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2-6

 そう遠くへは行っていないと思われるため、駆け足ながらも周囲にくまなく注意を向けて彪榮は急ぐ。しかし、通りをはずれた路地裏に踏み込まれると道が入り組んでいて、捜索は難しくなる。

 リテンダと彼女を連れて行ったという男たちの姿が見つからず、彪榮が苛立ちを覚え始めた時だった。

「兄貴っ!」

 人混みの中からハッキリと聞こえた声に彪榮は足を止めた。

「紅桓!?」

 聞こえてきた声と姿はまさしく紅桓であったが、近づいてくるにつれて口の端から血が出ていることが分かった。

「どうしたんだ、その怪我」

 おそらく殴られたのであろう怪我の他にも、紅桓の服は砂ぼこりで汚れていた。

「大変なんだ、アイツが!!」

 彪榮の心配をよそに、紅桓はまくしたてる。

「し、仕事の帰りにアイツが変な奴らに連れてかれるの見て、助けようとしたけど、俺…全然ダメで…っ」

 紅桓は血の出ているのを気にもせず唇を噛みしめた。


「逃げて下さいっ」

 リテンダを助けようと果敢にも立ち向かった紅桓だったが、大の男相手に力で敵うはずもなく、紅桓は殴られて地に伏した。

 更に手をあげようとする男たちをリテンダが声を上げて静止をかける。

「やめてください。何なんですか、あなた達は…。子どもにまで手をあげて、恥ずかしくないのですか!?」

 すると、紅桓に手をあげようとしていた男はリテンダに向き直り、容赦なくその手を振り下ろした。

「きゃあっ」

 乾いた音と同時にリテンダが地に膝をついた。

「うるせぇ女だな。代わりにお前を痛めつけてやろうか」

 ボキボキと骨を鳴らす男とリテンダの間に、別の男が割って入った。

「やめておけ、せっかくの顔が台無しになる。楽しめないだろう」

 そう言われ、男はちっと舌打ちするとリテンダを無理やり立たせ「おら、とっとと行くぞ」と紅桓には見向きもせずに歩き出した。


「俺じゃどうにもできないから、兄貴を探しに…」

 去っていく男たちとの歴然とした力の差、無力な自分に言葉では言い尽くしがたい悔しい思いを噛みしめ、紅桓はリテンダを助けるために最善と思われる策をとった。

「この先を少し行ったところの道を横に入ったところなんだ。早く…」

「待て、紅桓」

 彪榮の手をとって走り出さんとする紅桓を彪榮が引きとめた。そして彪榮はいつもつけている飾り紐をとって紅桓の手に握らせた。

「これを持って兵部へ行くんだ」

 女店主や紅桓の話を聞く限り、リテンダを連れ去ったのは2,3人の男たち。しかし、公然と昼間から市街を荒らしている連中だ。役人に知られても構わないような振る舞いは、それに立ち向かえるほどの武力を有している可能性が高く、彪榮1人だけでは対処しきれないことが大いに考えられた。

「伯楽という男に事情を伝えろ。俺の名と、これを見せれば大丈夫だ」

 リテンダの素性を知っている伯楽ならば、迅速に対処してくれるという信頼がある。

「リテンダを助けるためだ。できるな?」

 そして、紅桓がこれを確実に伯楽に伝えてくれるだろうことも。

 紅桓は手に握らされた飾り紐とまっすぐに見据えてくる彪榮の目を交互に見、持ったそれを固く握ると「わかった」と踵を返して走り出した。

 そして彪榮は先ほど紅桓が走ってきた道をたどり出す。


月1更新…orz

なんとか春休み3月中に第二章を終わらせたい


しかし、やりたいことが沢山あって難しそう~

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