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追放令嬢のスローライフ。辺境で美食レストランを開いたら、元婚約者が「戻ってきてくれ」と泣きついてきましたが、寡黙な騎士様と幸せなのでお断りします  作者: 緋村ルナ


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第12章:新女王の戴冠

 私たちが独立を宣言してから、事態は急速に動いた。

 王国の圧政と飢饉に苦しんでいた近隣の領地は、次々と我々の新国家への参加を表明した。彼らは、力ではなく『食』で民を豊かにする私の理念に、未来の希望を見たのだ。

 旧王国は、もはやそれを止める力を持っていなかった。主力の騎士団は『豊穣の谷』で大敗し、何より民衆の支持を完全に失っていたからだ。


 そして、季節が一周し、谷に暖かい春の風が吹く頃。

 私たちの新国家『フロンティア』の建国式典が、厳かに、そして華やかに執り行われた。

 首都となった『豊穣の谷』には、フロンティア国に参加した全ての領地から代表者が集まり、広場は人々で埋め尽くされている。

 私は、シルが谷の植物で染め上げた、新緑のような美しいドレスを身にまとっていた。隣には、騎士の正装に身を包んだレオンが、誇らしげに立っている。

 広場に作られた壇上に登ると、割れんばかりの拍手と歓声が私を迎えた。

 長老の一人が、ギルが特別に作り上げた、麦の穂をかたどった銀の王冠を私の頭上にそっと乗せる。


「本日、ここに、フロンティア初代女王、リナ・アーシェット陛下の戴冠を宣言する!」


 その言葉と共に、再び大歓声が巻き起こった。

 私は女王として、集まった国民の前に立つと、マイク(これもギルとモコが協力して作った魔道具だ)を通して、最初の言葉を述べた。

「我がフロンティアの国民たちよ。私は、この国を武力によって支配するつもりはありません。私たちの武器は、剣や魔法ではなく、この豊かな大地が生み出す『食』です」

 私は、壇上に飾られていた、焼き立てのパンが入った籠を手に取った。

「私たちは、パンを分かち合います。飢える者には畑を与え、働く場所を与えます。かつて敵だった者でさえ、武器を捨て、鍬を持つならば、私たちは隣人として受け入れましょう」

 私の言葉に、旧王国からの難民として受け入れられた人々が、涙を流して頷いている。

「さあ、皆さん。共に作りましょう。大陸で最も豊かで、最も平和で、そして、最も美味しい匂いのする国を!」

 私の宣言に、国民は最大の歓声で応えた。


 式典が終わった後、私はレオンと共に、城となった館のバルコニーに出た。

 眼下には、活気と笑顔にあふれた私たちの国が広がっている。遠くの畑では、黄金色の麦が風にそよいでいた。

「本当に、女王様になっちまったな」

 レオンが、少し照れくさそうに笑う。

「ええ。でも、私は何も変わらないわ。明日も畑に出て、土をいじるつもりよ」

「だろうな。それが、俺たちの女王だ」

 レオンが、優しく私の肩を抱き寄せた。

 悪役令嬢と呼ばれ、全てを失ったあの日。まさか、こんな未来が待っているなんて、誰が想像しただろう。

 でも、失ったからこそ、私は本当に大切なものを見つけることができた。

 私の足元には、愛すべき豊かな大地が広がっている。そして、私の隣には、誰よりも信頼できる愛する人がいる。

 私は今、自らの手で掴んだ幸福の国の、女王になったのだ。

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