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侵攻(1)

少し短くて、少々ショッキングな表現があります。

王様は良くても、家臣達が許さないかも知れないしねぇ。


家臣達もそうだけど、現場指揮官達も兵士の士気が低下しないように、寝床の事には注意を払うだろうからねぇ。


あまりに兵士に対しての配慮に欠ける軍隊に起きる悲劇は、内部分裂と反乱、脱走と自然壊乱だ。

兵士達もロボットではなく意思を持つ生き物だから、下士官や現場指揮官の役目は、そんな兵士達の面倒を見ることなのだ。

エリートコースまっしぐらで、温室育ちのお坊ちゃん軍人なんぞは、下々の事情なんざ知らないから無茶な命令とかを出して、無闇やたらに兵士を失う訳だ。


そんなわけで、段々と時間が経ち、太陽が西に沈んで行くに連れて、最初は遠かった諸王国連合軍が近付いて来て、ドンピシャの位置に夜営陣地を構築し始めた。


「…そら見ろ青騎士ぃ。予想通りなのだぜ?」

「本当だぜ…マジで言った通りになりやがった…」

「良いか青騎士よぉ。人を率いる立場に在るニンゲンは、敢えて弱い立場に立ってモノを見通し、相手の事を考えて先を見る。これが出来なければ、何時かは必ず躓くし、時には信用を失い、大切な時に失敗する。軍を率いて武勲を挙げた英雄達は、大抵の場合カリスマ云々ではなく、これが出来た連中が多い。まぁ、最終的にはカリスマも無いとダメなんだけどね」


話終えて、なんか青騎士の反応が無いと思ったら、難しい顔して大隊長や中隊長達と、私の話を真剣に聞いていたみたいだ。

私そんなに難しい話をしたつもりは無いんだけどなぁ…


「…すまねぇ。為になったぜ……」

「おぉう」


なんだか、なんとも言い難い絶妙な空気が辺りを漂い始めだした頃、大魔王イヤーが前方の離れた所から、複数の草を踏む音を拾った。

塹壕から頭をソッと出して、辺りを伺うと、1km程前方に人影が複数。

どうやら歩哨のようだ。

周囲の警戒に、固まった人数であらゆる方向に放ったみたいだ。


もとが大群衆なだけあって、平地からかなり離れていたのにも関わらず、すぐそこまで拡がって陣地を構築しやがったせいで、敵さんと塹壕の距離が近くなってしまったのだ。


これは非常に不味い事態だぞ。

このままでは接敵してしまうぅ…

仕方無いかぁ、連中にはお亡くなりになって貰おうか。


「大隊長」

「「はっ」」

「各員に静かに通達、敵の歩哨が接近してきたら、一人当り二人以上で塹壕内に引き摺り込み、静かに始末しろ。決して物音を立てたり、敵に行動させるな。以上だ」

「「了解しました」」


直ぐに大隊長から各中隊長に、中隊長から各小隊長へ、小隊長から各分隊長へと命令が伝達され、塹壕内に身を潜めている全将兵に迅速に命令が行き届いた。


ゆっくりとだが、着実にこっちに近付いて来ている。

勿体ぶらないで、出来れば走って来てくれると良いのにとか思ったり…


今の私達は、正に砂丘に隠れるアリ地獄みたいだよねぇ。

アレは正確に言うとウスバカゲロウの幼虫だけど…

アリが歩哨でアリ地獄が私達。

逃がさんぞェ~


歩哨達は固まって進みつつも横に拡がって警戒しているので、ギリギリまで引き付けてから足首と口を押さえて引き摺り込む。


「いらっしゃ~い」

「ムグッ!ンーーッ!?ンンンッ!!」

「何言ってるかわかんないぉ。…おい、そこの兵士達。コイツ押さえておいて。私が始末する」


四人の兵士に押さえ付けられた、憐れな歩哨に対して、細い短剣を取り出して歩哨の鎧の隙間から、心臓に向けて一突きする。

短剣の先端が肉を掻き分けて行くに連れ、歩哨がもがき涙で顔を濡らす。

心を殺して一気に心臓を突き刺し、動かなくなってから引き抜いた。


「ふぇぇっ、わざわざ…瞳子さんが殺らなくてもぉぉ…ひいっ」


右手を鮮血で染め上げた私を見て、フェルちゃんが引いた。


「…まぁ、部下に人を殺めさせる以上、自分は手を汚さないなんて事は許されませんってね……でも、ちょっとキツイぉ」


すっぱいモノが込み上げて来そう…ウップ。


「こっちも終ったぜ」


同じように歩哨の血をつけた青騎士が、水筒の水で手を洗いながら戻ってきた。

青騎士がやると、凶悪強盗犯か薬を極めた殺人鬼に見えてしょうがない。

つまり、かなりヤバく見える。


「…………うわぁ…」

「な、なんだよ」

「何でも無い」


なんとか大きい物音を立てる事なく済ませたようなので、諸王国連合の使っている言葉を話せる兵士を召集し、先程の歩哨達から鎧を剥ぎ取って着させる。


そして、あたかも偵察から帰ってきたかの様に夜営陣地に向かわせて、誰何をする為の歩哨を暗殺させた。

それまで、ドーランよろしく顔に泥を塗りたくって、地面を這いながら後をついて行った。


幾つかのかがり火を消して、見えずらくしてから、じわじわと静かに攻めて行く。

月明かりが強いので、目が慣れたら余り効果が無いのだが…


兵士達には絶対に声を出してはいけないと、厳命してある。


寝静まったテントや天幕に兵士達が忍び足で侵入し、音もなく首を落として行った。

今のところは気付かれていないようだ。


第一段階の浸透作戦は成功している。

第二段階は、見るからに偉そうな奴等を拉致誘拐する事と現場指揮官の間引き。

第三段階では、連中の食糧を焼く。

最後はわざと鬨の声をあげて、敵を混乱させつつ、その混乱に乗じて六芒郭まで逃げ帰ると。


多分、現場指揮官や士官の連中は夜営の真ん中の方にいるはずなので、リスクは高いけれども深くまで侵入する。




短剣を突き刺すシーンは、某プライベートライアンの、市街地戦のシーンに出て来る一コマを想像して頂けると、尚リアルかと…


『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ

このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!

正解しても何も無いけどね。

それでは行きます!


『漁火』


これはなんと読むのでしょうか!

出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。

そして、前回の答えの発表です!


『鷦鷯』と書きまして、『みそさざい』と読みます。

ミソサザイは、動物界脊索動物門鳥綱スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属に分類される鳥類で、ヨーロッパ、アフリカ北部、西アジア、中央アジアからロシア極東部、中国北東部、朝鮮半島にかけてと、北アメリカ西部および東部などと幅広く繁殖し、北方で繁殖した個体は冬季南方へ渡るそうです。』

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