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魔法猫で生きてみて  作者: ライチベリー
第一章,『新たな猫生』
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0話,『プロローグ』

 前作が超尻切れトンボというか第一部も終わってないというか。

 それでも暖かく見守って下さいお願いします。

 プロローグ 



 百獣の王と見紛うばかりの凛々しい姿で前を向いていると、隣に猫の気配がした。なので顔は前を見つめたまま話しかけてあげる。


「よう、シャル」

「ねえ、あんた馬鹿じゃないの?」


 シャム猫のシャル(♀)が失礼なことをのたまった。

 俺は基本的に善良で紳士的な猫なので、失礼な言葉にも優しく対応してあげる。


「なぜだい、お嬢さん? 俺は立派に交通ルールも守るダンディな猫だぞ」

「それが馬鹿だって言ってるのよ!」


 なぜか怒られた。

「分かる? ワタシたちは猫よ猫。人間とは全然違うの。だから、人間のルールに従う必要もないわ。私たちには、私たちのルールがあるのだから」

「だけどな、シャル。この歩行者信号機というものは、まあ良い発明だと思うんだけど。ほらカーだってビュンビュン通って危ないし。俺はこれを守るべきだという議題を集会で提出したいね。あと怒鳴らないで。五月蠅いから」

「その集会に遅れたら話にならないじゃない! あとほんの少しで始まるのよ、分かっているの!?」


 確かにシャルの言葉にも一理ある。一理あるのだが、


「ちょっといいかげん静かにしてもらえませんかね、お嬢さん。今いい所なんで」

「いい所? なにが?」


 シャルの頭にハテナマークが浮かんでいる。そこで俺は視線で教えてあげた。ほら、前前みたいな感じで。

 シャルが俺の視線を辿るとそこには、


「ねえあんた。死にたいの?」

 純白の美しい宝、つまりパンツがありましたとさ。

 なんか!マークがないのが鬼気迫っていて怖い。毛の先から殺気が滲み出ていて俺のシャイなハート(心臓)が数センチ縮まった、ような気がした。


「まてまて、シャル。俺は猫つまり人間のパンツを眺めたところで何の問題もナッシング!!」

「こんな時だけ猫ぶるな!」


 怖っ。今爪が鼻の先を、鼻の先をジュバって!

 緊迫した空気が俺とシャルの間に流れる。かたや猫至上主義者のシャル。もう片方は人間(主に美少女)が大好きの猫代表の俺。こうしたやり取りが何度もある事実から分かるように、俺たちが相いれることは絶対にないだろう。


 睨み合う。


「あー、可愛いー」


 そして猫の空気を読めない女子高生の集団が俺とシャルを抱きかかえた。


「にゃぁー。みゃー」

「みてみてこの黒い猫ちゃん。めっちゃうちに懐いてるんだけど」

「うわ、ホントだ」


 もちろん俺は喉をゴロゴロ鳴らして、どこにとはいわないが、女子高生に顔を擦りつけていた。

 一方のシャルは、そんな俺を憎々しげに睨みつけ、人間の腕から飛び出すと、そのまま信号無視をして歩いて行く。


瞬間、轟音。


一台のトラックが爆音を響かせ直進してきた。そしてその軌道の先には、今さっき道路に信号無視で踏み出したシャルがいるわけで、


あまりの恐怖、そして絶望感に体が硬直しているのだろうか。目を大きく見開いて、彼女は動くことが出来ないでいた。


あの馬鹿っ。

俺は全力で女子高生の腕から飛び出した。硬直するシャルを、持てる力全てを使い、死の直線から弾き飛ばす。


 しかし、俺は逃げれなくて、そしてトラックはもう目前に迫って来ていて、

 

 俺は自分が死ぬ音を聞いた。



                   ○ 



 始まりと死は唐突にやってきた。

 自分の体から聞こえる、肉と潰され骨が折れる嫌な音。衝突と同時に回転する視界。全ての世界が自分から離れ、遠ざかっていく感覚を覚える。

 一瞬だが、永遠にも感じられる浮遊に、奔る走馬灯。グシャという音と同時に地面に叩き付けられる。

 金属の塊に跳ね飛ばされた俺の体は、血を撒き散らしながら歪に転がり、本来ではありえない方向に首が曲がる。だが、そのお陰で空を見ることが出来た。

 雲一つ無い、快晴。透き通った青色が、醜く死ぬ俺を嘲笑うかのように輝いている。俺を中心としたドス黒い血溜まりとは正反対の色だ。クソっ。

 流れ出る血液の量に比例して、薄れゆく視界の中に、泣き叫ぶ猫の顔を見たような気がした。


 やりたいことがまだ沢山あったのに。こうして俺は現世への未練たらたらで、死んだ――――――――――――。





 ―――――――――筈だったのだが。



                     ○


 

 猫耳と性転換を同時にやろうとしたらこうなってしまいました。

 ちなみに、主猫公は黒猫です。黒い猫耳ってやっぱイイ☆

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