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ヒトコイ  作者: An@An
8/9

小春ー!大好き!

静夜たちがでて行って、静かになった。

ごんっ!机につっぷす。

どうして、こうなった…?

えっと、えっと、愛月とケンカして、クラスの女子にケンカ売って…。

『信じるってなに?』

自分の声が頭の中に響く。

私は、信じることができない。

それに、私の中には、あいつがいる。

琴音(ことね)…。

あなたの名前を思い出すだけで吐き気がするのよ。

考えるだけいやな気分になるだけだ。

頭によぎるあいつの顔を、頭を振ってどうにか追い出す。

ていうか、妖怪?神?人間じゃないもの?

静夜が、人間じゃない…。

確かに、そう考えたら一瞬で移動したのも、人ではない力のせいということで説明がつく。

そうか…人ではないのか。

だから、壁というものを感じなかったのかな…。

「プキュン」

「え?」

なにか、変な鳴き声がした。

なんだろう。猫?

鳴き声のした方へ目線を動かした。

「え」

そこには真っ白な狐がいた。それはまだ子供なのか、手に乗るほどの大きさだった。

触れようと、そーっと手を出す。

ぴょんっ。

「きゃ!」

いきなり飛んできたので驚いた。

「どうかしたか?」

声がして、後ろを向くと静夜がふすまの近くに立っていた。

「…なんでそこに立ってんの?」

「悲鳴が聞こえたから」

すごく小さな悲鳴だったと思うんだけど…。なんか、怖いな…。

「猫の聴覚は優れてるからね♪」

凪が静夜の後ろからでてくる。

「あれ?それって白狐?どこで見つけてきたの?」

凪が白狐を指差す。

「なんかそこにいた」

白狐がいた場所を指して言う。

「なんでいたんだろうね?しかもなんかめっちゃ小春に懐いてるし」

白狐はしきりに頭を擦り付けてくる。

「可愛いな…」

白狐の頭を撫でる。

「…っ!」

静夜と凪が固まる。

「どうしたの?」

「いや、小春って笑うんだね」

凪が驚いたように言う。

「そりゃあ笑うよ。人間だし。動物は好きだから」

動物は人間のようにドロドロとした感情がない。ただ、本能に従い生きる。他の物のことなんて関係ない生き方。人のように『裏切り』がない。

「なれるなら、動物になりたいよ。人じゃない何かに」

そういえば、静夜たちは人じゃないなら、そういう力を持ってはいないのだろうか。

「私を人じゃない物にはできないの?」

「無理だよ。そんな力はない」

静夜がきっぱり言い放つ。

「その物の形に生を受けたのなら、その人生をまっとうする」

わかってるよ…そんなこと。少し、願いをかけてみただけじゃんか。

「あ、待って」

白狐が、するりとわたしの手を抜けて窓からでて行ってしまった。

「行っちゃった…」

「まるで小春みたいだな」

静夜がぼそっという。

「どういうこと?」

「懐いたと思ったら逃げるところが、似てる」

意味わからんわ。

「あ、小春を連れてかなきゃ。来て」

静夜が私の腕を引っ張り立たせる。

「なに?」

立った瞬間、移動していた。

大きな木の下に。

周りは湖でその中央に私たちの立っている、島?のようなところがある。

「覗いてみてよ」

聖夜がしゃがんで湖の中を指さす。

聖夜の隣にしゃがみ、のぞき込む。

透き通る水の中に、私の顔が映し出された。


「こーとーねー!なーにしてるのー!」

「おままごと!小春も一緒にしようよ!」

「うん!」

私と、琴音の保育園の記憶…。

琴音とは家が近くて、よく一緒に遊んでた。

「小春〜宿題見せて!」

「えー!まだ終わってないの?しょうがないなぁ」

「ありがとう!小春ー!大好きー!」

「はいはい」

小学生。勉強の苦手な琴音は私のをよく映してた。

でも、待って。これ以上は見たくない。


「好きなんだ。付き合って欲しい」

クラスの男の子から告白された。

その人はクラスの中心女子の好きな子だった。

「ごめんなさい」


「ねぇ、告られたんでしょ?私が好きなの知っててアピールしたんでしょ?マジうざいから」

いじめは、始まった。

でも、耐えられた。

琴音がいたから。

「大丈夫だよ。あたしがいるよ!」

「ありがとう。」

数日後。

「琴音ー!行くよー!」

「うん!待って!愛ちゃん!」

琴音から、シカトされた。

でも、耐えられた。

こうなることは目に見えてた。所詮人は自分が一番可愛いから。

数日後。

私の写真、会話が全て黒板に貼られた。

会話内容は琴音との。

そして、琴音は。

黒板の前で

笑っていた。

「ゆってあげなよ!琴音!ずーっとうざかったってさ!」

「うそ、だよね?琴音ほやれって言われてしたんでしょ?」

私はゆっくり琴音に近づく。

「こっちに来ないで。そんなわけ無いじゃん。ほんとうざかった。琴音琴音琴音琴音琴音琴音琴音琴音。雑音。こうなってスッキリよ。全部私がしくんだの。どう?今まで信じてた人から裏切られた気持ちは?

あんたなんて大嫌いよ。」

崩れた。


「これが小春のトラウマ。わかるよね?自分の事だから」

聖夜が話しかける。

なんで今こんなの見せるの…。

「なんで思い出させるのよ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」

「何が嫌なの?裏切られるのが?信じて裏切られるのが?」

「ち、ちが「違うなんてことないよね?そうでしょ?」

聖夜が核心を突いてくる。

「こわ、いの。信じてた人から、裏切られるのはもうやだ。」

ほろほろ涙が落ちる。

そう。怖いの。怖いの。

もう、裏切られたくないの。

「じゃあ、琴音視点から見てみようか。小春の知らないことだよ」

聖夜が湖に模様を描く。

琴音の顔が映し出された。


「ねぇ、お願いがあるの。琴音」

愛が琴音に話しかけている。

「小春に仕返しがしたいの。おねがい!手伝って!」

「え!む、無理だよ!私にはできない!ほかの人に頼んでよ」

だん!

愛が壁を蹴った。

「はぁ?ふざけんな。いいよ?ここで断っても。これ、ばらまくから」

それは、私の写真。

ラブホへ知らない人と入っていく私の。

合成写真…。

こんなのばらまかれたら…私の人生は…。

「何その写真…。合成写真でしょ?そんなの意味ないから!」

「ほんとにそう思う?どれだけ話しても言い訳にしか聞こえないと思うわ」

「…っ」

「ねぇ?どうするの?これをばらまいて、あなたの親友の人生ぱぁーにしちゃう?ねぇ?」

「…わかったわよ。言う通りにする」


「琴音ー!」

私が話しかける。

琴音がシカトする。

「ごめん…ごめんなさい」


黒板に写真が貼られる。

その日、家で琴音は泣いていた…。

「あぁ…ごめんなさい!ごめんなさぁいぃぃ!!」


それから琴音はやつれていった。


高校に入り、更にやつれ、授業に出るのもやっと。


そして、今。


琴音の視点から見えるのは。

真っ白な壁。シーツ。ベッド。

そこは

病院…。


琴音は入院してる…。


「ごめんなさい、ごめんなさい」

虚ろな目で、ずっとつぶやいている。


「これが、小春の知らない真実。これからどうするのかは小春しだいだよ」

しばらく動けなかった。私は自分が一番最悪な人生を生きてると思ってた。親友に裏切られて、何も信じれなくなったから。

でも、琴音はもっと大変だった。今も一人でずっと私に謝っている。

私に許しを乞いている。

もっと、琴音にとって信頼できる人だったら…話してくれたかもしれない。脅迫されていたということを。

いま、私にできること。


「聖夜。私を琴音の所に連れて行って」

聖夜はにこっと笑って私の手をつかんだ。

風が巻起こる。

初めて、静夜の目を見た。金色の美しい猫目だった。

聖夜の尻尾が広がる。

周りが真っ白になる。

風はまだ感じる。

ふと、風が弱まる。白い世界が徐々に色付き始める。

赤い十字架が見える。

廊下が見える。

部屋が見える。

1523号室

石川琴音

はっきりとその文字が見えた。

コンコンとノックをする。

「…はい」

中からか細い声が聞こえる。

振り返り、静夜を見る。

静夜はふわりと笑った。

ドアを開けるとそこには、やつれた昔とは違う、琴音がいた。













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