弟に会いに行こう!
お待たせしました!
そうそう、もしこの小説の更新が、三か月以上滞っていたならば、私の身に何かあったと思ってください。
「ありがとうございますっ!本物にありがとうございますっ!」
「い、いえ………大した、事じゃ…ありませんから、ね?」
「お姉ちゃん、ありがと!」
ディノス少年のお母さんと少年に何度も何度も感謝され、ある意味こう言う事にはコミュ障だと認めざるおえないが、なんとか言葉を紡いでその謝辞を素直に受けてからエーリカんに案内されて雄輔の居城に赴いた。
だけど、ディノス君が「お姉ちゃん」と言った時に、え?って顔されたのが腑におちねぇ…
これは余談だけれど、どうやらこの時のディノス少年は強く私の姿に感銘を受けたらしく、25歳と言う若さで【オリハルコン・ランク】になってしまったのはまた別のお話。
「これまた呆れた…」
これまた前例に漏れず、呆れるくらいデカイ西洋式城が建っていた。
だいたい、皇居である江戸城敷地以上王都のお城以下と言った感じかな。
それでも十分デカイが…
だけど、呆れたのはそこではなく、オプタティオ王国が万年雪から逃れた方法に呆れたのだ。
どうやら、連中は地中に巨大な洞穴が有るのを発見したようで、その中に街の機能を全て移転させて寒さから逃れていたのだ。
さながら、ガ◯ダムの地◯連邦軍総司令部があったジャブローみたい…いやぁ、むしろ本物でしょ。
ちなみに、地上にあった街並みは地下に行く為の入り口を隠す意味合いでもあるようだ。
その洞穴の中央に城が建っているわけだ、これが呆れないでなんとしましょうか。
今はヘルムを被っているから、周りには見られていないけれど、きっと今は相当なアホ面曝してるんだろうなぁ……
「こちらです」
「う、うん」
城門の前に立っている衛兵に一言に挨拶してから、エーリカんの後ろにくっ付いて行く。
完全に顔パス状態だ。
さすがエーリカん、そこに痺れる憧れるぅぅ!
「……のぅ主様。さっきから思っておったのじゃが、何故伯母上なのじゃ?」
宙に浮いたままの朱点が、こっそり耳打ちしてきた。
「あぁ~、いろいろあってねぇ…私と年齢の近い姪っ子と甥っ子が居るんですわ…凄まじい事に…」
「ふむ、よう言っている事が分からぬが、にゅあんすとやらは分かったのじゃ」
なんだか納得した様子で、両肩にしだれ掛かって来たが、絡むとまた面倒臭いので無視しながら、廊下を進んでいく。
何だか頭後ろがうるさいけど、無視無視。
そうして歩いていると、遠くから断続的に破壊音と誰かが言い争う声が聞こえてきた。
その声と音に、エーリカんが頭を抱えている。
速足で音が聞こえる扉の前まで行くと、扉の周りには召し使いやらメイドさんやらが沢山心配そうに立っていた。
その中でも、いかにも執事長みたいな、セバスチャン然として豊かな白髪をしているお爺様が、エーリカんに気付いて、こちらに近寄ってきた。
すごい姿勢が良い!
「おぉ、エーリカ姫様…」
「ノリスか、ご苦労……で、また父上と母上か?」
「えぇ、左様でございます…ですがこの度はアイリス姫様も加わっておりまして…手の施しようが御座いませんでして……そちらの方々は?」
「ん?あぁ、こちらの黒い甲冑を纏っている方が私の伯母上と浮いておられる方が仲間の方だ。くれぐれも失礼の無いように…仕方無い、私が仲裁に入ろう」
「おぉ、陛下の姉上様で御座いましたか!使用人頭のノリスで御座います。ではエーリカ姫様、お願い致します…」
どうやら、エーリカんが雄輔と嫁さんのケンカを止めようとしてるみたいだ。
なんか面白くなって来たぞ!
「じゃあ、私も手伝おうかな?雄輔を物理的に抑えられるのは私だけだし」
「伯母上…!忝ない……」
「我は高見の見物とやらをしようかのぅ」
朱点は乗り気では無いみたいなので、エーリカんと二人で扉の前に張り付き、一、二の三で扉を開け内部に侵入した。
部屋の内部はそれはもう凄まじい事になっていて、高そうな調度品以外は滅茶苦茶。
ソファーは吹き飛び、マボガニー製みたいなテーブルは真っ二つ、天井は穴だらけなんかはもちろんの事、投擲されたと思われる金属製のゴブレットが壁にめり込んでいたりと、まぁ形容し難い事になっていた。
で、中に居た三人は入って来た私達に気付かずにケンカを続行していた。
「あなたが悪いのよ!新しい妾なんか作って!」
「ち、違う!誤解だ!!」
「違く無いもん!アイリス見たんだからね!パパが知らない女の人とイチャイチャしてるところ!」
「あれはどう見てもセレスだろ!!」
「嘘!セレスさんはあんな髪の毛短く無いの、アイリスは良く知ってるんだからね!」
「あれは髪の毛を結ってるんだって!」
「あなた!証拠はあるって言うの!証拠は!」
「だから本人に聞いてこいって何度も……!」
はい、どうみても痴話喧嘩ですね本当にありがとうございました。
また彼氏すらいない私にそんなもの見せ付けやがってしかも新しい娘までいるし奥さん綺麗だしなんか雄輔には勿体無い気がするしアイリスちゃん可愛いし何だかんだ言って高そうな調度品には手がつけられて無いし無駄に雄輔だけがリア充してるし………
「むきぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
あ、嫉妬の余りつい大声を上げてしまった。
そこで、ようやく我々に気付いたようで、嫁さんの方は私をいぶかしむような視線を送り、雄輔はパッと厳つい笑顔になった。
お髭が眩しいぉ…
取り敢えずヘルムだけ消して、素顔を晒す。
「…あなた、この方の事を説明してもらいますからね」
「分かってるよ!アイツは俺の姉貴だよ。全然そんな風には見えないだろうがな」
お姉ちゃんをアイツ呼ばわりて……
「本当なんですか?」
「ほ、本当……です」
をい、雄輔何故そこで眼を逸らした。
「そこの方、本当にこの人のお姉さまなんですか?」
「え、えぇ。本当ですよ。雄輔…フンメルと約束してたので、今回お邪魔しました」
「そうだったんですの!あらやだ、お恥ずかしいところを御見せしましたわ!」
さっきとはうって変わって、にこやかになった。
社交界の人こわぃぃぃ…
「私の出る幕は無かったようだな…」
隣でエーリカんがボソッと呟いたのが聞こえて、可哀想だったので頭を撫でてやった。
で、ケンカの原因は雄輔の浮気騒動だったのだけど、王様なら複数人愛妾やら側室居てもおかしくないんじゃ無いかなぁと思ったけど、そこは敢えて口にせずに、雄輔が言い張っていた側室さんに確認を取りに行ったところ、雄輔の言っている事で間違いないとのこと。
間違えそうな事をして申し訳ないと側室が謝ったら、嫁さん(正室)が慌てふためき出したので、光属性魔法の【コンヒューズ・ヒール】と補助魔法で精神力を強化して、落ち着かせた。
「おほほほほ…御見せ苦しいものを御見せしてしまいましたわ…義姉様」
「いや、大丈夫大丈夫。こちらも、弟が迷惑かけてるでしょうし…」
そんでもって、行き着いたところが御茶会と…
嫁さんに側室さん二人の計四人による御茶会なんですが、みんな綺麗なドレスを着ているなかで、私だけ黒い甲冑ってなぁ…凄い浮いてる…
ちなみに朱点はどっかに漂って行った。
まぁ、なんだかんだ言いつつ【アダマン・フルメイル】は姫騎士モデルだから、遠くから見たら黒いドレスに見えない事も……無いかぁ?
「義姉様は冒険者をなさっていらっしゃるのでしょうか」
「えっ?」
側室A(仮)さんが、私の姿から想像したのか言ってきた。
「…あ、あぁ。はい、そうですよ」
「凄い!」
「うぇ?」
側室Bさん(仮)が、両手を打ち鳴らして微笑んだ。
「えぇ、確かに冒険者の方は格好良いですものね……陛下も昔は冒険者をなさっていらっしゃったとお聞きしましたもの!」
と、側室A(仮)さん。
「へぇ、雄輔が冒険者ねぇ……」
「おや?義姉様は知っていらっしゃったのでは?」
「うーん、何となくは知ってたんですけどねぇ…」
そう言えば、雄輔確か私がこっちに来たすぐ後に飛ばされたんだよなぁ…
てことは、小学生でこっちに来た……良く生きてたなぁ。
逞しくなっちゃって……お姉ちゃん嬉しいよっ!
「あっ、そう言えば!義姉様はどうやってこちらに来られたのですか?トンネル通行の許可が降りるのが大変だったのでは?」
「あぁ~~…」
どうする……本当の事言うかぁ?
まぁ、雄輔も大概規格外だから大丈夫だよな。
「実はですね、山脈を越えて関所破りを……」
「「「……えっ?」」」
「いや、だから山脈を越えて関所破り……」
「「「えっーーーー!?!?」」」
アッーーーー!!じゃ無いのかよ。
いや、アベさんに掘られた訳じゃ無いけどさ。
女は帰れ!でしょ…アッーーーー!!
「よ、良くあの山脈を越える事がお出来になりましたね……越えようとすると、必ず龍王がそれを阻止する為に現れると言い伝えがあります」
龍王ねぇ、あれかな?
崖登ってる時に出てきて、大剣で撃退したあれ。
確かに結構デカかったよなぁ。
「出てきたには出てきたけど…なんか魔法が使えなかったから大剣使って追い払いましたよ?」
ポカーンとした三人は、暫く酸素を求める金魚みたいに口をパクパクしていたが、嫁さんが気付いて口を手で塞いで咳払いした。
その声に我を取り戻した側室の二人は、同じように咳払いした。
「失礼致しましたわ………ですが、まさか本当に龍王が居たなんて…義姉様よくご無事で!」
「そうですわ!」
「えぇ!とっても強いのですね!」
「そ、そんな事ありますけど……!」
改めて言われると照れるなぁ。(モジモジ)
でも、龍王だったのかぁ奴さんは……まぁ確かに元の素材が安物だったとは言え、冶金厨の知り合いが鍛えたミスリル鋼製の大剣が、戦闘中に一本へし折れた位だしなぁ。
いや、ちょっとあれ?って思ったけど、雄輔やエーリカんでも渡り合えるくらいだったんだよなぁ。
ちなみに、折れたブレード部分は崖下に転落するまえに、私の左手に封印された筈の【最終形態ウィザード級もったいないオバケデンジャラスデラックス】が暴走し、捕まえてアイテムボックスの中に締まっておいた。
私だって、伊達にすべてのジョブをフルカンストしている訳では無いので、だいたいの鋼は満足するくらい弄れる。
例えば、三人の結婚式に立ち会えなかった事(物理的に不可能)と友好の証として、私が直々に全属性の補助魔法とジョブ【精霊王】のユニークスキルである、【精霊達の加護】を添加付与させたミスリル製のティアラとネックレスが二つ、それと三人分の指輪を折れた剣先で作る事など朝飯前なのだ。
まずは折れた剣先を魔法でインゴットに形を変え、虹色に光を反射する銀色の見るものを惹き付ける輝きに、うっとりと溜め息を吐く女性陣を尻目に、職業を細工師に変えてスキルによって想像したように形を変形させて土台を作り上げ、アイテムボックスの片隅で燻っていた宝石系換金アイテムを取り出し、カッティングして嵌め込んだ。
ダイヤモンドやらサファイア、ルビーにトパーズ、クリスタルやオニキスと言った光り物に私は興味無いし(そもそも似合うとは思えない)、市場に流したら価格が崩壊しかねない程の量を保有していたので、出し惜しみせずに飾り付け、以前テレビで見たイギリス王室が保有しているティアラやらネックレスやらと遜色無い物が出来上がった。
まぁ、真似っこしてるだけはあるかな?
そのなかで、指輪だけは一つしか宝石を使わず、代わりにびっしりと魔法的意味が籠められてそうに見える、中二チックなレリーフを刻み込んでみた。
これで勝つる。
三人は宝石の輝きと装飾の美しさに眼を奪われていて、子供みたいにキラキラと両目を輝かしていた。
ティアラは正室である嫁さんに、側室A、Bさんにはネックレスを、最後に指輪を配って、指輪だけは片時も外さない様に言った。
取り敢えず、すべてのアクセサリーに同じ魔法を付与させてあるが、一日中着けていられるのは指輪だけなのだ。
最低でも指輪さえ身に付けていれば、大抵の外敵から命を守ってくれる筈だろう。
「ほ、本当によろしいのですかお義姉様……憶測ですが、指輪だけで城が買えますわ?」
「気にしない気にしない。これはある意味迷惑料も入っていますし、何よりお三方とは気が合いそうですからなぁ……主に弟方面で…グフフ」
『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ
このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!
正解しても何も無いけどね。
それでは行きます!
『紫雲英』
これはなんと読むのでしょうか!
出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。
そして、前回の答えの発表です!
『金鳳花』と書きまして、『きんぽうげ』と読みます。
きんぽうげとは、キンポウゲ科の多年草で、標高が比較的高い山野に生息し、光沢のある黄色い小花を咲かせます。
花は両性花で、花被としてがくと花弁を両方持つもののほか、花弁が退化し、がくが花弁状になったものもあるそうです。
雄蕊は多数、雌蕊も複数あり、いわゆる多心皮です。
雌しべは多数の心皮が根本まで分かれており、それぞれに柱頭があって、それが寄り集まった構造をしているようです。
また、綺麗な花には棘があると言ったように、アルカロイドを含む有毒植物なんだとか。
毒物に定評のあるトリカブトや、ツンツンしてたり狂気が混じっている女の子の名前に定評のあるアネモネなんかも、実はキンポウゲ科だったりします。もちろん毒もありますよ。』