これ以上は、ダメだよ
翌日の朝、すこし重い足取りで学校へ向かう。
途中、クラスメイトにじろじろと見られたが中学校でもあったので気にしない。
席に着く。
いつもの『おはよう!小春!』
の声が教室に響かない。
からら。教室の扉が開き担任が入ってくる。ざわついていた教室も一気に静まる。なんせ、この担任はこの学校で一番怖い先生なのだ。
「きりーつ。れい。ちゃくせーき」
委員長の号令で挨拶を済ませる。
「えー、今日は、風沢は休みだ。以上!」
静まっていた教室は、また騒ぎ始めた。
理由、それは簡単。風沢は愛月のことだから。
ひそひそ話がまた聞こえる。こっちを向きながらだからわかりやすい。
「やっぱり昨日のことだよね」
「だって、あの言い方はないよー」
「愛月かわいそー」
かわいそう?へぇ、思っても見ないことをペラペラとまぁ。
あんたたちみたいなのがいるから信じれないんだよ。
なにも。
まぁいいよ。
でも、こうしてると…あいつが、来る…。
『きゃはははっ!なになに?また、はぶられんの?やっとできた友達だったのにね!あんたがそんな性格だからよ!あんたを信じる人なんていない!人の言ってることは全部嘘よ!
きゃはははっ!』
うるさい。
『あんたってなんでそんなんなのかな?』
うるさい。
『きゃはははっ!あんだけのことで折れるあんたが悪いのよ!バッカじゃないの?』
うるさい。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
「うるさい‼︎」
教室もあいつも静かになった。
私の一言で。
「どうしたー?折出?」
担任が声をかける。この無神経男め。
「なんでもないです」
そう言って座り直す。
「お、そうかー!あんまり騒ぐなよ」
そう言って、教室をでて行った。
「ねぇ、折出さん」
とある女子グループがリーダーを先頭にやってきた。
「あんたさ、あんだけのこと言っといて、愛月になにも言ってないの?愛月がかわいそうだって思わないわけ?今日休んでるんだよ?」
「だから?」
睨まれたので睨み返しながら言う。
「だからって!なにその態度⁈信じるってなに?とかほざいちゃってさ!」
なにをわめいてるのだ?こいつは。
「じゃあ、あんたらは信じてるの?お互いを?」
「もちろんよ!ねぇ!」
リーダーの声にみんなが反応し、頷く。
なに嘘ついてんの?
「へぇ、みんな仲がいいんだね。お互いの悪口とかも言わないんだろうな」
「は!なに当たり前のこと言ってんの?馬鹿馬鹿しい」
「じゃあ、君さぁ、この前渡り廊下で、『花ってなんなの?リーダーぶっちゃって。まじうざいんだけど』って言ってたのって、なに?」
私に指を刺された人が真っ青になって行くのがわかる。
「なによ!そんなこと言ってたの⁈」
リーダーがばっと振り返る。
「ち、違うよ花!私言ってない!」
「本当なの⁈前々から怪しいと思ってたのよ!あんたらこそこそして!」
ほら、誰も信じてない。信じるなんて、幻想よ。
「まだあるよ?この前なんか、あんたが、もがぁ」
まだ言ってやろうと思ったら口を塞がれた。
誰よ!
振り向きたいけど、口を塞いでる手で、顔ごと押さえつけられて振り向けない。
「それ以上は、ダメだよ」
この声は…、静夜…?
「ごめんね、この子、連れてくね。先生には適当に言っててくれると嬉しいな。あと、うざいんだけどの後には続きがあるよ。『でも、そこがないと花じゃないよね』って言ってたよ。お互いを嫌になる時ぐらいくるよ。それをどう受け止めるか、それから、どうするのか、それを2人一緒に考えないとダメなんだよ。
それじゃあ」
私の口を塞いで、ついでに手も後ろで拘束したので、完全に身動きが取れなくなった。おとなしくついて行くしかない。
静夜に半ば強引に連れて行かれるようにして、教室を出た。