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二人の視点

題名の通りです。

まぁ、閑話ですね。

次回は、超短いですけどご勘弁を。

それと、今回は後書きのクイズがありませんので、ご注意ください。

(フェギルの場合)


私が初めて閣下を見たときに感じたのは、不審者といった印象だった。

不吉な鳥である烏のように真っ黒のローブを着ていて、すっぽりと頭を覆うフードを被っていたのだから。

閣下が歩く度にフードが波打つので、その奥にある素顔が見えるのではと思ったが、何故か影が差してまったく見えなかった。


閣下は本当に謎なお方だ。


前代未聞の作戦を国王陛下の御前で奏上なされ、軍師でいらっしゃるのに直接指揮を取ると言われ、閣下自ら部隊を編成し、ある意味寄せ集めであった我々の士気を高める為に、壇上で演説をされた。


私はあの演説を聴いた瞬間、何かが壊れた音を聞いた気がする。

それは私の倫理観が壊れ、新たに再構築された音なのか、はたまた世界の常識が覆される瞬間の音だったのかは、私には良く分からないけれども、私達が歴史の転換期に直接関わっている事には代わり無いだろう。


あの演説を聴く前の私は、卑しく卑屈で、野心ばかりが先に立ち、野望を持っていることを隠そうともせず、自分に利益が出るのであれば、神でもなんでも利用してやると思っていた。

事実、私が大隊長の地位に立っているのは、それの為と言って良いだろう。

だが、それも演説を聴いてからどうでも良くなってしまった。

いや、見せ付けられたと言った方が正解だろうか…

何時の世にも、上には上が居る。

どう足掻こうにも越えられない壁は存在するのだ。


私には、閣下程の魅力も無いし知恵も無い。

これといった武勇伝も無く、この細く頼り無い双肩に掛かっているのは、老いた両親の期待だけ。

だから、私は閣下に死んでもついて行こうと思ったのだ。

仮にそれが偽物だと罵られても構わない。

少しでも閣下を研究し、自分の中で発展させて、少しでも閣下に近付けるようにする。

それで少しでも閣下のお役に立てるなら本望だ。


国王陛下万歳!


王国に栄光あれ!


閣下に勝利あれ!



(青騎士の場合)


ぶったまげたぜ、まさか地面が揺れるなんて事があるなんてな。


空は青く、鳥は空を飛び、蕾は花となり、木々は生い茂り、大地は動かない。

そう、相場が決まってるのによぉ。


急に地面が揺れ出した時には、小便チビるかと思ったぜ。

まぁ、瞳子があっという間になんとかしてくれたけどよ。


でも、あれは実は敵の奥の手の攻撃だったんじゃ無いか?

もしそうだったら、簡単に攻撃を無力化されてるけどな。


奴さんは、直ぐに次の攻撃を繰り出して来た。

竜巻だ。


それはもう巨大なヤツをけしかけて来やがったが、瞳子なんて、少しも動揺した雰囲気を見せずに、片手を前に突き出して魔法を使った。


だが、出来たのは小さいつむじ風だった。


本当に大丈夫なのだろうか…

凄い速さでつむじ風は、竜巻に突っ込み、消えちまった。


…ダメじゃねぇかっ!?


って、ツッコミそうになるのを必死に抑る。

どうせ瞳子の事だ、リーラとイチャイチャ(一方的)するために、飯に媚薬を混ぜたり、それがバレて飯が食べられなくても、飲み物の中に薬物が混入されていたりと、タダでは転けないヤツだからな、絶対に何かあると踏んだ。


暫くすると竜巻の前進が止まり、逆に引き返して行った。

どうやら竜巻を乗っ取ったみたいだ。

だけど、相手もバカじゃ無いらしく、急に地面から炎が立ち上り、竜巻が消えちまった。


瞳子は直ぐ様、噴き上がる炎に黄色がかった真っ青の火球を飛ばした。

一直線に飛んでいった火球は、炎にぶち当たった瞬間に爆縮したかと思ったら、大爆発を起こして鋭い閃光と爆風を巻き散らした。

地面は抉れ、土埃は空を舞い、炎は吹き飛んだ。

遅れて衝撃波が来て、城壁の防盾から身を乗り出していたせいで、馬に跳ねられたような衝撃をまともに食らった。


「ふべっ!?」


いたたた…

……畜生、参ったぜ。


……そう言えば、瞳子って『私は闇の大魔王様だっ!ふぅっはっはっはっはっはっはっはっはぁ!!』とか言ってるくせに、ろくにちゃんとした魔法を使わないから、本当に強い魔法が使えるのかと、疑問に思ってたりしたのだが、どうやら本当に使えたみたいだなぁ。


なんたって、何時もは黒い甲冑着てるせいで、戦士職と間違われる事が多いんだぜ?

そうも思っちまうよ。

オレはリーラみたいに最初から居る訳じゃないからな。


まぁ、どういう風の吹き回しか知らねぇが、面倒臭がりで、ギルドとダンジョンと用事がある時しか小鹿亭から出ない瞳子が、軍隊の参謀長だしなぁ。

やるときはやるってヤツか?


いや、それとも単なる思い付きで動いてるだけって可能性も否定できないけどよぅ。

瞳子なら充分にあり得る話だからなぁ。

おっかない事によ。

それにしては、やたらと軍隊の事や上に立つ者の事とか知ってるんだよなぁ。

はっきり言って、瞳子は謎が多いんだよ。

リーラとミルクは、かなり分かっているみたいだけどな。


…なんだありゃ?

巨大な氷の球か?

……マジかよ…

瞳子はどうするつもりだ!?


頭をポリポリ掻きながら、ダルそうに右手首を振っていた。

途端に向こうの陣営の真上で閃光が迸り、氷の球が砕け散った。

間を空けて雷鳴が轟き、腹がキュンッてなった。

…なんでだ?


なんにせよ、超下級魔法を上級魔法でいなしてるんだから、瞳子って規格外だよなぁ。

例を挙げれば、あの細っこい筋肉ついてんのか疑問な腕で、大の男二人を纏めて持ち上げたり、無駄にクソ重い甲冑を着たまま馬車よりも速く走るとか。


身体を魔法で強化してるって言えばそれっきりだが、あれはそんなモノ使わずにやってる。

だから規格外なんだよ。


そんな瞳子だ、最後にドデカイのぶちかましてくれるはずだ。

別な意味で期待を裏切らない女だからなぁ。


瞳子がなにやら、あの綺麗なオーガと言葉を交わした後、両手を拡げて魔力を練り始めた。

瞳子の周りに漂っている魔力が、激しく揺らいだからすぐに分かった。

今度は専制攻撃を仕掛けるつもりみたいだな。


敵の頭上に、見たことも無い魔方陣が展開し、ゆっくりと回転しながら魔力光を凝縮し始めた。

オレ達の頭上にも、かなり簡略化された巨大な魔方陣が展開して、空気中に漂っている魔力を吸収し始めた。


どこかで見たことあるような形をしている魔方陣だなぁ…

うぅむ………おう、この要塞と同じ形じゃね?

そうだぜ、この六芒郭要塞を魔法使い達で建てる時に、瞳子が持っていた超手書き感バリバリの設計図と同じ形だ。


見た感じ、吸収された魔力は、そっくりそのまま相手の頭上の魔方陣に使われているみたいだ。


どんどん魔方陣の輝きが増し、臨界を迎えたのかどうか分からないが、ぶっとくて真っ白でドデカイ光が、敵の頭の上から降り注いだ。バケツをひっくり返したみたいにだ。

だけど、敵も直ぐに対応して、暗闇のようなドーム型の決壊を張って防ぎやがった。

もう面倒だから、防がないで食らっちまえば良いのによ。

一発で楽になるぜ畜生。


徐々にドームが押されて来て、皹が入り始めた。

壊れるまで時間の問題だろう。


もう帰って酒飲んで、寝てたいぜ。



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