その後・・・
二人が哀れなボスを倒した後のお話。
ストーリーです閑話ではないのであしからず。
「あら?また来たのね。今度はどんな用事?」
扉を開けてギルドの中に入ると、こちらに気付いたノンナさんが話掛けて来た。
「えっ?また来たって…私達今日はムグッ…」
「そ、そうなんで御座いますよ!」
あ、危ない…脊髄反射的に口を押さえてしまったよ。リーラちゃんには申し訳ないけど、今それを言われてしまうのは危険過ぎる。
「ムグムグっ!」
「(ちょっとだけよ~…じゃなかった、ちょっとだけ今日の事に関しての話は反らしてもらえないかなぁ)」
リーラちゃんが、こちらを見ながらコクコクと頷く。
う、上目遣いだと…可愛いすぐる……グヘへジュルリ
今日もペロペロしてあげるからね!
もちろん、それだけじゃないけど。
「やぁねぇ!朝からイチャラブ見せ付けて!!お姉さん妬けちゃうわ!!何?良い男が見付からない私への当て付けかしら!?」
ノンナさんが、苦笑いしながら芝居がかった口調で仰る。
だけど眼の奥が笑って無いよね。
いやぁ、しかしラブラブに見えますかねぇ。デゥフフフ…
「きょ、今日はコイツを轢殺…討伐してきたんで」
カウンターの上に、私より哀れな運命を辿ったお猿さんの右耳を置いた。
ちなみに、お猿さんは放置プレイの真っ最中。
てか、お亡くなりになってますハイ。
「これは…【バイオレット・ヒップモンキー】の右耳ね?幾らなんでも速すぎない?前回あなたが来てから、30分しか立って無いのよ?」
ま、不味いなぁ…職業のスキル使いましたぁ、なんて言えないし。
嘘も方便と言う事で、ここは一つ。
「ま、魔法でこうブワーと…ボスまで…フハハハ」
く、苦しい…
言ってみたは良いけど、言い訳が苦しいすぐる…
「あら、そうなの。成る程成る程」
ノンナさんが、納得した様に頷く。
あれ?なんか認められてない?
さ、さすが大魔王である私のコミュ力…!!
ふぅっはっはっはっはっはぁ!!
「それじゃあ、『冒険者カード』を出してちょうだい。新しいの発行するから」
言われた通りに新しいのをカウンターに置く。
サラダバー(さらばだー)、ストーンカード。1日だけだったけど、君の事は忘れないよ!?
「それじゃあ…」
カードを受け取ったノンナさんは、年期が入って黒くなりつつある木製のカウンターの中に素早く仕舞い込んだ。
それから何やらカウンターの中でゴソゴソやってる。ここがギルドじゃ無かったら、かなり怪しい…
「はい、【アイアンランク】に昇格おめでとう」
暫くして、満足げに頷いたノンナさんは、一枚のカードを手渡してきた。
鉄色、と言うか鉄製の『冒険者カード』だった。
表面には、また何も書かれてない。
「どうもです」
後ろを向いて、アイテムボックスにさっさとしまう。落としたら大変だしね。
そう言えば、もし紛失しちゃったらどうするんだろ。まだ聞いて無いよね。
「ノンナさん、もし『冒険者カード』を無くしたりスラれたりしたら、どうなるんですかい?」
「うん?そうねぇ、罰金払って再発行になるわね」
ば、罰金かぁ、高そうだなぁ…
まぁ、お金なら城が買える位持ってるから、問題は無いよね。
「罰金は、確か…公用金貨一枚ね」
「一枚ですね…」
うーん、この世界だと高い方だよね…
小鹿亭の一泊の値段が、食事代込みで公用銀貨二枚だからなぁ。
この世界の金銭感覚があやふやなのは、あまりよろしく無いよね。
早くなんとかしなくては。
「じゃあ、今日はこの辺で」
「はーい、またねぇ」
ヒラヒラと片手を振って、ノンナさんは次の冒険者に案内を始めた。
お仕事熱心だなぁ。
一度だけハロワに行った事があるけど、すぐ帰って来た記憶があるような…
まぁ、ぶっちゃけ働きたく無いでござる!!
「瞳子さん!」
「はいぃぃ!?」
びっくりした…
急に話掛けられたから、この私とあろうものが驚いてしまった。
「な、なに?」
「急に口を塞ぐなんて、酷いじゃ無いですか!!」
頬っぺたを膨らませて、プンプンと怒っていらっしゃる…
ウヘへ、苛めたくなってくるぜぇ…
「あ、あれは…そう!仕方無かったんだよ!ふぅっはっはっはっはっはぁ!!」
「笑って誤魔化そうとしてもダメですからね!!」
その後、リーラちゃんを宥めるのに、必殺技の『おだてて崇めて奉る』を炸裂させて事なきを得た。
所要時間約二時間。
ひたすらに両手を合わせて祈りを捧げ、そのまま土下座に移行して五体投地しつつ、その格好から踊り始めると言う、スーパーアルティメットデンジャラスクレイシーな謝り方だ。
これをされて機嫌を直さなかった奴は、|天界より使わされし悔恨の宣教師《父親の東介》しか知らん。
私場合、土下座したところを両足で頭を踏まれた。
弟に伝授して、やらせてみた所、笑顔で許してた。
をい!この差はなんですか!?
って叫んだらヤクザキックされたのは、あぁ、悪い夢だ…
んで、何とかご機嫌を取ったので、北商業区の喫茶店?に入って、甘いもの頼んだ。
そんでもって出てきたのは、今目の前に君臨している山。と言う名のパフェの様な何か。
高さ40センチ、全幅50センチのタライに山盛りにされたフルーツ(笑)にシャーベット、糖蜜によく分からない何かがてんこ盛りにされている。
そのせいか、心なし七色に輝いている気がする。
その容姿はもはやカオス!!全てを混沌に帰し、味さえも灰塵にしてしまう様な雰囲気…
これをスイーツと呼んだら、シュールストレミングをジュースと呼んでも大丈夫な感じ。
これには手を出しては行けないと、私のゴーストが囁いている…
「瞳子さんは食べないんですか?美味しいですよ?」
「そうですよ!マスター」
「そ、そっか…んじゃ私も少しだけ…」
これを旨いと申すか!!
既に山の半分は、リーラちゃんとミルクたんの胃袋に消えてしまったわけで…
リーラちゃん…恐ろしい娘!!
し、しかしこれは…ねぇ。いや、違う!決してこのマウンテンの威容にすくんだ訳じゃ無いんだからね!?
「…ゴクリ…」
我が右手よ静まれ…!
スプーンを手に取るんだ!!後はゆっくりと口に運ぶだけ…
クッ!これがシュタ〇ンズゲートの選択かっ!?
「南無三!!」
結果からして、お口の中がデンジャラスなヘブンになって、ダーティーハリーも失禁しながら逃げ出す程のジーザスクライストになった。
「瞳子さん?」
「マスター、どうしたんですか?」
「…畜生っ…」
めのまえがまっくらになった。




