軍師になろう(1)
いい感じに泡達磨にしたら、通称【カロチン】でお湯を掛ける。
お湯が泡を洗い流し、青騎士の身体が綺麗になった。
もう入っても大丈夫なはずだ。
「よしよし、おKおK。もう入っても大丈夫なのだぜ」
「ああ」
そっと、恐る恐ると言った感じでゆっくりと足から入った。
そのまま肩までお湯に浸かり、色っぽい吐息を吐いた。
「あぁ…あ、ふぅ」
「ふぁぁぁ、あふあふ」
フェルちゃんは、飽きもせずにお湯の中で転がっている。
そろそろ逆上せてしまう頃だと思うのだが…
小さい別の桶にお湯を張って、それの中に入っているミルクたんも、同じように回っていた。
「ぐるぐるぐるー」
さっぱり何がしたいんだか分かったもんじゃない。
「これは……良いな…冷したエールか果実酒が有れば、もっと最高だぜ」
「おぉ、青騎士も分かるかい!」
暫く静かに湯船に身を任せ、高い位置に有る小さな光を取り入れる為の窓から射し込む光が、水面に反射してゆらゆらと幻想的に煌めく。
不規則に形を変えながら、一度として、同じ形の反射はしない。
「お母さんは今頃何やってんだろ…」
ふと、脳裏にお昼ご飯作るお母さんの後ろ姿が浮かぶ。
「家の婆様も何やってんだろなぁ」
なんだか青騎士も感傷に浸ってやがる。
10分程お湯に浸かって、そろそろみんな逆上せる頃なので、上がる事にした。
さすがにビールやお酒の類いは無いけれど、木の実を絞った果汁100%ジュースを前もって買って置いたので、それの入った瓶に氷属性の下級魔法を放って冷やす。
それを、風呂上がりに1人一本ずつ腰に手を当てて、一気に煽る。
「んぐっ…んぐっ…んぐっ」
甘酸っぱい味が喉元を通りすぎ、さわさかな香りが鼻腔へと抜ける。
「…ぷはぁぁぁげっぷ」
やっぱり、お風呂上がりは珈琲牛乳かフルーツ牛乳だよねぇ。
冷たい水分が、火照った身体に染み込んでいく感覚が分かる。
「…よーし、着替えたら第二次迎撃作戦に行きますかぁ。今度は大幅に手加減してさ」
なんか、あれは戦争と言うか個人vs軍衆で、しかも虐殺だよ。
他愛がなさすぎて、鎧袖一触にも程がある。
さて、どうしようか…
きっと今頃、必死に王城は兵士をかき集めてる頃だよねぇ。
素性を一切合切隠して、軍師として一時的に働いて見ようかなぁ。
大学校で、少しだけ戦術習ったし、ゲームで散々やったしね。
部隊長なんかも面白そうだなぁ。
よし、取り敢えず王城に行こう!
思い立ったが吉日ってね。
面倒な事は後で考えればいいや。
「青騎士も戦うかい?上手くすればお金ガッポガッポだぜ」
「もちろん行くに決まってるさ」
「フェルちゃんも来るでしょ?」
「ふぇぇぇ、行きますよぅぅ」
どうやら二人共に戦う気満々なようです。
この世界の人って、かなり好戦的な気がするぉ。
まぁ、青騎士の場合は単にお金が欲しいんだろうけどね。
てか、もう青騎士はマイ鎧を取りに部屋に向かって行ってしまった。
「じゃあ、我々も着替えようか」
「ふぇぇぇ、はいぃぃ」
さすがに正体を隠すのに、【アダマン・フルメイル】をそのまま着る訳にはいかないので、真っ黒で所々に銀の刺繍入りの全身をすっぽり覆うタイプのローブを召喚した。
その名も、【ミッドナイト・オブ・ディープダーク】。
毎回思います。
運営のネーミングセンスの無さとやる気ねぇな!と。
しかも、ちょくちょく文法間違えてるし…いや、ワザとかな?
フェルちゃんには、真っ白なローブを渡した。
名前は、まぁ、聞かないで下さい。
「準備出来たぜ」
「早いね」
青騎士が浴場を出ていってからまだ5分と経ってない。
「青騎士は、冒険者ギルドから参加すると良いよ」
「ん?瞳子は冒険者ギルドから参加しないのか?」
「まぁね、今回は趣旨を変えて行こうかなぁと思ってね」
「わ、分かった」
まさか王城に直接乗り込むなんて言えません。
「そんじゃあ、行きましょ」
部屋の鍵と浴場の鍵をマリアさんに返却して、小鹿亭をあとにした。
風鳴り街道を通り、中層区で青騎士と別れ、私達は真っ直ぐ王城へ向かうべく坂道を昇っていく。
「でっかいねぇ」
「ほぇぇぇ、おっきいですぅぅ」
敷地は広く、城でかし…みたいな。
敷地だけで言えば、東京ドームくらいある。
城の横幅だけの大きさは、シンデレラ城の10倍はある。
ちょっと本物の西洋式城の規模嘗めてました…
やっぱり姫路城とか名古屋城とかと較べちゃ駄目だね。
あまりにも大きさが違いすぐる。
「よし…あのぅ、すいません」
「な、なんだ」
正門前に立っていた衛兵さんに、取り敢えず話掛けた。
「私達、王様の軍隊で戦いたいんですよ、軍師辺りとして」
「……お前、どこでその話を聞いた」
「そ、そんなに凄まないで下さいよ…だって、冒険者ギルドだって凄い騒いでますし、既に敵を見てきたんですもの」
「……こっちだ、今選抜試験の最中だからな」
「どうも~」
正門を潜り抜け、手入れの行き届いた緑豊かな庭園を横切って、王城の中に入る。
さすがに王城だけあって、物凄い広さのある広間でも、あちらこちらに人が行ったり来たりしている。
天井は吹き抜けになっていて、太陽の光をなんども屈折させながら取り入れる形らしく、とても屋内だと思えない明るさだ。
所々には、いかにも高そうな装飾品が飾ってあり、屈折した光を浴びて、キラキラ輝いている。
「こっちだ、早くしろ」
「すんません」
知らぬ間に立ち止まっていたらしい。
だって、王城なんて入ったこと無いもんね。
広間を横切り、少し広い廊下を進んで行く。
衛兵さんは、一つの大きな扉の前で止まった。
「今ここで筆記試験をしている」
なんだかテストみたいだなぁ。
「既に始まって10分経っているが、まぁ頑張れ」
「どうもです」
扉を静かに開け、中にいた試験官に衛兵さんが何か耳打ちして、衛兵さんは部屋を出ていった。
「それでは、こちらで試験を受けて頂きます。残り時間はあと35分ですのでお急ぎ下さい」
「了解です。あと、受けるのは私だけで、この白い人は私の弟子なので、別室に待機させてもらっても良いですか?」
「分かりました。それではこちらへどうぞ。こちらが試験用紙になります。御弟子の方はこちらへどうぞ」
フェルちゃんは試験官に連れられて別室へ、私は試験用紙が置かれた机に向かう。
筆記試験の内容は、簡単な数学と国語だけだった。
数学は一次方程式の応用等で、中学生くらいにやった問題だ。
実に簡単。
国語も、中学生くらいに習う漢字ばかりで、チョロッと難しい漢字が出てきたくらいで、あとは楽チンだった。
てか、漢字テストかよっ!て思った。
開始15分で全問埋めたので、そこいら辺に居た試験官に答案用紙を渡した。
なんだか、とても驚かれた。
改めて部屋の中を見ると、いかにも賢者っぽいお爺さんとかオッサン、学者っぽいお兄さんが必死に答案用紙に向かってた。
必死過ぎて、なんか怖い。
『何それ漢字豆知識クイズー!パチパチパチ
このコーナーでは、普通使わない単語やトリビアな漢字の読み方とかを出題します!
正解しても何も無いけどね。
それでは行きます!
『大角豆』
これはなんと読むのでしょうか!
出来ればパソコンで調べるのはやめましょう。
そして、前回の答えの発表です!
『鸚哥』と書きまして、『インコ』と読みます。
インコとは、インコ目の鳥の総称で、便宜的に分けたときのオウム類以外のもののことです。くちばしは鉤形に曲がり、羽色は鮮やかな色彩のものが多いく、熱帯地方に広く分布しています。
セキセイインコなどは有名ですよね。』




