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帰還

 「金森さんの目が覚めました!」


 覗き込んできた看護師を見返すと、意識が少しハッキリしてきた。


 知らない天井。看護師の服装をした人物が自分の名前を読んでいる。ベッドに横たわっている自分の体は、微塵も動かない。


 どうやら俺は何か怪我をして、それで病院のベッドに寝かせられているらしい。


 銀次は記憶を遡って、どうして自分が病院に担ぎ込まれたのか辿ろうとする。


 いつものように電車で学校に向かっている最中だった。そうしたら、車内で怪しげな男を見かけて。そいつを追いかけていたら、鞄から何か変なものを取り出して——。


 そうだ。あれは爆弾みたいな形をしていた。


 それが俺の最後の記憶——いや。


 違う。何かあったような気がする。その後に何か色々なことがたくさん——。


 ダメだ、どうしても思い出せない。色々なことが起こった気がするけど、そのどれもが完全には思い出せない。何か途方もないことが起こったということは覚えているのに、具体的なことはモヤがかかったように見えてこない。


 こうやって頭を抱えている間にも、記憶が砂のようにこぼれ落ちていくのがわかる。この調子だとわずかに覚えている記憶も、そのうち綺麗になくなっていくのだろう。


 「都……」


 縋るように口にした名前で、銀次の体が一気に目覚める。


 「そうだ……都のところに行かないと」

 「ちょっと金森さん!? ダメですよ、安静にしとかなきゃ!」


 看護師によって、起こしかけた半身を再びベッドに沈められる。


 何よりも真っ先に都の無事を確かめなければ、と銀次は思った。


 都が同じ時間の同じ電車に乗っていたということを、爆発が起こる直前まで知らなかったというのに。


 しかし、銀次には都が同じ事故に巻き込まれたということがわかっていた。


 なぜかはわからない。でもわかるのだ。確信があった。なぜなのか自分でもわからないが——。

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