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結局、ものの数分でかたがつき、伯楽の部下たちは倒れた敵を縛り上げる作業に追われていた。
人身売買の首謀者は表では宝石店を営んでおり、裏で荒くれ者たちを金で雇っては見目麗しい女をさらってこさせては売りに出していた。巧妙なやり口で今まで尻尾を出さずにいたが、雇った者たちが市街を荒らす行動が目につくようになり、今回のことがあって解決に至ったのだった。
「ご無事でなによりです、リテンダ様」
リテンダの手を縛っていた縄を彪榮がほどいてやっていたところに、伯楽が歩み寄ってきて声をかける。
「助けていただき、ありがとうございました」
少々赤くなった手首をさする手を止めて、リテンダは頭を下げた。
「いえ、我々は我々の仕事をしたまでです。ですが、怖い思いをさせてしまいましたね…」
「いいえ。1人で出歩いた私の行動が軽率でした」
「申し訳ありませんでした」とリテンダは再び頭を下げる。
「まぁ、この件に関してはこれで一件落着という事で。彪榮、リテンダ様を秋瑾様の邸へお送りしろ。それから…」
「兄貴!!」
伯楽の声を遮るようにしてその場に紅桓が飛び込んでくる。
「ついてくるときかなくてな…」
やれやれといった様子で伯楽は笑う。
「紅桓…」
伯楽の横をすり抜けて彪榮のもとに駆け寄ってきた紅桓に目線を合わせると、彪榮はその頭にポンと手を置いた。
「助かった。ありがとうな」
彪榮に褒められて誇らしげに胸を張る紅桓の前に、リテンダもその顔を覗き込むようにして屈んだ。
「すみません。私のせいで怪我を…」
男たちに殴られたときの傷にそっと触れると、紅桓は照れ臭そうにそっぽを向いて「これくらいどうってことない」と答えた。
「俺は先に兵部へ戻っているぞ。それから、こいつも人通りのあるところまで送ろう」
伯楽は紅桓に「行くぞ」と声をかけ、半ば無理やり紅桓を引きずって行った。
「おい、放せ!!俺は兄貴と一緒に…」
「アイツはまだ仕事があるんだよ。ガキはとっとと家に帰るんだ」
騒ぐ紅桓の声も次第に遠ざかっていき、捕えた敵も、伯楽と紅桓もいなくなって2人残された彪榮とリテンダ。
「ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。私のせいで…」
再度彪榮に向かって頭を下げるリテンダ
「いや、俺にも落ち度はあった。悪いのはこっちも同じだ。それよりも、無事で良かったよ。…じゃあ、秋瑾殿の家へ…」
そしてリテンダを連れてこの場を去ろうとしたが、リテンダの足が動こうとしないのを不思議に思っていると、その肩が微かに震えていることに気付いた。
彪栄がそっとリテンダの頭に手を置くと一瞬リテンダがこわばったのがわかった。
「怖かったな…」
そう声をかけ、しばらくしてから手を離すと、リテンダからは何の反応もないまま彪榮はなんだか照れ臭いような恥ずかしいような、なんともいたたまれない気持ちになり「行こうか」とリテンダに背を向けて歩き出そうとすると、ふいに背に衝撃を受ける。
「リテンダ…?」
無言のまま彪榮の背にしがみつくリテンダ。
「ふっ…ぅ…」
押し殺した嗚咽とその震えが、彪榮に伝わってくる。
怖くなかったはずはないのだ。
だが彼女の皇女という立場は、人前で弱みや涙を見せることが許されないものだ。
彼女を連れ去った男たちの前でも、伯楽の前でも出来るだけ気丈に振る舞っていたが、さすがに気が緩んだらしい。
本当はこういう時に震える背に手を回して抱きしめてやるのが男なのだろうが、リテンダがそれを望んでいないような気がしたし、彪榮はそれをしてやれる立場に無い。
そうして彪榮は、何も言わずリテンダが落ち着くまで背を貸していた。
次で第二章ラストォォオっ!!
この2,3日でがーって書いたから
なんか色々不十分かもしれないけど
とりあえずこんな感じで!!
第三章以降はまた構想がしっかりできてから書くので
しばらく更新はお休みになります~




