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鬼さんこちら(1)


「ヤバいヤバいヤバい!!」

「うるさい青騎士!口動かす前に足動かせ!!」

「待ちやがれ黒いの!!」

「アホ助!待てと言われて待つヤツが居るか!!」


…ただいま、全力?で逃亡中ですハイ。

直ぐ後ろでは、ハルバートを軽々と振り回してる、黄緑色のお方が急速接近中。

なんでこうなったかって?

そりゃ、雄輔の天幕の近くで叫べば、嫌でも声が聞こえてしまう訳で…そんでもって今に至る。


最初は兵士達を先に逃がして置いて、青騎士と二人で黄緑騎士の足止めをしてたんだけど、さすがに音が大き過ぎたんだろうね。

あっちこっちから、ワラワラと敵さんが…


「青騎士!」

「なんだ!?」

「もう大分外側まで来たから、補助魔法を掛ける。一気に引き離すぞ!!」

「了解した!!」


あと少しで、死体しか入ってない天幕群を抜けるので、急いで補助魔法を使う準備をする。


大体、何でまたあんなに速い訳!?

頭沸いてんじゃない!?

私には勝てないけど、俊敏力には定評がある青騎士に、追従出来る程の足の速さとか…

さすがは我が姪っ子。普通じゃ無い。


「3、2、1!そりゃ!」


夜営陣地から抜けたので、風属性補助魔法を掛けて逃げ足を加速させる。

さすがに、黄緑騎士も追い付けないとみた。

ぐんぐん黄緑騎士を引き離して、事前に決めて置いた合流地点に急ぐ。

一応、引き離してもまだ追い掛けて来てる…


「…なんだろ。アレ」


遠目にだが、進路上に何かカラフルのが横たわっているのが見えた。

そっちに向かって走っているので、どんどん大きくハッキリと見える様になってきた。

それは、単を着た黒髪の人物で、うつ伏せに倒れているから、顔までは分からない。

見てしまった以上、見捨てて行くわけにはいかないので、回収していく。


おんぶして連れて行こうと思ったので、仰向けにしたら、なんとまぁ凄い。

大和撫子とは正にこの事かと思ってしまう程に、色白く顔立ちが整った美女だった。

けれども、一つだけ人間ではないと証明される証拠があった。

額から伸びる、長さ15cmから20cm程だと思われる真紅の一本角。

日本人からしてみれば、最もポピュラーな妖怪を連想してしまう。


そう、鬼だ。


どうして単を着た黒髪鬼美女が、こんな草原の真っ只中で転がって居たのかは不明だけれど、考え出したらキリがない。

素早く背負って、再び走り出す。


「額から角…?オーガか?それにしちゃぁ、細くて色白だしなぁ。」


青騎士が、こちらに顔を向けながら何やら呟いている。


前方に、待たせておいた一台の荷車が、こちらに向けてロウソクかなにかで発光信号を送ってきた。


「…他部隊は、退却完了せり。だってよ」

「上々!」


荷台に転がり込む形で乗車する。

後ろを振り向くと、ブーストした黄緑騎士が、異常な速度でこちらに向かって来ていた。


「早く出せ!さもないとアイツにミンチにされるぞ!」

「りょ、了解しました!!」


青騎士が悲鳴じみた声を上げながら、輸送部隊の御者に命令した。

取り敢えず荷車と馬にも風属性補助魔法を使って、速度を加速させる。


わざと真っ直ぐ帰らないで、あっちに行ったりこっちに行ったりして黄緑騎士を撒く。

御者と馬には悪い事したなぁ。

結局、黄緑騎士を完全に撒くのに朝まで掛かってしまった。

青騎士なんか、ランダムに曲がるように御者に指示するのが面倒臭くなったのか、途中から御者の首を曲がる方向に曲げてたりして、その度に御者の首と口から変な音が聞こえてきたりしてさ…

そのせいで、かなりアクロバットな走行になったりして、黒髪鬼美女さんを落とすまいと必死ですた。

荷車で片輪走行とか…どうやったらなるのか教えて欲しい…


「お疲れ様…」

「アイツにしつこ過ぎだろ…」

「く、首が…首…」

「グ、【グレート・ヒール】」


哀れな御者に煌めく黄緑色の光が、特に首周りに集中してまとわりついた。

地獄の底を見た様な顔をしていた御者は、直ぐに表情が和らいだ。

回復して直ぐに申し訳ないけど、六芒郭に向けて荷車を走らせた。

もちろん、馬にも回復魔法を掛けた。


いざ、六芒郭に帰ってみると、凄い騒ぎになっていた。

なかなか帰って来なかった私達が、やっと帰って来たこともそうなのだが、敵軍の将や士官をこれでもかと言う程、拉致して来たからだ。

なんたって、そこに王様達も入るから始末に終えない。


出た時には見なかった文官達が、兵士達よりも頻繁に行ったり来たりを繰り返している。


向こうから殿下が、私が帰って来たことを聞いたのか、小走りで近付いて来た。

その顔には、嬉々とした表情が貼り付いていた。

いや、もちろん心から来ているのだろうが。


「参謀長!よく帰った!!」

「殿下お待たせ致しました」

「建国以来の快挙だ!この戦、勝てる兆しが見えて来た!!」


だろうねぇ…

諸王の国に莫大な身代金要求要求して、領地の一部をかっ拐って、その上上司に当たる大王にも責任問題を叩き付けて、各国に少し無茶な条約を結ばせたりするだろうからねぇ。


「この戦争は、勝つ以外の道は有りません」

「そうか、それもそうだな!して…そなたが背負っている…ずいぶんと顔立ちが整ったオーガ?は誰だ?」


殿下がさらに近付いて来て、下から覗き込むような形で鬼さんの顔を見てる。

殿下の髪の毛から、フローラルな香りが漂って来て、やっぱり女の子何だなぁとか思ったり。


うむむむ…いかん!手が出てしまいそうだ…!

だけど、手が出た瞬間に、不敬罪で処刑にぃぃぃ…

速やかに退いて頂きたい…

「え、えっと…この方は帰還の途中で、進路上に倒れていたので、保護致しました。取り敢えず寝台に寝かせたいので…」

「おぉ、そうだったか。おい、そこの兵士!参謀長を寝台のある個室に案内しろ」

「はっ!」


何やら荷物の積み降ろしの作業をしていた兵士をこちらに呼び、殿下が私達を案内するように命令した。



『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ

このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!

正解しても何も無いけどね。

それでは行きます!


『薺』


これはなんと読むのでしょうか!

出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。

そして、前回の答えの発表です!


『薇』と書きまして、『ぜんまい』と読みます。

ゼンマイは、ゼンマイ科の多年生シダ植物で、渦巻き状の新芽を古銭に例えた「銭巻」に由来しているそうです。』

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