ある日の学校
お食事中の方、下ネタが苦手という方はご遠慮ください。
苅田小学校5年1組、僕は昨日ここに転校してきた。知らない教室、知らない人、僕は緊張しっぱなし。
そして緊張していると、どうしてもおしっこが近くなってしまう。
算数の授業中、我慢できなくなった僕は、背に腹はかえられないと手をあげた。
「先生、トイレに行ってもいいですか?」
正直、恥ずかしかった。こんなこと言いたくなかった。
でもこのままだともらしてしまう。僕は必死だった。
「何だ鈴木、トイレか」
先生は”何だそんなこと”という顔をしていた。僕にとっては”そんなこと”じゃないのに。
「そうか、鈴木は転校して来たばかりだったな。よし、せっかくだから紹介しておこう」
……? 一体何を言っているんだろう。僕は一刻も早くトイレに行きたいのに。
「このクラスの弓塚は超能力が使えるんだ」
……は?
「いちいちトイレに行く必要はないんだ。確か、テレポーテーション……だったかな? 弓塚」
「はい、物質を瞬間移動させる事が出来ます」
弓塚さん、無口でまじめそうな人に見えたのに何言ってるんだろう。
「お、鈴木信じてないな? よし、弓塚、こいつの尿をトイレにテレポーテーションさせてやれ」
「はい」
そう言うと弓塚さんは、目を閉じて集中しだした。
僕はトイレに行きたいんだけど……
「えい!」
弓塚さんが急に叫んだ。僕はびっくりして危うくもらしそうに
……あれ?
ついさっきまでパンパンに張っててもれそうだったのに! なくなってる! 確かになくなってる!
すごい! 弓塚さん! 僕が感動して弓塚さんに話し掛けようとしたその時。
「おぶうぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
形容しがたい声が教壇の方から聞こえてきた。
びっくりして声のした方を見ると、先生が口から黄色い液体を吐き出していた。
あれって……ひょっとして……
弓塚さんの方を見ると、額に指を当てて何か考え込んでいた。
弓塚さんはまた目を閉じた。
「えい!」
弓塚さんがまた気合の入った声をあげた。
するとここ2、3日ずっと出なくて張っていたおなかが急に楽になった。
「ごぶあぁぁぁぁぁぁ!!」
また教壇の方で声がした。
今度は先生が口から茶色の
――しばらくお待ちください――
先生は救急車で病院へむかった。
僕たちはどうしようもなくなった教室から避難して校庭に来ていた。
なぜこんな事になったんだろう……
ふと弓塚さんの方を見ると、あごに手を当てて何か考え込んでいる。
そして小さい声でつぶやいた。
「練習が足りない」
よく聞こえなかったけど、たぶん、そんな言葉だったと思う。
弓塚さんが「えい!」と声を出した。
僕の隣の男子が「あれ?」とびっくりした声を出した。
校庭にたたずむ僕たちから遠ざかっていく救急車のサイレン。
僕にはまるで先生の悲鳴のように聞こえた。