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連絡を聞いて駆け付けた別の小隊も加わって消火作業が行われ、完全に鎮火したのは夜が明けてからだった。
野盗の多くは捕えるに至らなかったが、捕まえた野盗の中に幹部クラスの者がおり、そこから足がつかめてその一団を壊滅に追いやることが出来たのは幸いだった。
一通りの作業を終えて引き上げる兵部の皆々を尻目に、彪榮は一人残って焼けてなくなってしまった村を呆然と歩いていた。
自分の非力さ故に目の前で人を死なせてしまった。だから力をつけたのに、これではあの頃と対して変わっていないのではないか。もちろん今回の件はいくら自分一人の力があったところでどうにもならなかったことだということは分かっているが、やるせない気持ちを抱えずにはいられなかった。
自分に救える命など無いのではないか。そう思ってしまう。
そうして何の答えも出ないままその場を後にしようとした時だった。微かなうめき声が聞こえた気がした。本当に小さな声だったが空耳で済ませることはできず、彪榮は周囲の茂みを手当たり次第に見て歩く。
さして時間をかけることなく、彪榮は茂みの間から2人の少女を見つけ出した。姉妹のようで、姉が妹を抱き込むようにして倒れており、どちらもひどい火傷を負っていた。一見死んでいるように見えたが、彪榮が近づいて確かめると僅かながら息をしている。
彪榮は上着を脱いで二人を包むようにして抱きかかえると兵部へと急いだ。
先に引き上げていた小隊と伯楽は後から血相を変えてやってきた彪榮と彼が抱える子供に何事かとどよめいたが、それを一切気にすることなく彪榮は兵部付きの医者のもとへと走った。
2人の火傷の治療は滞りなく進んだ。姉の方は治療後すぐに容体が安定して静かに眠っていたが、妹の方は荒い呼吸を繰り返すばかりだった。子どもにとってはほとんど致命傷ともいえる火傷を負っていたらしく、医者には今晩が峠だと言われた。
彪榮は医務室に居座り寝ずに2人の看病をした。兵部の仲間が何度も看病を変わるという申し出をしてきたが全て断った。
少女はうなされ、何かを探すように小さな手が宙をさまよう。彪榮は祈るようにして固く握ってやった。
そうして空が白み始めた頃、ウトウトとしていた彪榮だったが己が包み込んでいた手がピクリと動いたことにハッとして目を見開いた。
すると、気づけばすでにうなされなくなり安らかに眠る少女の顔が目に入り、そしてゆっくりとその瞼が持ち上げられた。自分の置かれた状況が把握しきれないのか、きょとんとしていたが彪榮越しに見える寝台で眠る姉を見つけて安心したようだった。
彪榮はその小さな手を再度固く握りしめて「良かった」と小さく呟き、目元を濡らした。
久しぶりの更新~
彪榮の過去話も次で終了かな?
あと1-1にイラストを載せたのでよかったら確認してください。
一応リテンダのイメージこんな感じです。




