ボスを倒そう(2)
相変わらず短いです。ごめんなさい
階段を降りて、やっと五階層に着いた。
五階層は、他の階層とは雰囲気が違う。
まず、壁が苔むして緑色になってたり、壁や天井が発光していない。
明かりは壁に刺さっている松明だけ。
そして天井は高い。
10メートル位ある。
床ぶち抜かなくて良かったよ…
そして、目の前には大きな扉が聳え立っている。
「でかいね」
「こんなモノですよ」
本体は真っ黒で、銀色の金属で縁取られたその扉は、いかにもボスの部屋ですよ感バリバリなわけで…
よく見たら扉の真ん中に何やら文字が書いてある。
「何々?『汝笑うことなかれ、笑いは気の隙とらなん。汝敵を侮ることなかれ』…笑うなってこと?」
うーん、助言なんだろうけど…ん?リーラちゃんが、これまでに無い位お目目キラキラさせてる…
ふぅっはっはっはっはっはぁ!!遂に私の真なる魅力に気付いたか!!
「凄いです瞳子さん!神聖文字も読めるんですね!!」
「どうだスゴいだろかっこいいだろ……え?神聖文字?神聖大陸文字じゃ無くて?」
「えっ?」
「え?…えっと、どう違うの?」
「ああ!神聖大陸文字とはですね、これとこれの両方の事を引っ括めたものです」
そう言って、リーラちゃんは漢字と平仮名を指差した。
「こっちが神聖文字で、こっちが大陸文字と呼ばれています」
どうやらこの世界では、漢字は神聖文字で、平仮名が大陸文字と呼ばれているらしい。
そりゃそうだよね。
異世界来てまで、漢字って呼んでいたり平仮名って言っていたら、ちょっと引く。
「瞳子さんの世界ではなんと呼ばれているんですか?」
「神聖文字とやらが漢字で、大陸文字とやらが平仮名と呼ばれているかな」
「“カンジ”と“ヒラガナ”…ですか。でも、何にせよ神聖文字が読めるのは凄いです!」
何でだろうか…町の看板にも、ちゃんと『宿屋』とか『薬屋』とか『武器屋』とか漢字で書いてあったのに。
「看板にも神聖文字とやらが書いてあったじゃん」
「簡単なのはみんな読めるんです。田舎の方は分かりませんけど」
成る程…簡単な漢字は読めるのね。
だけど、やっぱり識字率が低いと思ったのはあながち間違いじゃ無いっぽいね。今考えると。
学校でも開いたら儲かるんじゃないかなぁ。
それに…可愛い女の子も来るかもグヘへ…
「瞳子さん、今邪な事を考えていません?」
「か、考えてませんよ…?」
なんでバレた?
かなり焦ったよ!?
こ、ここは早く行った方が良いよね!!
「ほ、ほら!早く【バイオレット・ヒップモンキー】をやっつけようよ!!」
「怪しいですね」
「アヤシクナンカナイアルヨ」
「ふーん、まぁそう言う事にしておきましょう」
なんかダンジョンに潜った時からリーラちゃんの様子がおかしい…ような…
と、とにかく今はボスを倒そう!
そうと決まれば、この扉を…扉を開け…開け…開かない。
おかしいなぁ…
「どうしたんですか?瞳子さん」
「いや、扉が開かなくてね」
「えっ?私がやってみます」
リーラちゃんが押してもビクともしない。
何やら魔法で開けようとしても、魔法そのものは発動しても、何も起きない。
「おかしいですね…」
「ボスがサボってるのかね」
もしそうだったら許せん…
「今中で誰か戦っているとか?」
「それはありません。もし戦っていたら、扉全体が赤く変色します」
じゃあなんだろう…
とにかく開けてみよう。
どうするかって?もちろんパァワァーで。
「瞳子さん!?何を…」
「どせいっ」
おもいっきり蹴っぱくってみた。
扉の蝶番が吹っ飛んで、片方の扉がひしゃげながら部屋の内側に飛翔する。
それはもう、惚れ惚れする位の速度で。
飛んで行った扉は、部屋の真ん中で寝っ転がっていたデカイ猿に直撃して止まった。
なんか、車に撥ねられた時みたいな音がしたよ!?
「…………」
「…………」
「……死んだかなぁ」
「……どうでしょう」
き、気まずい…
部屋の真ん中までゆっくり近付いて行く。
ひしゃげた扉の下敷きになって、【バイオレット・ヒップモンキー】が倒れていた。
お尻が紫色をしていたんだろうけど、血まみれになっていて、もうなんだか訳わかんない事になってる…
辺りには血の海になっていて、衝撃の凄まじさを物語っていらっしゃった。
もう、死体もダンプカーに撥ねられたみたいな事になってる…
見た事無いけど…
ぺしゃんこになってる【バイオレット・ヒップモンキー】を、扉を退けて発掘し、倒した証明を手にいれる。
聞いたら、右の耳を剥ぎ取るみたい。
右耳…残ってるかなっ★
少し欠けているけど、何とか回収に成功した。
いやぁ、ぐしゃぐしゃだったけど内臓とかが飛び出して無くて良かったよ。
アハハハハー…
「瞳子さんって、やる事が凄いですよね…」
「今言われると、あまり嬉しく無いなぁ」
とにかく目標は達成したから、一度地上に帰りたいなぁ。
でもリーラちゃんをくたくたに疲れ果てさせるという目標は達成出来て無いからなぁ…仕方ない、一度戻りましょう。
手はまだあるはず。
「リーラちゃん、一度地上に戻ろうよ」
「分かりました。こっちに転送魔法の魔法陣があるはずです」
そう言って、部屋の隅にある四人位なら余裕で入れそうな魔法陣まで行く。
その上に立って、リーラちゃんが何やら魔法を唱えた。
すると、魔法陣が輝き出して、白い光が全身を包んだかと思うと、気付いたらダンジョンの入口に立っていた衛兵さんの隣に立っていた。
一瞬の事でした。
何が起きたのかさっぱり分からん。
隣りの衛兵さんは、何時もの事だみたいな顔をしていらっしゃる。
「瞳子さん、どうします?」
リーラちゃんが、裾を引っ張ってきた。
グヘへ、この後はねぇ…君と良い事しようと思うんだよゲヘへ…と、思ったけど、まだお昼っぽい。
もう一回夜にしちゃう?
いや、止めておこうかな。ギルドに行って、昇格手続きしたいしね。
「じゃあ、ギルドに行こうよ」
「分かりました!行きましょう、瞳子さん」
リーラちゃんに手を引かれ、街道を歩いて行った。
あぁ、早く夜が来ないかな…ヘイ、カモーン!ナイトォナイトォ!!
こ、こんなんでどうすか?




