそらく死ぬという事なんだろう。
寿命なのだろうか??
普通なら納得できない話だが、じいちゃんが言っているんだ。
じいちゃんは明日出て行く。
止める事は出来ないって事もわかってる。
じいちゃんが居なくなるという現実を理解し始め、悲しさと寂しさ、色んな感情の中、最も強いのは感謝の気持ち。
「じいちゃん。今まで育ててくれて、ありがとう!」
「じいちゃんは大助を誇りに思っておるぞ! 礼などいらん! 家族なんだからな」
じいちゃんは俺を優しく抱きしめてくれた。
飯の後に、じいちゃんに最後の稽古をつけてもらった。
稽古というか、殴り合いみたいなものだったが・・・・・・
勝てるとは思わなかったが、そこそこやりあえるんじゃないか? と思っていたが、甘かった。
じいちゃんはやっぱりじいちゃんで強かった。
百発くらい殴られ、ふらふらになりながらも、最後に意地で一発じいちゃんの顎を跳ね飛ばしてた所までは覚えている。
多分そのまま意識を失ったのだろう。
意識を取り戻した時には、じいちゃんの姿はもうなかった。
じいちゃんが居なくなっても日々の修練は欠かさない。
さすがに雷に打たれるのは無理だがそれ以外は今まで通りこなした。
朝早くに起き、走り、棒を振り、朝食を取って、畑を世話し、また修練。
暗くなれば修練を終える。
これが、俺の生活だった。
じいちゃんが居なくなっても、特に変わらない日々を過ごしていたが、一つだけ変わった事がある。
それは、就寝前にじいちゃんの置き土産である本を読む事だった。
じいちゃんが居なくなったあの日、意識を取り戻した俺は、居間の机に見慣れぬ【黒の本】が置かれている事に気づいた。
じいちゃんからの置き土産だろうかと気軽な気持ちで手に取って、本を開き読みはじめたのが全てのはじまりだった。