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追放令嬢のスローライフ。辺境で美食レストランを開いたら、元婚約者が「戻ってきてくれ」と泣きついてきましたが、寡黙な騎士様と幸せなのでお断りします  作者: 緋村ルナ


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第7章:エルフの知恵と水路の建設

 新しい農具のおかげで、私たちは谷のさらに奥地、これまで手つかずだった土地を開墾できるようになった。しかし、そこで新たな問題が浮上する。水不足だ。

 谷を流れる小川から、新しく開拓した畑までは距離がある。毎日、桶で水を運ぶのは大変な重労働だった。

「……ここまで大規模な畑になると、計画的な灌漑が必要ね」

 私は谷の地形図を広げ、考え込んだ。小川の上流から畑まで、水路を引くことはできないだろうか。それは、村の総力を挙げなければならない、一大プロジェクトになる。

 私が計画を打ち明けると、村人たちは「リナさんが言うなら!」と二つ返事で賛成してくれた。レオンも「測量や設計は俺が手伝おう」と力強く言ってくれる。


 こうして、谷の未来を賭けた水路建設が始まった。男たちは石を運び、水路の基礎を築く。女たちは食事の準備や、できる範囲での土木作業を手伝う。谷の全員が、一つの目標に向かって汗を流していた。


 そんなある日、工事現場にふらりと一人の旅人が現れた。

 陽光を浴びて輝く長い銀髪、尖った耳、そして森の木々のように深く澄んだ翠の瞳。人間離れした美しさを持つその青年は、エルフ族だった。

「……これは、興味深い」

 青年は、私たちが設計した水路の図面を覗き込むと、静かに呟いた。

「自然の地形を巧みに利用し、水の流れを最小限の労力で制御しようとしている。素晴らしい発想だ」

「はじめまして。私はシルと申します。植物学者です」

 シルと名乗ったエルフは、優雅に一礼した。彼は、珍しい植物を求めて旅をする途中、この谷の噂を聞きつけて立ち寄ったのだという。特に、私が実践しているという循環型のオーガニック農法に、強い興味を抱いていた。


「もしよろしければ、私もこの計画に協力させていただけませんか?」

 シルの申し出は、私たちにとって渡りに船だった。

 彼は植物学者として、この谷の生態系に誰よりも詳しかった。

「この辺りの土壌は、薬草の栽培に向いています。水路を引くなら、ただの水を流すのではなく、途中に薬草を植えた区画を設けてはどうでしょう?水の浄化作用も期待できますし、新たな産物にもなります」

「こちらの斜面は崩れやすい。根を深く張るこの地方固有の灌木を植えれば、土砂崩れを防げます」

 シルの知識は、私たちの計画をより洗練させ、より自然と共生するものへと進化させてくれた。彼の助言により、私たちはただ水を引くだけでなく、谷全体の生態系を豊かにする壮大な緑化計画へと、プロジェクトを昇華させたのだ。


 シルはすっかりこの谷が気に入り、水路が完成した後も留まることを決めた。彼は谷の一角に小さな研究所を構え、薬草の栽培と研究を始めた。彼が開発した回復薬や美容効果のあるハーブオイルは、モコを通じて販売され、谷の新たな特産品となった。

 ドワーフの技術に、エルフの知恵。

 様々な種族の仲間たちが集い、それぞれの知識と技術を持ち寄ることで、私たちの谷は他のどこにもない、唯一無二の場所へと成長していく。

 水路建設の槌音は、多様な才能が共鳴し合う、未来への協奏曲のように谷に響き渡っていた。

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