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3-4

 舒宥に案内され、リテンダと彪榮は書庫へと通されると、壁一面を覆う本棚と書物の数に感嘆の声を上げた。

「すごい数だな」

彪榮が属する兵部の書庫にはもちろん劣るが、個人で収集したものとしてはかなりの数があった。本棚に収まりきらなかったのであろう書物は床の空いたスペースに平積みにされていた。

「ここはもともと李駿様のお父上の書斎でした。李駿様は幼い頃からよくここに出入りしてはお父上がご政務なさる横で本を読まれていました」

 舒宥は懐かしそうに目を細める。

「舒宥さんはいつから李駿様に仕えているんですか?」

「李駿様が7つの頃からです。お父上を大層慕っておられました。李駿様が15の時に亡くなられてからは官吏を目指して血の滲むような努力をなさったのをこの目で見てきました。ですからこのたび李駿様が易府上相に任命されたこと、心から嬉しく思っています」

長年主人に仕え見守ってきた身として感慨もひとしおだと言えよう。

李駿と舒宥のほんのわずかなやり取りを見、舒宥の話を聞き、特定の主人を持ったことのない彪榮には想像でしかないが、舒宥の従者としての在り方は尊敬に値すると感じた。

「好きなだけお読みになっても構いませんよ。お貸しして良いとも李俊様から言付かっています」

「本当ですか!?」

 それを聞いてリテンダの目の輝きが増す。「どれにしましょう」と棚の端から選別を始めだした。

「私は客間の方に戻ります。何かありましたら遠慮なくお申し付けください」

 本に夢中なリテンダは見向きもしない。彪榮は肩をすくめてリテンダに代わり舒宥に例を言うと、舒宥は笑って部屋を後にした。

リテンダに付き添ってきたが、政治学等の学問には疎い彪榮はリテンダが本の虫となった今、手持無沙汰だった。適当な本を手にしてはみたものの、内容はあまり興味を惹かれるものではない。

人2人分ほど離れて隣にいるリテンダに目をやると、食い入るように本の中身に目を通している様子は真剣そのものだった。彪榮の視線に気づくこともない。

本を手にとっては中身を軽くさらい、そしてまた違う本を手に取るという繰り返しをしばらく眺めていると、ある棚に手が差し掛かったところでリテンダの様子に変化が見られた。本に夢中で彪榮に見向きもしないのは同じなのだが、表情が若干楽しそうである。ページをめくる度に「わぁ…」などと感嘆の声をもらすこともあり、目の輝きも増している気がする。

何の本を読んでいるのだろうかと棚の中の本をうかがうと、どうやら華櫻国の地域史や周辺国について書かれた本が集められている棚のようであった。

(そういえば、他国に興味があるんだったな)

 よくよく考えれば物好きなことだ。一国の姫君故教養は高くて当然かもしれないが、こうまで勉強熱心だとは。

(皇族の姫なんて、贅沢三昧でお高くとまってるだけだと思ってたな)

 2人分の距離を詰めリテンダの手元の本を盗み見ると、どうやら華櫻国の伝統工芸品や民族衣装といったページで目を輝かせているらしい。普段の振る舞いやこうした所作を見ると、一国の姫君という感じは全くしない。ちょっと好奇心旺盛などこにでもいそうな普通の女の子のようである。

(そういえば、ため口で話すのも躊躇いがなくなったな…)

 敬語を使わないように言われた時はかなり動揺したものだが、今となっては呼び捨てにすることも特に畏れ多く感じない。慣れとは恐ろしいものだと内心苦笑しながら、彪榮はリテンダが読んでいる本と同じ棚に仕舞われている本を1冊手に取り、それに目を落とした。


連続更新。

しかし、続きは一切できていない(笑)


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