7 憧憬の美女
私は佐倉が紹介してくれた新規取引のきっかけに感謝した。それは佐倉が勤めていたお店は上場会社が運営していたからだった。営業としては取引金額の大きさが実績反映に欠かせない。私は早速マネージャー職の美女を訪ねた。小柄な割に商談での態度が大きなその美女は我が社の商品絵型を見て取引条件を確認すると次回の展示会来社を約束してくれた。彼女の美しさは見事だった。しかし態度の大きさはいただけなかった。仕事でなければ係わりたくないタイプだった。私は商談が終わると佐倉を訪ねた。佐倉は新しい職場でも大人気でたくさんの客に囲まれていた。佐倉は私が店に入ると私をすぐに見つけて「早速来たんですね。うちのマネージャー綺麗だから来るのが楽しいでしょ」と言って私を茶化した。私はそうでもないと率直な感想を佐倉に漏らした。
「そうですか?ここに来る営業さんはみんなマネージャーの虜ですよ。でも最近婚約したらしいですから皆さんそれを知ったらがっかりするでしょうねぇ」佐倉は私の表情を見ながらその反応を確認していた。
「それは目出度いな。次回の商談の時にお祝いを言うことにするよ」私は美人マネージャーの虜でなくて良かったと思った。
「チーフはうちのマネージャーに興味がないんですか?あんなに綺麗なのに」佐倉が言った。
「美人なら渋谷にゴロゴロいるよ」私は佐倉に思ったままを言った。
「へぇ、そうですか。意外ですねぇ。男の人はみんなマネージャーの魅力にやられちゃうのかと思ってました」
「何事にも例外があるのさ」
「なぁるほど」佐倉は簡単に納得したようだった。或いはどうでも良いことだったのかもしれない。
「また渋谷で飲もうぜ」と私が言うと佐倉は「今度は横浜にしましょう。チーフ向けのお店を見つけておきました。驚きますよぉ。楽しみにしていてください。男性二名の調達をお願いしますね。明日の六時に石川町の改札前ということで。よろしくです」佐倉はまたしても予定を勝手に決めていた。
「おい、六時は無理だよ。それになんで二人も呼ばなきゃならないんだ?」
「明日モデルをやっている友達と会うんですよ。かなり綺麗ですよ。女三人と男一人じゃチーフが気の毒でしょ。でも六時が無理だったら六時半でどうですか。元町の紅茶専門店で待ってますよ」
「七時」私は時間の変更を求めた。
「じゃぁ、七時で。なるべく早く来てくださいね」佐倉は言うことを言うとレジに戻って行った。私は社外の友人を誘うことにした。モデルが来るとなれば喜んで参上する連中はいくらでもいるのだ。