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ヒトコイ  作者: An@An
6/9

綺麗だね

学校を出て、あのいつものレンガ作りの道に来たらやっと手を離してもらえた。

「ぷはぁ…。なにするのよ!」

静夜を睨む。

「ごめんね、ちょっと目を閉じてて」

静夜はそう言って、私の目を隠した。

「えっ、ちょっ、ちょっと」

一瞬、風が起きた気がした。

「いいよ」

静夜はそう言って、手を私の目から離した。

「え…。なんで?」

まず、目に入ったのはブランコ。

周りを見渡すと、あの公園であることが判明した。

私たちがいたところからここまでは、少なくとも一瞬で来れるところではない。

驚いているといつの間にか静夜はブランコに座っていた。

「どうやって…どうやってここまで…」

「そんなことよりさ、なんであんなこと言ったの?」

言葉を遮られた。

「あんな嘘まみれの友達なんて壊してやろうと思って」

「嘘まみれ?嘘なんて言ってなくない?」

「言ってたじゃん。悪口言わない、とかさ」

言わないとか言ってさ、言ってたじゃん。

あんなのからいじめが始まるのよ。

「あれは、悪口に入るのか?だって、あの後に言ってた言葉、小春もきいだだろう?」

「聞いたけど?それがなに?」

「小春は、あれを聞いて、冗談半分ってことがわからなかったのか?」

「わかるはすない。まず、あれが冗談半分だなんて誰が決めたのよ。わからないじゃない。なんで静夜がそんなこと言えるのよ」

「誰が聞いたってそう思うよ。笑いながら話してたし。小春は、それを認めたくないだけ」

ちがう。

「信じるって言葉に過剰反応するのはどうして?」

「別に!過剰反応してなんか!」

わかってる。それぐらい。信じると言う言葉に反応してしまうことを。自分のことだから、それぐらい…

『きゃはははっ!この男、的を射てるね!』

また来た…!もう、私の中にいるのやめてよ…。

『あんたの中に居座って欲しくないって?何言ってんの?私はずっといるわよ?きゃはははっ!』

なんなのよ。やめてよ!

『無駄よー?あんたが苦しむ顔がみたいものー♪』

この、性格ブス。卑劣な。

『はいはい。ねぇ、あんたと私はライオンとハエなの』

どういう意味よ。

「…る?…はる?」

『自分より弱すぎるから、ライオンはハエを振り払わない。つまり、あんたの言葉なんて何の効果もないのよ!』

誰か…誰か…。

「小春‼︎」

気がつくと、静夜が私の肩をつかんでいた。

「静夜…」

静夜の髪で隠れて見えない目を見る。

静夜はちゃんと見えてるのかな…。

ははっ…こんな時になに考えてるんだろう。

「ごめん、小春」

静夜はそう言って抱きしめた。

「な、なにして…。てゆーかなんで、静夜が謝るの…」

静夜はさらに抱きしめる力を強め、「ここじゃあ、力が使えないから移動するね」

「え…?」

そう言った静夜はまた私の目を塞いだ。

風が起きた気がした。

さっきと似てる…。けど、ちがう。今度の風は、長い。

何が起きてるのかわからないから目を開けてみても、静夜の手しか見えない。

突如、浮くような感覚に陥った。

全身に鳥肌が立ち、思わず静夜にしがみつく。

「ね、ねぇ、なにが…」

「もう少しだから、待ってて」

1分ほどそうしていると風が少し止んだ。

足が地面に着く感覚がする。

どこかにたどり着いたようだ。

「いいよ…」

静夜の手がそっと離れる。

「うわぁぁあ」

そこには、広い広い草原が広がっていた。柔らかい緑の色をした植物が暖かい日差しを浴び、咲き誇っていた。果てしないこの草原にポツンとたった一つ、建物が立っている。赤茶色をした建物で、日本のお城のような形をしている。その壁には日々が入り、蔦がところせましと這っていた。ボロボロに思えるのに、それを感じさせない貫禄がある。

でも、またなんでこんなところに一瞬で…。

「ねぇ、どうやってここに……ってえぇ?!」

静夜の方を見ると、静夜の頭に耳が…。しっぽが…。え?

静夜の頭によく見る猫耳よりも大きめの猫耳が着いており、髪の毛と同じ、黒色をしている。しっぽもすごく大きく、二股に分かれている。しっぽも同じように黒い。

あ、夢か、そっかぁ。夢だからかぁ。

「つまんでみる?ほっぺた」

静夜が私のほっぺをツンツンする。

「うん、してみて…」

つねっ。

「痛い…」

夢じゃない…。

「ていうか、今私の心の中読まなかった?」

「え?うん」

うんって…。

「ねぇ、この姿みてどうも思わないの?」

「思わないわけなくない?」

そう言うと、しゅんとしたように猫耳が垂れた。

「だって、目をつぶってたらこんなところに移動してるし、静夜を見たらなんか生えてるし…。でも、すごく綺麗だね、その姿」

静夜の耳がぴんっとたった。

「綺麗…?」

「うん、ツヤツヤしてて」

すごく綺麗だと思った。光に反射して七色に光ってる。まるで、初めに感じた静夜の雰囲気の色である。

「すごく、綺麗だね」

いつの間にか、静夜の髪に手を伸ばしていた。

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