謁見(2)
「そこの爺やは宮廷魔法使い筆頭でな?そんな爺やでも、三つの属性の上級魔法しか使えないのだぞ?それを…アハハハハハハッ!!笑わせてくれるッ…フフフッ」
おう、使えないと思ってやがるな?
てやんでぇ、見せてやる!
「……では、今ここで御見せ致しましょうか?」
スキル【MP解放】で、魔力をほんの少しだけ滲み出させる。
ほんのと言っても、中上級魔法一発分位を放出し続ける分けだけどね。
やはり、宮廷魔法使いと言われるだけあって、エドラムお爺ちゃんは敏感に察知して、こちらを警戒した。
魔法に疎い人達は、あまり分からなかったみたいだが、数人は気付いたらしく、後ろにたじろいた。
殿下は分かった内の数人だったらしく、玉座その二に座ったまま強張っていた。
ちなみに放出し続けているから、異常だと認識されているはずだ。
だけど、10秒間隔くらいで中上級魔法一発分がガリガリ減っている分けなんですよねぇ。
あと半日は持つはず…
「ま、魔力の内包量がとても多いのは分かった。だが、全属性と言うのは信じられん。何せ、1人の術者では反対の属性同士が反発し合う為に、例えば絶対に炎属性と水属性両方を使える術者はいない」
「ですけど、事実であるので、証明しようにもここで上級魔法を放つ分けには参りませんよ」
大抵の上級魔法は攻撃系ばかりで、中上級が防御系や補助系が非常に多いので、今はっきりと覚えている上級魔法の中では、全属性の攻撃系では無い魔法が揃っていない。
だけれども、反対の属性同士は反発するようなので、その二つを使えば信じて貰えるのではないだろうか。
「…そうだのう……では光属性の回復魔法と、闇属性の防御魔法ではどうだ?それなら出来るのではないか?」
その手が有った!
殿下ナイスアイディア!
そうか、【ヒール】系は光属性だったよ。
すっかり忘れてた。
闇属性の防御系魔法かぁ…なんか有ったかなぁ…
……あ、有った。
【シャドー】系の防御魔法だ。
確か、エネルギーを吸収する事によって、ダメージを無くす魔法だったかな?
「分かりました。では回復魔法の対象は誰にしましょうか?」
さすがに自分に掛けてもしょうがない。
何せ、光るだけで回復しといるかどうかは対象しか分からないからね。
「大臣、そちは最近激務をこなしておったな」
王様が、大臣とおぼしき痩せ気味のオッサンに話し掛けた。
「いえ、それ程までには及びませんが、それがいかが致しましたでしょうか?」
怪訝そうな顔をして、王様の考えを読み取ろうとした様で、一瞬あとには顔色が青ざめていった。
「ま、まさか」
「なに、回復魔法なのだから安心せい。疲労が吹き飛ぶはずだ」
どうやら、大臣は王命を受けてしまったらしい。
反論する事は許されないので、ヒョロイ大臣は王様に対し深々とお辞儀をした。
「決まりましたね」
「そうだな。ではそこの大臣に頼む」
顔色がすこぶる悪い大臣が、こちらに向き直った。
心なしか、手が震えているようにも見える。
「魔法使い!は、早くしろ!!」
あ、最後ひっくり返った。
いくらなんでも緊張し過ぎでしょ、大臣閣下ぁ。
まぁ、彼なりに勇気を振り絞っているんだろうね。
「ではいきますよぉ。【グレイト・ヒール】!」
【ハイ・ヒール】よりも増し増しな緑色の光が大臣を包む。
なんとも無く、ただ疲労や怪我が急速に無くなっていくだけだと分かった大臣は、大分顔色が良くなった。
「どうだ大臣、感想を三行で述べよ」
「身体が凄く軽く、
長年の蓄積疲労が取れ、
苦しめられた偏頭痛が無くなり、
大変よろしゅう御座います」
「三行ではなく四行になっておるではないか!減給1日とする」
1日かよ…
1日くらいなら減給しなくても良いんじゃね?
…なんて思ったけど、口が裂けても言えませぬ。
緑色の優しい光が収まり、デフォルト状態よりも顔色が良くなった大臣が、肩を回して具合を確かめている。
「ではお次に、【シャドー・カーテン】!」
漆黒の波打つカーテンが、段々になっている所と私が立っている所を横切り、完全に分けた。
エドラムお爺ちゃんが、【シャドー・カーテン】に向けて、一発中級の水属性の攻撃魔法を撃った。
人間の胴体くらいの大きさがある水球が、【シャドー・カーテン】に当たった瞬間に、急速に勢いが衰えて水ごとカーテンに吸い込まれた。
「確かに、しっかりとした【シャドー・カーテン】で御座います。陛下」
エドラムお爺ちゃんが、王様に向けて言った。
王様は頷き、殿下は信じられないと言う顔をした。
いい加減に諦めて、認めて欲しいところなんだけどね。
「光属性魔法に闇属性魔法、その両方の上級魔法を使える事が分かった今は、この者を信じる他ありません。陛下」
「そのようだな。納得したな、レジーナ」
「はい、まさか本当に使えるとは夢にも思っておりませんでした」
まぁ、この世界では反属性になる魔法同士は1人の術者では使えないのが常識みたいだし、信じられないのは当然かぁ。
私達の世界で、本物の魔法使いですって言われても信じられないと一緒だよね。考え方としてはだけど。
「…えぇっと、それで軍師の件は……」
今は、魔法なんて事よりもこっちの方が大事です。
「もちろん合格に決まっている。そなたをこれより参謀長に任命する」
おぉ!いきなり偉い地位に!
旧軍なら中将とか少将がなる地位でござんすよ!!
でも、参謀長って事は参謀が下に居るって事かぁ。
まぁ正解だよね、軍師が1人だとアイディアの出る数に限りが有るけど、数人いれば、その数だけ知恵が搾れるからね。
そう考えると、かなり近代的な軍隊構成をしてるって事なのかな?
「頂戴致しました役職に恥じぬよう、努力致します」
「うむ、善きに計らえ」
王様が抑揚に頷き、殿下とエドラムお爺ちゃんを伴って退室した。
それまでみんな最敬礼。
完全に姿が見えなくなったところで、やっと元に戻れた。
そしてなんだか、大臣以外の眼差しが刺々しい。
騎士甲冑を着た、騎士団長みたいなヤツなんて、これみよがしに舌打ちしやがった。
コイツら全員タヌキだなぁ。
機嫌が悪いのを隠そうともしないでやんの。
『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ
このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!
正解しても何も無いけどね。
それでは行きます!
『山翡翠』
これはなんと読むのでしょうか!
出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。
そして、前回の答えの発表です!
『香具師』と書きまして、『やし』と読みます。
やしです。ココヤシではありません。ヤツでもありません。ヤシです。
香具師とは、縁日など人の集まる場に露店を出し、興行や物売りを業とする人達の事です。つまりはテキ屋さんですね。
ネットスラングにある香具師は、ヤツをヤシと書いて、誤変換したのではないかと言われています。
』




