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閑話6
なんて都合のいい展開なのだろう。
〈彼〉はあまりに自分にとって有利な物事の展開に、思わず笑いをこらえきれなかった。
くつくつと喉が鳴るのを自覚していたが、幸い部屋には〈彼〉以外の者はいない。
身勝手な駒達が動いたおかげで、彼女に接触することができた。どうやって実現しようかと頭を悩ませていた一番の要因を、彼らはいとも簡単に成し遂げてみせたのだ。
なんという偶然。なんという運命。
まさに、〈彼〉とその親友のための舞台だった。
死んだ次男には申し訳ないが、この機会をせいぜい利用させてもらおう。
待っていてくれ、もう少しだと、〈彼〉は誰ともなしに呟いた。
手をついたガラス窓が、ぎしりと音をたてる。
──もう少しで、全てが終わる。