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その後のことはあまり覚えていない。伯楽たちが駆けつけてようやく我に返ると、戸口に一人が倒れ、目の前には歪んだ顔を血だらけにした男と、その男に馬乗りになって胸倉を掴み、同じく拳を血だらけにしている自分がいた。
そして、地に伏す女と幼い子どもの冷たくなった体があった。
それを前にして彪榮は己の不甲斐なさを呪った。
この事件以降、彪榮は誰の目から見ても明らかに憔悴していった。
夜、眠ろうとすると殺された女の最期の悲鳴が頭の中から聞こえてきて、その度に当時の惨状を思い出して彪榮は充分に眠ることが出来なかった。
そんな日が2週間近く続き、彪榮が無断で仕事を休むようになったある日、そんな彪榮を見かねた伯楽が宿舎へと押しかけてきた。部屋に入るなり、虚ろな目の彪榮の胸倉を掴むと容赦なく殴り倒した。
「馬鹿か、お前は!!そうしてお前が悲観に暮れていればあの女子供が浮かばれるとでも?何かが変わるとでも言うのか?」
伯楽は殴り倒されたまま起き上がろうとしない彪榮の胸倉を再び掴み、無理やり立ち上がらせる。
「悔しかったら強くなってみせろ。二度と同じようなことが起きないようにな」
そして少し乱暴に手をはなすと「あとはお前の好きにしろ」と残して伯楽は部屋を去った。
残された彪榮は事件以降初めて嗚咽を漏らして泣いた。
その翌々日から再び兵部に顔を出した彪榮をみて伯楽を含む皆が安堵した。
もともと訓練には熱心ではあったがこの日から彪榮はそれまで以上に体術や棍術を磨き、毎日倒れるまで訓練に明け暮れ、ついには体がもたないと周囲に止められるまでに至った。
しかしこれが功を奏してか、現在の兵部には彪榮の右に出るものは伯楽くらいしかいないまでに彪榮は力をつけた。その伯楽でさえも楽に勝てるわけではなく、ほぼ2人の実力は拮抗しており紙一重の差といえよう。
だが彪榮がいくら力をつけても、助けられない命が過分にあったのも事実であった。
その中でも一番大きかったのは、小さな集落が野盗の一団に襲われた事件だった。もともとその集団に目をつけていた兵部であったが、なかなか足取りが掴めず目撃情報のあった場所付近に張り込むことくらいしかできずにいた。
その日、10名弱の小隊で張り込みをしていた彪榮は夜にも関わらず、一部赤く染まる空に気付いた。張り込んでいた場所からわずかばかり離れたそこに駆けつけると、炎に包まれる村落があった。そして逃げ惑う人々とそれらの人を容赦なく殺す野盗たち。
彪榮はすぐさま村民の保護と野盗の討伐に打って出たが、時すでに遅く、村民の大半は炎に包まれるか野盗の手によって殺されており、助けられたのはわずか数名にすぎなかった。
燃え盛る炎を前に何もできない己に募る苛立ちを彪榮はどうしてよいかわからず、「くそっ」と地面に拳を埋めた。
久しぶり過ぎる…
いやぁ…
部活のオフが終わってまた活動が始まったり
9月も12日までレポート提出があったりと
忙しかったものですから…
これからは最低限週1ペースくらいで
書けたらいいなぁ~
という願望を持って頑張ります




