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ヒトコイ  作者: An@An
3/9

名前

ダッシュして祖母の老人ホームにつくと、ぎりぎり6時の1分前。

「はぁはぁ…」

なにも運動をしていない私にはとてもきつい…。

受付…、いかなきゃ。

「小春ちゃん!」

声のした先を見ると、高崎さんが笑顔で走ってきた。

高橋さんは祖母のお世話係さん。

若くて爽やかで頑張り屋さんらしいので、マダム達に人気だそうだ。

「おばぁさんが心配されてたよ。来るのがいつもより遅い。ってね」

高橋さんは爽やかスマイルで笑った。

「いろいろありまして、遅れました」

祖母の場合、心配ではないだろう。ただ、機嫌が悪くなってるだけだ。

それを言って来る高橋さんはなにを考えてるのか。

「なにがあったの?」

祖母の部屋に行く途中、高橋さんに聞かれた。

「友達とか勉強してて遅れました」

とっさに嘘をついてしまった。

なぜだろうか。言ってはいけないような気がしてならないのだ。

「そーなんだぁ。偉いね」

祖母の部屋についた。からから。

扉を開ける。そこに、ベッドに横たわり外をみている祖母がいた。

「おばぁちゃん」

声を掛けると、振り向いた。

「遅かったじゃないか」

「うん、ごめん」

イスに座り、祖母の方を向く。

「それでは、僕これで」

高橋さんがニコッと笑って部屋をでて行った。

「最近はどう」

「普通だよ」

「そうかい」

「うん」

カチカチカチカチ。

時計の針だけがこの部屋で動いている。

話すこともなく、ふとさっきの青年との出来事を思い出した。

『またおいで、小春…』

名前…なんで知ってたんだろう。

会ったことあったっけ?

あの人の名前も知らないし…。

「ねえ、おばあちゃん。私がいつも通る道に……。やっぱりなんでもない」

祖母はこっちを向いて、また外を向いた。

「そろそろ帰るね」

そう言って立ち上がった。

「それじゃあ」

祖母の部屋をでた。

6時半。

少し、外は暗い。

おまけに雲がでて来て、月明かりもない。

「小春ちゃん!送っていこうか?」

高崎さんが後ろから声をかけて来た。

「いえ、結構です。それでは」

高崎さんは、苦手だ。

あの笑顔の裏になにがあるのかわからない。

大抵の人はそうだ。にこにこにこにこ。

その張り付いた笑顔の裏になにを隠しているのか。

『きゃはははっ!きたなぁい!』

「ははっ、うるさいなぁ」

夜道に自分だけの乾いた笑い声が響く。

「速く消えてくれない?」

『きゃはははっ!やだぁー!あんたの願いなんか聞くわけないじゃん!』

誰か…。



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