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第三章 初めての旅路にて


 華櫻国は陽朱国の内地側に隣接する国であった。長い歴史をたどると、もともとこの2つの国は1つの国であったが、ある時代の皇帝が双子の息子に帝位を譲り、その際国土を二分してそれぞれを治めるようにさせたことが今の陽朱国と華櫻国の始まりである。そのため、言語もこの2国は共通である。

 以後この2国は友好的な関係にあるときもあれば、一方の国を支配せんと敵対していた時もあった。近年の歴史では長年の戦いの末に両国とも国が疲弊していたため、武力的な争いはなく冷戦状態であったが、3代前の華櫻国の皇帝の末の姫が陽朱国の皇子に嫁いで以来今日まで友好的な関係が保たれている。


 礼部の官舎前に着いてまず真っ先に声を上げたのは彪榮だった。

「伯楽!お前も行くのか!?」

 その場には伯楽と秋瑾、それからその横にもう1人、男の官吏がいた。

「あぁ、そうだ。華櫻国へ向かわれる秋瑾殿と益史殿の護衛をする」

「そういうことは先に言っておいてくれよ…」

 伯楽が共に行くことはおろか、リテンダ以外の華櫻国行きのメンバーが誰であるか自体を彪榮は今まで知らなかった。

「聞かなかったお前が悪い」

 にやりと笑う伯楽に、彪栄はわざと言わなかったのではないかと疑う。あるいは単に言うのを忘れていたかだ。実践においては類まれなる才を発揮する伯楽だが、その他の仕事に関してはよく忘れることが多い。それを部下たちもよく分かっているので、伯楽から押し付けられる書類仕事を断ることはない。

「兵部尚書のお手を借りられるなんて光栄ですね。いざという時は私みたいな老いぼれは捨て置いてくれてかまいませんよ」

 秋瑾が冗談めかして笑う。

「何を言いますか。秋瑾殿にはまだまだ教えを請いたいことがたくさんあるのです。そう簡単に死なれては困ります」

 すると秋瑾の横の男が冗談と分かっているのかいないのか定かではないが、生真面目そうに言った。

「嬉しいことを言ってくれますねぇ。あぁ、ご紹介いたします。こちらは益史(えきし)、私の部下です。私も歳ですから、今回を除いて以後他国へ赴く用事については一任しています。ですので次回以降機会がありましたらこの益史に同行してもらうことになります。その都合上リテンダ様の事情も説明してありますが、口の堅い男ですので、その点はご安心を」

 秋瑾から簡単に説明があった後、益史本人が口を開いた。

「こちらは仕事だというのに、嫁いできたとはいえ他国の姫の道楽で迷惑をこうむるのはごめんですよ」

 いきなり明らかにリテンダの同行を快く思っていない益史の発現に驚くと同時にカチンときた彪榮だったが、初っ端から揉め事を起こすわけにはいかいないと思い、グッとこらえる。

益史の上司である秋瑾は「すみません。少し口が悪いもので」と益史の発現を諌めることもせず笑っている。リテンダも特に堪えた様子もなく、益史に丁寧に挨拶をする。

「お仕事のお邪魔にならないように努めます。これからよろしくお願いします」

 これに驚いたのは益史で、リテンダが陽朱国の言葉をこれほど流暢に話せるとは思っていなかったのだろう。彪榮も初めて会った時は驚いたものだ。

「リテンダ様は他の国に大変興味がおありなのはすでに伝えた通りですが、この陽朱国に来るにあたり、本国で独学で言葉を覚えられたのですよ。我々に同行なさるのも知識見聞を広めるためだとか」

 秋瑾が説明すると益史はばつが悪い様子でリテンダからは視線をはずして口を開いた。

「ま、まぁ…その努力は認めましょう。道楽と言って軽んじたのは撤回します。それにこれなら我々がいちいち翻訳する手間が省けますからね」

 ものすごく分かりづらいが一応リテンダのことを認めたらしい。しかも前の自分の物言いを謝罪するような発言に彪榮と伯楽は唖然とする。そこへ秋瑾が2人にだけ聞こえるようにこっそりと耳打ちする仕草を見せた。

「彼、基本的に努力する人間は好きなのですよ。自分のキツイ物言いも自覚しているんですがね。どうも素直に表現するのが苦手で…。そこが可愛いところなのですがね」

 ニコニコとする秋瑾の横で彪榮と伯楽は「可愛い…か?」と苦笑いするのだった。そんな益史の性格をリテンダもこの数刻で感じたかは分からないが、どうやら益史に対して苦手な印象は持たなかったようである。


第三章スタート!!

そして新キャラ登場

益史は私の中ではツンデレ属性です(笑)


この先はまだ全然書けていないうえに新学期で学校が始まるので

また更新が滞るかと…


最近「るろうに剣心」を見てハマってしまい、

あんな壮大な話を書きたいという創作意欲が大いに沸いてきたのですが

自分に才がないために全く筆が進まない(笑)

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