血の暴走
ふう、何とか更新できました…
〈エマージェンシーコード発令〉
〈問題を検索………エラー〉
〈エラーエラーエラーエラーエラー…問題を検出〉
〈精神的欠損または暗示により精神の死亡を確認〉
〈審議中〉
〈審議中〉
〈審議中〉
〈最終審議中…………コマンド334:コマンド338に変更〉
〈システムを移行中…〉
〈欠損のリカバリーを開始〉
〈精神の再構築を開始〉
〈3〉
〈2〉
〈1〉
〈エラー、問題を検索〉
〈問題を検…エラーエラーエラーエラー〉
〈ワールドの干渉を確認〉
〈脅威度:大〉
〈審議中〉
〈審議中〉
〈審議中〉
〈最終審議中………システムのシャットダウン…ジャッジメント………可決〉
〈可決〉
〈可決〉
〈一時的なシャットダウンによる肉体保全を遂行〉
〈スキルコマンド発令〉
〈選択:血の暴走:許可〉
〈許可〉
〈許可〉
〈限定解放:血の暴走〉
〈カウントダウン、シーケンス〉
〈3〉
〈2〉
〈1〉
〈発動、開始〉
〈システム、シャットダウン……〉
★
「うぅーん……ここは…?」
久々に見る景色だ。
すべてにおいて真っ白な世界。
……うっ、前回のショッキングな光景を思い出してしまったぁ……
ちょっとビリビリするかも…
どうやら、今回は手足を縛られてないみたいだ。
服は最初から着ていた【喪女】装備だけ。
胸ポッケには、もちろんミルクたんの姿はない。
まぁ、当たり前と言ったら当たり前かもしれない。
「そっかぁ、私死んじゃったんだっけか?呆気ないねぇ、幾ら強くたってハルバートがグッサリは無理って事かぁ。南斗のフドウさんと同じ結末とか…あそこまで巨漢じゃないよ!?」
独りでボケてツッコミ入れても、虚しいだけだなぁ…
声も響かないしなぁ…
てか、ここどこなん?
天国だったら、毎回見てたのは変って事だしさ。
暫くボーッと座っていたら、遥か地平線の向こう側がなんとなく夕方みたいに赤く染まった気がした。
「……………ん?」
じっと見ていると、やっぱり染まっている。
まるで、水に対して垂直に紙を入れたら、じわじわと水が紙に吸われて昇ってくる感じで、ホントにゆっくりと染まって来ている。
初めて、この真っ白な世界に色がついた。
だんだんその赤色は、染まる速度が加速して行って、あっという間に空が真っ赤になった。
「えっ!?な、なに!?どしたん?」
地面は真っ白なままで、空だけが何時にもなく真っ赤になっている。
かといって、血の雨が降ったりするわけでもない。
「こ、これは…?」
★
「…危ないところだった…」
エーリカはよろけながら立ち上がり、ふらふらしながらハインツの元へと向かった。
「おい、ハインツよ。起きろ。大丈夫か」
左頬を拳で打ち抜かれて、真っ赤にしているハインツは、土まみれになりながら地面に横たわって気絶していて、エーリカはその真っ赤になっている左頬を【ヒール】で治療しながら、ハインツの額をペチペチと軽く叩いた。
「うぅーん……え、エーリカおね…様?」
「あぁ、私だ。ハインツ助かったぞ」
「い、いえ。自分は何も……ヤ、ヤツは!どうなりました!?」
「見ろ」
ハッと思い出したハインツは、エーリカに詰め寄った。
エーリカは一つ頷いたあとに、少し離れたところで血の海に沈んでいる瞳子を指差した。
「マスター!マスター!眼を開けて下さい!!」
未だにミルクは、瞳子のヘルムにしがみついて、泣きながら揺すっていた。
「エーリカ様が倒されたのですね!これで我が軍が勝てます!!」
「あぁ……そうだな。これで父上の名誉も回復するだろう。私の役目は終わった、国へ帰る」
クシャクシャとハインツの頭を撫でたエーリカは、立ち上がってハルバートを取りに向かう。
「エーリカ様!待って下さい!」
「なんだ?」
軋む身体を起こして、ハインツがエーリカに駆け寄る。
「エーリカ様、最後まで自分と一緒に戦って頂けませんか」
「それは無理だ。父上の居ない所に何時までも居るつもりは無いからな。すまないが」
「そんな…」
肩をすくませながら断られ、それよりも肩をすくませたハインツは、残念そうにローブの袖を握った。
「そう落ち込むな。また直ぐに会える」
「そう、ですよね」
頑張って笑ってみせたハインツに、微笑ましさを感じたエーリカは、ヘルムの中で微笑んだ。
もう一度ハインツの頭を撫でてから、瞳子の亡骸に向かって再び歩き始める。
瞳子の血に濡れたハルバートを持ち上げ、肩に担ぎ上げた。
ちろりと瞳子の亡骸を一瞥し、それにすがり付くミルクに視線が動いた。
「おいピクシー。そいつはもう死んでいる。もうじきに軍隊がここを通過するだろうから、早く逃げた方が良い」
エーリカは、親切心からそう言ったのだが、ミルクにとってはそうは聞こえない。
「バカ!あんた達が勝手に侵略して来たくせに!!マスターを返してよ!!あんた達なんか死んじゃえ!!」
ミルクは泣き喚きながら、エーリカに向かって雷属性魔法を放つが、ことごとくハインツに無力化された。
「この小悪魔め!エーリカ様が御慈悲をかけていると言うのに!!」
「やめろハインツ!!」
逆上したハインツは、エーリカの制止を振り切って、ミルクに向かって土属性魔法で出来た槍を投げた。
呆然としているミルクに、あわや土槍が突き刺さる瞬間に、既に死んでいる筈の瞳子の手が動き、土槍を掴んだ。
「なに?」
「まさか!?」
ゆっくりと瞳子の上半身が起き上がる。
胸甲に開いている穴からは、傷一つない真っ白な肌が覗いていた。
だが、それを含めてなにやら様子がおかしい。
「ま、マスター……?」
ミルクの呼び掛けにも反応せず、むくりと立ち上がった瞳子の身体からは、黒に限り無く近い赤色のオーラが立ち上った。
ミルクは振り落とされない様に、直ぐ様瞳子の胸甲の中に潜り込んだ。
「な、何故生きている!?あれで生きていられる筈がない!!」
「エーリカ様!ヤツのヘルムのスリットを見てください!!」
真っ黒なヘルムに切れ込みのようにして入っているスリットから、真っ赤に光る二つの点が見えた。
エーリカは、その二つの点と眼が会った瞬間、凄まじい恐怖を感じ、数歩後ずさってしまった。
理性的な恐怖は抑え込めるが、生物としての恐怖は抑え込むのはとても難しい。
「ハインツ…ヤツは危険だ……尋常ではなさ過ぎる…逃げるぞ」
「エーリカ様?」
まるで森の熊さんに出会った時のように、眼を逸らさずにゆっくりと後退していく。
エーリカは、眼を逸らした瞬間に殺される気がしていた。
そんな事を露にも知らず、ハインツは自分の力をすっかり過信して付け上がっていた。
「大丈夫ですエーリカ!もう一度ヤツを地獄に突き落としてやりましょう!」
瞳子が立ち尽くしたまま、じっとエーリカと視線を合わせているのを好機と見たのか、ハインツが魔力を練り始めた。
「止せ、待つんだハインツ……変な気を起こすな。止めろ!!」
「骨まで焼き尽くせ!【ヴォルケニックフレイム】!!」
赤く大きい魔方陣が瞳子の足元で展開し、灼熱の溶岩が天高く噴き上がった。
「やった!!」
「バカ者!よく見ろ!ヤツはあのような事では死なん!!」
スリットから覗く赤点の光が増して、溶岩の柱から瞳子は歩いて出てきた。
そのボディには傷一つなく、その歩みに淀みはない。
淀みはないが、少し歩き方が変わっていて、腕が足より後に後に出ている。
チンパンジーか、使徒と化した○ヴァ三号機の歩き方に近い。
身体も左右に揺らしながら歩いている。
「――――――――ッッッ!!!!」
まるでこの世のモノとは思えない、金属音とも金切り声とも似た絶叫を上げ、その声は更に本能的な恐怖を掻き立て倍増させる。
異常だ、異常という言葉以外に現在の瞳子を指す言語は存在しないだろう。
通常時も非常時も無駄口の多いお喋りもなく、何時もなら自分の魔力を完全に制御下に置いて居るので、一切漏れる事の無いスマートな魔力も、今はまるで荒れ狂う濁流の様に暴力という一色に染まりきり、止めどなく盛大に漏れ続けている。
スリットから覗く両眼も、本来なら不摂生と不健康さにより少し濁ってる筈なのだが、今は深紅の光を爛々と湛えて血に餓えたようにエーリカを見ている。
これを異常と言わずして何と言うか。
……いや、変態とも取れるが、変態は何時もの事なので今はカウントしない事にする。
「……く、クソォォォッ!異教徒の癖に!!」
ハインツの我慢が決壊し、沈黙を破って蛮勇とも取れる勇気を振り絞り、瞳子に対して魔法を放とうとした。
「だから止めろと………!!」
この時、エーリカは重大なミスを侵した。
眼を離してしまったのだ。
背筋に凍るような悪感を感じ、身体も冷凍された様にビクともしなくなった。
まさに蛇に睨まれた蛙とはこの事だろうか。
ゆっくりと瞳子の視線がハインツへと向かい、エーリカはヘルムで表情を見ることは出来ないが、自分がトドメを刺した筈の人物が笑った気がした。
更なる悪感を伴って…
「――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!!」
一際大きく啼いたと思ったら、瞳子の右手に真っ黒に噴き上がる魔力で出来た、長い剣が顕れた。
刃も形もはっきりとしておらず、端から見ればただ真っ直ぐ噴き上がっている棒状の魔力だが、エーリカは直感でそれが剣だと分かった。
「不味い!ハインツ!!逃げろ!!」
そう叫んだ瞬間、爆発的な速度で瞳子がハインツに向かって駆け抜け、反射的に防御用の結界を展開するも、そんな物で防げる程甘くは無かった。
突き刺す様に撃ち出された純魔力の剣は、やすやすと闇属性の結界を貫き、皮肉にもエーリカが瞳子を突き刺した所と同じ位置を穿った。
信じられないと言った顔をしたハインツは、一瞬エーリカの顔を見た後、胸元を押さえて崩れた。
「ハイィィィィィィィィンツッッッッ!!!!!?」
それを確認してか、軽く払う様に剣を引き抜き、エーリカに再び視線を向けた。
その眼は掛かってこいと誘っている様にも見えたが、気が付いたら既に駆け出していた。
「うをぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」
ハルバートを振りかぶって、瞳子の首筋を狙う。
軟化の魔法がかかったままな筈なので、当たれば即死させる事が出来る。そう踏んで、一歩前へ踏み出した。
瞳子もそれに合わせる様にして、剣を振るったが、エーリカは刃を合わせるようなつもりは更々無かった。
己の技量を極限まで行使し、すり抜ける様にしてハルバートを潜り込ませ、身体を捻りながら首筋に刃を突き立てた。
瞳子の刃は空を切ったが、エーリカは確かな手応えを感じてそのまま薙ごうと力を入れるが、ビクともしない。
慣性の力で身体は横に進もうとするが、右腕が取り残されているので、結果として肩が脱臼した。
「ぐぅぅっ!?」
激しい痛みに点滅する視界の端で、エーリカは再び信じられない光景を見た。
同じように剣を振り抜いた状態の瞳子なのだが、両手で剣を持っておらず、空いている右手の人差し指と中指で、ハルバートを挟んでいた。
瞳子はハルバートを放り捨て、脱臼した肩を庇いながら倒れているエーリカに近寄り、むんずと頭を掴み上げる。
「ぁぁ…が……」
凄まじい握力でヘルムを掴んでいるため、指で掴まれている所だけが陥没しはじめた。
頭を握り潰されるのではないかと思ってしまう程の圧力がヘルムから頭蓋骨に伝わってくる。
お互いのヘルム越しに、瞳子が顔を近付けて来た。
頭を捻られて、首を横に向けられたり、何やら観察でもするかの様にジロジロと見られる。
やられている側としては、非常に生きた心地がしない。
ギリギリと頭を締め上げられ、次第に視界が霞んでき始めた頃に、一気にエーリカの背筋に合った恐怖が退いていった。
先程まで真っ黒な魔力を噴出していた瞳子だが、気が付いたら今は出ておらず、スリットの向こうで光っていた赤い光点も無い。
掴まれていた頭からも、力が抜かれてそっと地面に降ろされたのが分かったが、エーリカの意識が持ったのはそこまでだった。
『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ
このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!
正解しても何も無いけどね。
それでは行きます!
『鴗』
これはなんと読むのでしょうか!
出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。
そして、前回の答えの発表です!
『自然薯』と書きまして、『じねんじょ』と読みます。
じねんじょとは、分かり易く説明致しますと、ズバリ山芋の事です。
本当の呼び方は、ヤマノイモと言うそうですよ。』




