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「それで、リテンダ・・・は、なぜここに?」
呼び方うんぬんの話がひと段落して彪榮はぎこちなくも再び同じ質問をリテンダにした。
すると笑顔をわずかばかり曇らせるリテンダ。
「その・・・様子が変だったので・・・」
確かに皇女と礼部尚書との面会で多少なりとも緊張はしていたし、偶然の再会に驚きはしたが、変と言われるほどではなかった・・・気がする。
「変・・・?」
もちろん、体調は悪くない。
「浮かない顔をしていました。護衛の件のことで悩まれているのでは、と気になって・・・」
どうやら彪榮の苦悩は悟られていたらしい。それで、リテンダはわざわざ追いかけてきたのだと言う。
「何か不満があるのでしたらおっしゃって下さい。面倒なことを頼んでいることは重々承知です。ですから希望があればなるべくその意に沿うようにします」
彪榮は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
異国の皇族とはいえ、その護衛などこれとない誉である。だから、今回の仕事に対する不満はない。あるとすれば勝手に話を進めた伯楽に、だ。
「不満があるわけじゃない」
「じゃあ何故?」
「俺個人の問題だ」
大任であるがゆえ、その責を負う覚悟のない彪榮には荷が重い話だった。それに、理由はそれだけではない。
これ以上の追求は無しだと言わんばかりに言い切られて、リテンダは口をつぐむ。
すると彪榮の背後から「あっ」と声が聞こえたかと思うと、小さな足音が2人に近づいてきた。
「兄貴!」
「紅桓」
彪榮が振り返りリテンダが顔を上げると12、3歳の少年がこちらに駆けてくる。
「どうしたんだ、こんなところで」
「それはこっちのセリフ。俺は今から帰るところだよ。ところで・・・」
紅桓と呼ばれた少年は彪榮の影からリテンダをいぶかしげに見て尋ねた。
「こいつ、誰?」
「えっと・・・それは」
彪榮が返答をしぶると紅桓は「まぁいいや」と彪榮に向き直り、その手をつかんで歩き出した。
「それより早く来いよ。今日はすごいんだぜ」
声をはずませながらぐいぐいと彪榮を引っ張る。
「ちょっと待て」
彪榮はそれを制するとリテンダを振り返る。
「ここから1人で帰れるか?」
そう尋ねられてリテンダは首を横に振った。政府庁舎か秋謹宅か。いずれにせよその周辺なら1人でもなんとかなったかもしれないが、市街まで出てきてしまうと難しい話だった。
「じゃあちょっと付き合ってくれないか。すぐ終わる。その後でちゃんと送るから」
そして彪榮は「こっちだ」と目配せすると、再び手を引っ張り出した紅桓に従って歩き出し、リテンダは慌ててその後を追った。
本当は今回は長く書く予定だったんですが、これから出かけなきゃいけない!でも更新したい!ということで短くなりました(汗)
次の更新は明日か明後日。
その時は今度こそ長く書きます☆
新キャラ「紅桓」出てきましたね!
紅桓と彪榮の話も本編中か番外編で書きたいなぁ~




