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3-5

 そうして小一時間が経った頃。

「お姉さまーーーー!!」

 屋敷の入り口から離れている書斎にまで聞こえるほどの声が、屋敷の廊下に響き渡った。

 これにはさすがにリテンダも本から顔を上げる。

「一旦客間へ」

今しがた別の本を手に取ろうとした彪榮の提案にリテンダは快く頷いたが、手にしていた本とこれから読もうとしていたあるいは借りるつもりだったのであろう本数冊を忘れずに手にしている。彪榮はそれを見て「ちゃっかりしているな」と思ったことは口に出さずに客間へと急いだ。

 客間に戻るとそこには秋瑾、伯楽、益史、李駿、舒宥の他に新たな顔ぶれがいた。

「お久しぶりです、お姉さま!」

李駿に抱きついている女性。推測するに、先ほどの声は彼女のものだろう。

「久ぶりですね、宥碌。お客人にもご挨拶を」

 李駿と舒宥を除いた皆がぽかんとしているのをよそに、放っておいたらいつまでもくっついたままでいそうな彼女を李駿がたしなめる。李駿に言われるとすぐにくるりと向きをかえ、彪榮たちに礼をとる。

「初めまして。宥碌と申します。以後お見知りおきを」

顔を上げてはたと周囲を見渡した宥碌は真っ先にリテンダに目をとめ、ずずいと近寄ってくる」

「綺麗な黄金色の髪、それに目も…」

「あ、あの…」

 じっと食い入るように見つめられて戸惑うリテンダ。

「失礼ですよ、宥碌」

「だってお兄様、珍しいじゃありませんか」

「だからといって何も言わずにいきなり詰め寄るのはダメですよ」

 でも、とまだ何か言いたげな宥碌だったが、舒宥の表には出さない剣幕を悟ったのか不満げに口を閉じた。

「まぁ舒宥、そんなに怒らなくてもよいでしょう。宥碌、その方は遠方の西国からいらっしゃったんですよ」

 李駿が宥碌の肩を持ったことで、宥碌は力強い味方を得たと言わんばかりにすぐにリテンダに向き直った。

「そうでしたのね!!どおりでこのあたりでは見かけないと思いました。父の行商についてあちこち行っていますが、西国はまだ行ったことがありませんの。あちらではそれが普通なのかしら?それにこちらの言葉も上手でいらっしゃるのね、驚きましたわ」

 捲し立てるように言われたじたじのリテンダは、助けを求める視線を彪榮に寄越した。が、彪榮が口を開く前に伯楽が割って入ってきた。

「言葉は独学で学ばれたんですよ。髪については…」

 伯楽がその続きをリテンダに促す。

「私の国では金髪は珍しくないです。こちらや陽朱国のような黒髪の人が逆に珍しいくらいです」

「へぇ、そうですの」

 宥碌はそれ以上追及することはなく、リテンダはほっと胸をなでおろした。

 彪榮はリテンダが助けを求めたのは確かに自分だと思ったのに、伯楽に先を越されたことが少し悔しくて、じとっと伯楽に視線を向けるも伯楽は全く意に介していない様子だった。

「それで、宥碌。今日はどうして来たのですか?」

「そうでしたわ!」

 李駿に尋ねられて思い出したように宥碌は手を叩くと再び李駿に抱きついた。

「お姉さま、改めて上相への就任おめでとうございます!本当はもっと早くお祝いに来たかったのですけど、父の行商の関係で帰ってきたのが一昨日で、昨日知ったものだから…」

「そうですか、わざわざありがとう」

 李駿が頭を撫でてやると宥碌は嬉しそうに目を細めた。


ちょっと短いですがひとまず更新。

新キャラ登場。

この先は少し書いているので近いうちに更新できそうです。

しかし、テスト&レポートラッシュのため、なんだかんだで遅くなりそうな予感。


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