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魅了の魔眼

お待たせしました

「お姉さん!」

「なになに?」

「……死んで?」

「ファッ!?」


ドスッと下腹部に衝撃があり、遅れてじわじわと鈍痛が走る。

条件反射で痛みの元を掴み、空いた方の手で少年を朱点に放り投げた。


「そのジャリ、私の事を刺しやがった!!」


刺された所を見ると、刃渡り15cmくらいの出刃包丁が、服を突き抜けて素肌で止まっていた。


あ、あぶねぇ……私自身の防御力がガキンチョの攻撃力を越えて無かったら、本当に刺さってたぉ…次からは防御力の高い服にしなくちゃ。


「腹筋が無ければ即死だった……」

「主様に腹筋などあるのかや?」

「あるよ!…少しくらい」


五回くらいなら腹筋出来るもんね。ドヤッ!

ちなみに懸垂は三回だぞい。凄いだろ!


呆然とやり取りを見ていたベアトが、我に返ったみたいで私に駆け寄っては、私のポンポンを頻りに確認してくる。

いやん、見ないで私のツルツルポンポン!


「は、離せ!クソオーガ!」


空中に浮いた朱点に首根っこ掴まれたジャリが、じたばたと暴れながら朱点に暴言を吐き散らかす。


朱点は余裕な表情で受け流しているが、小さくこめかみがピクピクと動いているのを見逃さない。

すげぇキレてる…


「……主様、こやつ喰らっても良いかのぅ。近頃、血肉に餓えているのじゃ…さぞこの童の精気と眼は美味いじゃろうな」


そう言いながら、少しだけ長い舌でジャリの頬を舐めた。


「ひぃっ!?」


クソジャリが真っ青になってガクブルしはじめた。

朱点が何かしたに違いない。


「マスター、憲兵さん呼んで貰えません?このジャリを突き出しますから」

「あ?あ、あぁ…分かったよ。………腹は平気なのか?」

「まぁ、なんとか…」


そう言って、ツルツルポンポンを撫でて見せる。


しっかしなぁ…ガキンチョに刺さる覚えは無いからねぇ。なんでぇ?

まぁ、本人に聞いたほうが早いか。


「朱点、そのガキンチョこっちに持ってきて」

「あい分かった」


ガキンチョの襟首を掴んだままこっちに来て、私に突き出す形でガキンチョをこっちに向けてくる。

ガキンチョの青い瞳が恐怖で揺れていた。


「憲兵さんが来るまでに、少し質問に答えて欲し「だ、誰が話すもんかっ!」…あっそぉ、話してくれたら憲兵さんに痛い事をされないようにしてあげたのに」

「絶対騙されないぞ!」

「……そっか、じゃあ話す気は無いと」

「そ、そうだ!その為に訓練してるんだからな!」


訓練……痛みに耐える訓練?

どこぞのフォックスハウンドかよ…てことは、このガキンチョは普通のガキンチョでは無いって事だよねぇ。

あれは使いたく無かったけど、黒幕を知るためには致し方ないかぁ。


「ガキンチョ、私の眼を見て」

「へ、へん!誰が見るか!!」


ガキンチョが強がってそっぽを向くので、顎を掴み上げて無理矢理こっちを向かせる。

なんか平気で痛がってる…訓練してるんじゃないんかい…


ガキンチョと無理矢理眼を合わせて、職業に関係無く発動出来るアクティブスキルを発動させる。

そのスキルの名は【魅了の魔眼】

その効果は『相手を魅了する。レベルに比例して効力が上昇し、最大レベルで相手を洗脳、思考を掌握する。』なんて、凄いおっかないスキルだ。

今はきっと眼玉が赤く光って紋章が浮かび上がっているはず…さながらギアスみたいなんだよね。

どうなってるのかと、昔鏡に向かってギアス放った事があって、自滅したのはナイショだぉ☆


「ま、マスターの眼が真っ赤に光ってます…」

「私の眼を直視しちゃダメだよ」

「は、はい」

「朱点もね」

「ふみ、分かったのじゃ」


さて、既にガキンチョは私の【魅了の魔眼】の支配下にある。

今回は情報を引き出したいだけなので、洗脳はしない。


「私の質問に答えてくれるかな?」

「……はい」

「何故私を殺そうとしたのかな?」

「……はい。殺せと命令されたからです」

「まぁ当たり前か…誰に命令された?」

「……はい。ドイモイ様です」


ドイモイとか…ベトナムの市場政策かよww


「それで、その刷新…じゃなくてドイモイは何者?」

「……はい。ドイモイ様は大商人です。僕みたいな子供を使って暗殺みたいな事も請け負っています」

「ほほう、成る程ね…この国に蔓延るウジ虫の一匹って事かぁ……て待てよ?ドイモイって太ってて脂ギッシュ?」

「……はい。悪趣味で肥太ってて脂ギッシュです」


アイツじゃん…ベアトの元持ち主じゃん。

他に喧嘩売るような事してないから、心当たりが有るとしたら香具師(ヤシ)しかいねぇ…


「アイツは何処に住んでるん?」

「…はい。上級地区一番地です。でっかい商会の建物があって、そこに住んでいます」

「成る程ね…じゃあ早速ぶっ殺しに行きますか」


魔眼を切って頭をポリポリ掻く。

うーん、やっぱり一度雄輔に許可を取った方が良いよねぇ。国王の姉って立場だけど、一応自分の国じゃ無いし大商人だから無断でぶっ殺したらどう考えても不味いもんなぁ。

下衆野郎なのは間違いないけど。

身寄りの無い子供を使っての暗殺とか愚劣の極みだぉ。お天道様が許しても私が許さん。


「お、おい。ねぇちゃん、さっきから物騒な事言ってるが、ドイモイの野郎を少人数で殺るのは止めた方が良いぜ。なんたって私設軍なんてもんを抱え込んでやがるからな」


やり取りを脇から見ていたマスターが忠告を入れてきた。

案外良い人っぽい。


「おやっさん、大丈夫大丈夫。私なら世界中の軍隊敵に回しても敗けないから」

「まっさかぁ!…そ、それってどう言う…」

「私、この国の王様のお姉ちゃんだもんねぇ。あの子よりも何百倍も強いぉ」

「えっ、フンメル王の姉、えっ?」

「んじゃあ、また来るねおやっさん」

「…お、おい!このガキどうすれば良いんだよ」


魔眼の副作用で、ボーッとしているガキンチョを指差してマスターが呆れたように言った。

いや、実際呆れてると思う。

まぁ、後始末は任せても大丈夫だよね。


「そのガキンチョは、適当に縛って憲兵さんに引き渡しておいて欲しいなぁ……あぁ、それと、はい。お金」


公用金貨百枚が入った袋を一緒に取り出した【捕らえるロープ君】と並べてカウンターに置いた。


「…これは?」

「袋の中には金貨百枚入ってるから」

「おいおい…!さすがにそれは貰いすぎってもんだ。精々野郎共が飲んでる分だって金貨三十枚くらいだぜ」


マスターが頭を抱えてやれやれと呟く。

もう十分呆れられたところで、もう少し呆れて貰おうかな。

なんか、老けているマスターが更に老け込んだように見えて大変忍びないのですが…ね。

いやぁ、私にだって罪悪感くらいはありますよぉ。


「じゃあ、またボチボチ飲みに来るからさ、その時に飲み代そっから引いてくれるかなぁ?金貨二十枚はマスターに対しての迷惑料だから、お納め下さい」

「よくまぁ、ホイホイと大金を渡せるな…どっかの富豪の娘って言った方が説得力あるぜ」


そう言いつつも金貨の詰まった袋をいそいそとカウンターの中にしまい、【捕らえるロープ君】を掴んだ。


「それで、これはなんに使うんだ?もう俺は何も驚かんぞ」

「それは、念じた相手を拘束するアイテム」

「魔導具かよっ!!」

「驚かないんじゃなかったん!?」


【捕らえるロープ君】を握り締めたまま、マスターが真顔で叫んだ。

そして、私の渾身の突っ込みはガン無視と…


何を勘違いしたか、私の奢りでお酒飲んでる冒険者のおっさんズは、こちらを酒の肴にして囃し立てて来る。

べ、別に恥ずかしくなんかないんだかんね!?…なんて口が縦に裂けても言えませぬ。

と言うか、こっち見んなし。


「あのガキンチョ、治ったら何するか分からないからねぇ…取り敢えず自己判断で使ってね」

「お、おう。分かった」

「じゃあねぇ」


マスターに手を振って酒場を後にした。

ちなみに、またなんで来るかと言うと、料理が意外に美味しかったのと看板娘のおにゃのこが可愛かったなのですが…コイツもまた言えませぬ。特に後半が…


「マスター、この後どうするんですか?」


今は頭の上にしがみついているミルクたんが、ぺちぺちと私の額を叩いて聞いてきた。

何故に叩く?


「それは我も聞きたかったのじゃ」


どうやら朱点も気になるところだったらしい。

空中に浮かびながら背中に寄り掛かってくる。

実際、あまり胸が無いから嬉しくもなんても無い。


「ドイモイの事でしょ?アイツはギルティだよ。つまり有罪…絶対に許さん」

「それは分かっておるのじゃ。主様の言うところのぷらんとやらを聞きたいのじゃ」

「成る程ね…それは………」





「お姉ちゃん、急にどうしたんだ?」

「いやぁ、少しこの国に蔓延るウジ虫共を芋づる式に潰したいと思ってさ」


私の言葉を聞いて、ポカーンとする雄輔。

酒場を後にした私達はその足で王城に向かい、鍛練場で兵士の皆さんと剣の打ち合いをしていた雄輔を引っ張って来て、今に至る。


「蔓延るウジ虫ってどういう意味だよ」


平成の時代に蔓延る悪鬼悪霊では決してない。


「身寄りの無い子供を集めて暗殺教団作ったり」


自分で言っててアレだけど、アサシング○ードでもないぉ。


「ちょっとからかったら、その子供暗殺者を使って私を狙ってきたり」


その下りで雄輔の眉がピクリと動いた。

顔はそのままバカ面晒してるけど…


「危険度に見合わず、誰も見向きもしない様な安い報酬で奴隷を盗賊から助け出させて、直ぐに引き渡せだの冒険者をその場でバカにするだの」


私の手を握りながら後ろに隠れているベアトがビクッと動いた。

ちなみに隠れているのは、単に雄輔の凶相が原因と思われ。


そんな事は知らずに、雄輔のコメカミがピクピクと二回連続で動いた。

しかも、今は鬼さえ尻尾巻いて逃げちゃいそうなくらいおっかない顔してる。

私が今すぐ逃げ出したいぉぉぉぉ!?

きっと今は腸が煮え繰り返るくらい怒っている筈…少し連中を探ったらヤバい証拠がザックザクと出てきそう。

例えば、諸王国連合のどっかの国に情報垂れ流しとか、国のお偉いさんとの賄賂による癒着とか、不当な高利貸しとかぁ…

数えたらキリがなさそう。


「………そのクソ野郎は何処のどいつだ?」

「大商人のドイモイ様だとさぁ…ねぇ、潰して良い?潰して」

「ドイモイってぇと、あの脂ギッシュの豚野郎かな?」

「そうそう、時間の経ったチキンナゲットみたいなヤツ」


お手々ベトベトになるよねぇあれ。美味しいけど。


「ちょ、ちょっとリアルな感想……でもお姉ちゃん、アイツ意外に国に貢献してるんだよ…勝手に処刑すると癒着してやがる反王親派の貴族共が五月蝿いから、逃れようのない罪。例えば…」

「国会反逆罪、とか?」

「正に」


ニヤリと口の端を歪めて犬歯を剥き出しにする。

どう贔屓目に見てもか弱い乙女()の貞操を奪おうとしてる盗賊の頭目にしか見えない。


「俺はそんな変態じゃないぜっ!?」

「か弱い乙女を頭目は押し倒してそのたわわな乳房をこう両手で、ハァハァ、両手でぇぇぇっ!?……はっ!!私は一体何を?」

「知らねぇよ!?」

「何故にこんなにグチョグチョに?」

「いや、ごめん。そう言う事は言わなくて良いから」


おかしい…今回は口を開いた覚えは無いのだけれど……


『お、おかあさん。おかしくなっちゃったの?だいじょうぶ?』


本当に泣きそうな顔をしてスケッチブックに文字を書き込んだベアト。

手が震えたのか、ひらがなが少しミミズが這ってる。

悪い事しちゃったかなぁ…


『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ

このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!

正解しても何も無いけどね。

それでは行きます!


『天鵞絨』


これはなんと読むのでしょうか!

出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。

そして、前回の答えの発表です!


『田鳧』と書きまして、『タゲリ』と読みます。

タゲリは、チドリ目チドリ科タゲリ属に分類される鳥類の一種でタゲリ属の模式種です。

名前の由来は分かりませんでした。』

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