好きな人
***
家庭教師のバイトを始めたのは、推し——すなわち海のグッズを買うためだった。
『胡桃沢』と表札が出た家のインターホンを押すと、小綺麗な30代の女性が出迎えてくれた。
「あの桑原高校の生徒さんなのよね? 若すぎると思ったけど、それなら安心して娘を任せられるわ〜」
娘——胡桃沢都は、すでに机に向かって待っていた。
小学6年生の女子の部屋とは思えぬ学生寮のような味気のなさに銀次は、豪華な門柱を構えたこの家には似合わない華のない子ども部屋だな——という感想を抱いた。
「よろしくお願いします」
お互いの挨拶を終えて、母親が部屋を出ていった後、都はペコリと頭を下げた。
「頭いいんだね、お兄さん」
「へ?」
「桑原高校っていったら、この辺で一番頭いい高校じゃん。お母さん、高校の名前聞いただけでニコッニコになってたよ」
「都ちゃんはお母さんのことが嫌いなの?」
「なんでそんなふうに思うの」
「しんどそうな顔してるから」
都の小馬鹿にするような半笑いが固まる。
「ごめん。こんなこと訊いちゃって。勉強しないとね」
銀次は気まずくなった空気を切り替えるように、都にノートを見せるように言った。
30分経った頃「……ねえ」と都が言った。
「お兄さん、勉強好きなの?」
「嫌いだよ」
「嫌いなのに勉強して進学校入って、人に勉強教えるバイトまでしてんの?」
「変かな」
「変だよ」
都は大袈裟に鳥肌をかきむしるような真似をする。
「私なんか教科書読むだけで給食食べれなくなるのに」
「給食食べれなくなるの?」
「うん。当番の子に少なめの量にしてもらって、その上で隣の子にほとんどあげてる。だって食べたいって思えないし」
「ずっとそんな感じなの?」
「5年生になって少ししてから。お母さんが中学受験のことをビンビンに意識し始めてから……あ、お母さんには給食食べてないこと内緒だからね」
話しすぎてしまった自分を忌々しく思っているのか、ブスッとした膨れ面になる都。
「お兄さんが先生って感じしないから、なんかベラベラ喋っちゃったじゃん」
「それはしょうがないかな。俺、まだ高校生だし。先生っぽくないのはしょうがないじゃん」
銀次が苦笑いすると、都はふっと表情を和らげた。
「前の先生よりはよっぽどいいよ。前の先生は熱血系っていうのか、ちょっと……いやかなり暑苦しかったから」
「絶対優勝するぞー! って言ってくる感じ?」
「受験に優勝とか言わないでしょ。それを言うなら合格」
気難しいタイプかと思っていたが案外打ち解けてくれて、初バイトに少し緊張していた銀次は肩の力が抜けてくる。
「こっちのやる気がないってわかると、すごい失望した顔してくるんだよね。受験勉強なんて親に言われてやってるだけって理解できないみたい」
都は憂鬱そうにため息を吐き出すと、銀次のことを試すような目でじっと見てきた。
「家庭教師変えてほしいってお願いしたら、お母さん吐いちゃった。その程度のことでそこまで取り乱す? って思ったよね。私が受験落ちたらどうなっちゃうんだろうね」
「落ちたいって思ってる?」
「それもいいな、ってうっとりすることはしょっちゅうあるけど、結局受かるように勉強するんだろうなとも思う」
うんざりした表情で肩を落とす都。
「中学受かった後も、受験勉強から解放されることはないんだよね。中高一貫校でエスカレーター式だから、高校はともかくとして。大学受験はもっと厳しいって聞くしなあ……」
そう言うと、都は机に突っ伏してしまう。
「勉強しなくてよくなるまで、あと10年もあるのかあ……」
長いなあ……と半泣き声で呟く都。机に顔を擦り付けるように、涙を強引に拭った。
「都ちゃんが嫌なのは勉強じゃないよね」
銀次の言葉に、都は思わず顔を上げる。
「都ちゃんは、むしろ勉強が好きな方だと感じるけど」
「なんで? なんでそう思うの?」
「教えてて何となくわかるんだよ。都ちゃんが逃げたいって思ってるのは親の過剰な期待からだよね」
「…………」
都が俯いて黙り込んだかと思うと、そのパッチリとした両目から次々に大粒の涙が出てきたため、銀次は度肝を抜かれた。
「別にお母さんが行かせたがってる中学校に行きたくないわけじゃない」
銀次はティッシュを差し出し、黙って耳を傾けていた。
「ただ何もかも我慢してまで、その学校に受かる必要はあるのかなって……そう思ってるだけ。勉強くらい、公立だろうが私立だろうがちゃんとするのに。できるのに。お母さんは私をまったく信じてくれてない」
5年生になった頃、都から放課後が消えた。週四日の家庭教師に、週三日の学習塾。友達と遊ぶ時間は消え去り、周囲から気を遣われるようになった。
都ちゃんは頭のいい人しか入れない中学を受験するんだから、邪魔しちゃダメ。
善意から、都の友達は彼女と距離を置くようになった。都の前で遊びの相談は決してしなかったし、放課後みんなで下校する時は、ダラダラせずに早く帰るように努めた。
都はありがたく思うと同時に悲しかった。
みんなから気遣われていることをひしひしと感じて、自分のせいでみんなが楽しめていないのではないか、という考えが常に浮かんで、いつしか都自身が遠慮して周りから距離を置くようにした。
「別に勉強が嫌ってわけじゃないの。たださあ……何事も限度ってものがあるじゃん。ゲームでも漫画読むのでも、毎日何時間もそれだけやり続けてればしんどいじゃん。わかるでしょ?」
「うんうん。好きなことだとしても、ずーっと続けるのはキツイよね」
「合間に何か他のことしたいってだけ。せめて週一回は放課後がほしいってだけなのに……息抜きと遊びってどう違うの?」
適度に息抜きしなさい、と言うわりには都の母親は、娘が放課後友達と会うのを許さなかった。遊びは昼休みの30分ほどの時間で十分だろう、という考えだった。
「お母さんに言ったの。ここまで勉強漬けにするのは流石にやりすぎだって。そしたらお母さん『私が子どもの頃はこれくらいできた』って。なんであなたにはできないの、ってこっちがおかしいみたいに言ってくるんだよね」
「都ちゃんはおかしくないよ」
銀次はテキストを閉じると、それを脇に押しやった。
「今日はここまで。残りの時間は息抜きってことにしよう」
まだ授業時間は一時間残っていたが、銀次はそう言って勉強を中断させてしまった。
「でも勉強しないと中学校受からな——」
「都ちゃんなら、そんなに根を詰めなくても受かるよ」
それは気休めではなく、観察から感じ取れた正直な感想だった。
「都ちゃんは頭いいし意欲もある。ちゃんとやってれば受かるって俺は信じてるよ」
「…………」
また都が難しい顔をして黙り込んでしまった。
せっかくなら、明るい表情になってほしいけど——銀次がそう思っていると、都が床に座る銀次の隣に来てスマホを覗き込んだ。
「あ、このゲーム私もやってたよ。今携帯とかゲーム機とか没収されてるからできないけど」
「久しぶりにやってみる?」
「やる」
スマホを渡すやいなや、都はゲームにのめり込んだ。
「銀くん、またね!」
帰る頃には、都は笑顔を見せてくれるようになっていた。
「銀次先生、でしょ。都」
「大丈夫ですよ。好きに呼んでいいからね、都ちゃん」
「ちゃんはいらない。——ねえ銀くん。絶対にバイトやめないでね」
「やめないよ。また会いに来るから元気にしててね」
その日から、銀次は週四日都の家へ通い詰めた。
都と勉強の合間に色んな話をするうちに、どんどん懐かれた。それと同時に家庭の事情が少しずつ飲み込めてきた。
教育熱心な母と家庭に無関心な父。母親は娘に依存気味で、家で父親の悪口ばかり言っている——典型的な機能不全家庭だった。
「お母さんの中では、私だけが希望なんだよね。お父さんにはもう何も期待してないから、せめて娘の私が期待に応えてくれれば……って思ってるんだよ」
「もし受験に落ちたら、自分もお父さんみたいに見放されるかも、って怯えてるの?」
「…………」
まただ。都は図星を突かれると、こんなふうにしばらく黙り込む。
「銀くんって私のこと何でもわかっちゃうんだね」
「ごめん。嫌なこと訊いちゃった?」
「別に嫌ではないよ。びっくりしただけ。でも……そっかあ……」
都は銀次に抱きつくと、頭をグリグリと彼の胸に押し付けた。
「私、それが怖かったんだね。だから嫌だ嫌だって思ってても、本格的に反抗はしなかったんだ。受験したくない塾辞めたいって駄々こねたら、きっとお母さんは…………」
銀次は迷いつつも、都の背中に手を回した。
「今日はもうお休みにしよう。……明日でも明後日でも。都がその気になるまで、しばらくお休みにしよう。俺はただここにいるから」
生徒に対して、勉強せずに自分の好きにしてみろ、などと言うなんて、クビにされてもおかしくない案件だ。
だが、今は都が自分のやりたいことをする方が、都の将来のためになる気がした。
「夏祭りに行きたい」
30分後。赤く腫れた目を洗面所で洗ってきた都が部屋に戻り開口一番に行ったのが、それだった。
「去年は友達と約束したのに行けなかったの。今年は行きたい」
「わかった。俺がお母さんを説得して、友達と夏祭りに行けるように——」
「私、銀くんと二人で行きたい」
「え? 俺と?」
「お願い、銀くん」
「確かに小学生だけで行くより保護者枠の俺と二人の方が、お母さんの承諾は得られそうだけど……」
保護者、という言葉に、都は一瞬不満げな顔になった。
「お祭りに?」
「そう。"先生"と一緒に」
保護者という単語に不快感を示していたくせに、母親に説明する時は都合よく"先生"を強調する都。
「都……ちゃんは順調に頑張っています。ここらでご褒美があってもいいんじゃないでしょうか。その方がモチベーションも上がって身が入ると思うんです。これは俺の経験則から言うんですけど」
「桑原高校に合格した銀次くんが言うなら、そうなのかもしれないわねえ。そうね……1時間で帰ってくるならいいわよ、都」
「やった!」
都はニマニマと満面に笑みを浮かべて、
「じゃあ勉強してくるね! 行こ行こ銀くん!」
グイグイと銀次の腕を引っ張って、自分の部屋に連れていく。
部屋のドアを閉めた瞬間、都は拳を天井に突き上げて喜びを前面に押し出した。
「やったやった! 銀くんとお出かけできるんだ!」
「そんなに喜んでくれるなら、説得に力を貸した甲斐があるよ」
「銀くんありがと。夏祭りまであと二週間……めちゃくちゃ楽しみ」
都に楽しみができて良かった。
銀次は、都だけでなく自分も祭りの日を楽しみにしていることに気づいた。
都と一緒にいる時間を自分も楽しく感じている。
銀次は、一緒に夏祭りに行こうと約束していた友達に『ごめん行けなくなった』と連絡した。
夏休み間近、衝撃的な事件に校内全体が騒然とした。
人気絶頂のトップアイドル、青井海が転校してきたのだ。
どうしてうちの学校に?
どうしてこの微妙なタイミングで?
その疑問に、海は天使のようなアイドルスマイルを浮かべて、はぐらかすだけだった。
銀次は良識あるファンとして、プライベートの彼女に深く踏み込んではいけないという考えを抱いていた。
だから、海が同じ学校にいると知っていても何も行動を起こさずに、精々遠くから眺めるだけにとどめていた。
これからも深く関わるつもりはなかった。いつまでもアイドルとファンという関係でいたかった銀次だが、ある時海が男子生徒数人に絡まれているところを見てしまった。
助けに入ると生徒たちは去っていき、立ち去ろうとした銀次の腕を海が強い力で掴んだ。
「助けてくれてありがとう! お礼をさせてほしいんだけど、名前を教えてもらっていいかな!?」
「あ、その……金森銀次……一年生、です」
「銀次くん。これからよろしくね」
何をよろしくすんの!?
距離の縮め方がおかしい海に、銀次は戸惑う。
あれよあれよという間に近くのカフェに連行され、いつの間にか連絡先を交換していた。その間の記憶は終始曖昧だった。
推しとカフェでお茶しているというシチュエーションに、脳が追いつかなかった。
その日から海は銀次に絡んでくるようになった。毎日メッセージが来るし、放課後にわざわざ一年生の教室まで来て「一緒に帰ろっか」と皆が見てる前で手を繋いできたりした。
銀次と海が付き合っているという認識が学校中に広まるのに、三日もかからなかった。
銀次は否定したのだが皆は、
「でも海ちゃんがそう言ってたんだぞ」
と言うだけだった。
どういうことなのか、昼休みに海を中庭に呼び出して訊いてみたら、彼女はとぼけた顔をして言い放った。
「え? 私たち付き合ってるよね?」
「何言ってるんですか。告白もしてませんしされてもいませんし……」
「でも銀次くん、私のこと大好きなんでしょ?」
海は後ろで手を組むと、銀次の視界を自分で埋め尽くすように下から彼を覗き込んだ。
「なら付き合おうよ。私も銀次くんのこと好きだよ。だから付き合えば双方ともにハッピーじゃん。なんでそんな顔するの?」
「先輩のことは好きですよ。でもそれは……」
「ああ、告白をすっ飛ばしたのは良くないよね。ごめんね、当たり前のことに気づけないで」
海は赤らんだ頬で咳払いすると、熱を帯びた上目遣いで銀次の二の腕を掴んだ。
ポーっとした海の顔が、柔らかな体が、良い匂いが近づいてくる。
「銀次くんのことが好き。私と付き合おう?」
銀次は、この場から逃げたい、と真っ先にそう思った。
思わず後ずさると、海は逃がさないというように距離を縮めてきた。二の腕を強い力で掴んだまま。
「あ……恥ずかしいなあ、もう」
海の視線の先を見ると、教室の窓から生徒が顔を出しているのが見えた。
よくよく辺りを見回してみると、四方八方の教室から生徒の気配と視線を感じる。
何十人もの生徒が、俺たちに注目している。
「銀次くん」
海が銀次に抱きつくと、あちこちでどよめきが起こったのが伝わってくる。
「付き合おう? 私と付き合おう? ねえ」
銀次は、今度はハッキリと『怖い』と感じた。
「先輩。俺は先輩とは——」
「銀次くんってバイトしてるんでしょ」
海が抱きしめる力を強めた。
「うちの学校、バイト禁止だよね。バレたら辞めさせられちゃうよね」
声のトーンが明らかに下がっている。先ほどの甘く囁くような声とは真反対の、絶対零度の硬い声だ。
全身の皮膚に、好奇と若干の非難の視線が突き刺さる。
心臓の鼓動が、全力疾走した後のように暴れ出す。全身が馬鹿みたいに熱いのに、鳥肌が立ってしょうがない。
四面楚歌。銀次の脳内にその四文字が浮かんだ。
「校則違反はよくないよ。……でも真面目な私も彼氏だったら見逃しちゃうなー」
——めちゃくちゃ楽しみ。
銀次の脳裏に、そう言った瞬間の都の笑顔が映し出される。
バイトを辞めさせられたら、都との約束を守れなくなる。
俺はまだ、あの子のそばにいたい。
俺がいなくなれば、あの子は本当に孤独になる。
銀次は、都の笑顔をまた見たかった。
家庭教師という立場を失えば、都を支えることはできなくなる。
それだけは絶対に避けなければいけない。
「……俺も先輩が好きです」
その一言で、銀次と海は恋人同士になった。
銀次は変わらず都に勉強を教えに、胡桃沢家に通っていった。
娘がひどく懐いている上に成績も上がっているため、母親からの信頼度もかなりのものになった。銀次が家を訪れると、必ずケーキや少し手の込んだ菓子をもてなされるようになった。
「今日は学校で何があった?」
「最近悩んでることとかないか?」
本来なら親がするべき質問や会話を、銀次は積極的に行っていった。誰にも心を許せない都の保護者代わりになっているつもりだった。
都も自分のことを兄のように慕っているのだと、そう思っていた。夏祭りの日までは。
「好き」
花火の合間に、都は銀次にもハッキリ聞こえるように言い、手を繋いできた。
ありがとう。俺も好きだよ——と気軽に返せる雰囲気でないことを、都の表情を見て察してしまった。
銀次は戸惑うと同時に喜びに打たれている自分を発見し、何考えてんだよ、と内心で喝を入れる。
でも、嬉しいと思うのは止められない。海に告白された時よりもよほど嬉しい。
しかし——。
「都の気持ちは嬉しいけど俺は高校生だ。付き合うなら同級生の方がよっぽど良いと思う」
「……なんで銀くんは小学生じゃないの」
「そんなことを言われても……」
「でも家庭教師に来てくれたから、出会えたんだよね。そう考えると高校生で良かったのかも」
「本気なのか」
「マジだよ。今は無理だっていうなら、二年後にまたリベンジする。それでも厳しいかもしれないけど」
中学二年生と高校三年生は、銀次の感覚ではまあ確かに厳しいものがあるな……と思わざるをえなかった。
「じゃあ私が18歳になったら? そしたら問題ないよね」
「途方もない話になってきたな……」
「やっぱり銀くん、私が本気じゃないって思ってるでしょ」
「今は本気で言ってるんだろうけど、半年も過ぎれば考え直してると思うよ。これから色んな人と出会っていくんだし。変わらずにずーっと俺だけを好きでいる可能性は、普通に考えてめちゃくちゃ低いよね」
「ビビってるの?」
それもある。都の気持ちが離れていくのを見たくないという気持ち。それと——。
「もし付き合うんだとしたら、都を待たせることになる。都の青春を俺が奪うことになる。……俺はそれが嫌なんだよ」
他の恋人同士とは違う。都が18歳になるまで、できないことはたくさんある。
他の子と違う人生を送らせてしまうことになる。
他の子が当たり前のように享受している喜びを、都は味わえなくなってしまうのだ。
「銀くんってバカなんだね」
「バッ……!?」
「彼氏彼女を作って、キスやセックスすることだけが青春だと思ってるの?」
セックスという単語が都の口から出てきたことに、後ろめたさを覚えて、押し黙ってしまう銀次。
「銀くんはそんなものが喉から手が出るほど欲しいの? 私はそこまで欲しいとは思わないけど」
「いや俺だって、そういうことができなければ灰色の人生——なんて極端な考え持ってるわけじゃないよ」
「……相手のかけがえのない時間を奪うことになるのは、私の方もそうだよ」
銀次の肩にセットした頭をもたせかけて都は言う。
「私も銀くんの青春を奪うつもり。お互い様なんだから、自分ばっかりに責任を負わせないでよ」
まだ高校生一年生なのに一丁前に大人面する銀次を、都は可愛く睨む。
「私待てるよ。一年に一度花火大会に行ける程度の関係でも構わない。その代わりに銀くんの未来を約束させてもらえれば」
都は遠慮がちに小指を絡めた。
「……!」
「今はまだここまで、な」
銀次は都の手を繋いで、揺れる瞳の彼女に微笑みかけた。
花火大会の後、銀次は海と付き合うことになった経緯を都に説明した。
どうせ近いうちに別れるだろうと思っていたが、それでも一応伝えておかないと彼女に対して不誠実だと思ったのだ。
「あの"海ちゃん"が特に取り柄のない俺を好きで居続けるとは思えない。どうせ数ヶ月もしないうちに愛想を尽かされる」
海は惚れっぽい性格なのだ。その上、銀次に強すぎる理想を抱いている。
"冷める"のはあっという間だろう。それまで自分は先輩を刺激しないように大人しくしていよう。
しかし、銀次の予想に反して、海は彼にモーションをかけ続けた。
銀次は照れているふりをして、海からのスキンシップをさりげなく避けていた。
そんなふうに日々が過ぎ、秋も深まってきた頃に都は言いにくそうに切り出した。
「お母さんが私たちのこと怪しんでるの」
都のあまりの懐きっぷりに、銀次はともかく都が家庭教師に恋心を向けているのではないかと、都の母は怪しみ始めていた。
「銀くんのことはお兄ちゃんとしか思ってないって伝えたんだけど、ちょっとこのままじゃまずいかも。——だからねカモフラージュが必要かなって」
都は、同級生の佐藤守に告白されて、それにオーケーの返事をしたことを打ち明けた。
「同級生に彼氏がいるってわかれば、お母さんも怪しまないと思うんだ」
「確かに疑念は消えるだろうけど……佐藤くんはちょっと可哀想だな」
「卒業する頃に『別れよう』って切り出すつもりなんだ。中学が別々になるとなかなか会えなくなっちゃうから、って真っ当な理由で」
守に対する申し訳なさは都も感じているようで「最低なことしてる自覚はあるよ」と眉を下げて言った。
「でも銀くんと引き離される方が嫌だもん。ねえ銀くん。ずっとこのバイト続けてね。大学生になっても。お願い」
「元からそのつもりだよ」
銀次は家庭教師という立場を利用して、ずっと都の近くにいるつもりだった。
そのつもりだったのに——。
都の母親が心臓麻痺で急にこの世を去った。
銀次もその時都の家にいた。都の勉強を見ている時に、リビングの方から人が倒れたような大きな音が聞こえてきたので慌てて見に行くと、都の母が倒れていた。
病院で死亡と診断され、銀次は泣き崩れる都を支えるために一晩中彼女のそばにいた。
母親にはうんざりさせられることも多かったが、それでもいつの日か良好な関係を築き直せることを望んでいたのに、こんな展開を迎えるなんて——。
「私、アメリカに行くことになると思う」
都が病院の廊下でそう語ったので、銀次は「は!? なんで」とつい大声が出てしまった。
「お父さん、アメリカ勤務になるんだって。ちょっと前に話してた。日本に私とお母さんを残して単身赴任するってことに決まってたんだけど、こうなったら……」
子どもを一人で置いていくわけにはいかない。それだったら一緒に連れていった方がいいだろう。それは理解できる。しかし……。
「嫌だなあ……」
都が大声で泣き出したいのを我慢するような声音でもらす。
「離れたくないよ、私……どうにかならないのかなあ……」
語尾にクエスチョンマークはついていなかった。
『どうにかなってほしいけど、どうにもならないよね』と独りごちるような感じだった。
銀次は都の頭を撫で続けて、
「俺はいつまでも待てるから」
と言うしかなかった。
たかが数年程度、キツイけれども待てる。その思いに偽りはないが、物理的な距離が遠くなり、そう簡単に会うことすらできなくなるのは、キツイなんてものじゃないと思った。都も同じ思いを抱いているのが痛いほどわかる。
——アメリカ行きを取りやめられないか、もしくは自分だけ日本に残ることを許してもらえないか、お父さんに聞いてみる。
母親の葬式の前日、都はこっそり家の前に来ていた銀次にそう口早に伝えた。
永礼小学校はもう春休みに入ったと言っていたな。
いつもの電車に揺られながら、銀次はそんなことを考える。
都は葬式会場に着いただろうか。確か8時半からと言っていた。いつ父親に自分の要望を打ち明けるつもりなんだろう——。
こんな落ち着かない気分で学校に行く気になんてなれないが、家にいたからって何ができるわけでもない。気を紛らわせるためにいつも通り学校に行くことにしたが……やはり都のことを考えていると、到底落ち着いていられない。
何か気が紛れるようなものはないかと周囲を見回してみると、怪しい男の存在が目に留まった。
痴漢ではない。いやに大きな鞄を壊れ物のように両手に抱えて、やたら視線をキョロキョロさせている。口元には不気味な笑みが浮かんでいて、まるで悪巧みをしている人のようだと思った。
その男は、車両内の人間を一人一人楽しむように眺めてから、次の車両に移動した。
嫌な予感がした銀次は、男の後を追う。
人波をかき分けるようにして、次から次へと車両を移動していく男の背中を追いかける。
やっぱりおかしい。どうしてわざわざ車内を歩き回るのだろう? トイレか。いや。
どうやら車掌室に向かっているらしかった。
とうとう第一車両に入った時、銀次は悟った。
「あの……!」
銀次が男の背にそう呼びかけた時だった。
男がずっと大事に抱えていた鞄の中から、大仰な装置を取り出した。
なんだ、と思う間もなく爆音が鼓膜をつんざき、それからすぐに視界が真っ白になった。
体が空中に浮かび上がる感覚の後、銀次の意識は途絶えた。
*
目が覚めたら、知らない場所にいた。
いや、俺はそこをよく知っていた。毎日それに乗って学校に向かっていたからだ。
走行中は固く閉ざされている自動ドア。柔らかく快適な座席。次の車両へと繋がる扉。
何度見回してみても、腐るほど目にしてきた電車の中だ。
しかし、よく馴染んだはずのその場所からは、安心感など微塵も感じ取れなかった。
実家のような安心感を覚えるには、あまりに異様な雰囲気に包まれていた。
まず乗客が誰もいない。次に窓の外が真っ暗で何も見えない。このことから今は深夜帯なのか? という考えが思い浮かぶが、俺はそんな時間帯に電車など乗らない。
そもそも電車は走行していなさそうなのだ。振動も物音も微塵も感じない。
停止した状態の誰もいない電車の中で、気づいた時にはただ一人通路に立ち尽くしていた——あまりに現実離れした状況に、金森銀次は思考がついていかなかった。
学生服を着た少年は、当てもなくただ混乱するしかなかった。
「……あ。そうだ俺——」
だんだんと混乱状態から抜け出せてきた銀次は、直前の記憶を思い出した。
電車に揺られて学校に向かっている最中だった。
怪しい男を見かけて追いかけていたら、そいつが鞄から何かを取り出して——。
「あれは爆弾だったのか……!? でも、もしそうだとしたらどうして俺はここに……」
たくさんいた乗客はどこにいった?
銀次は乗客を探しに、各車両を見に行くことにした。
隣の車両に入った途端、銀次は血相を変えて駆け出した。
「都!」
都が通路の真ん中に、仰向けに倒れていた。
「都! おい大丈夫か!?」
「ん……銀くん……?」
都を抱き起こして、とりあえず座席に座らせる。
「ここ電車? なんで誰もいないの。というか窓の外真っ暗なんだけど……」
「ここに来る前のこと思い出せるか?」
「葬儀場に向かってたよ。電車で……そしたらなんか急にふわっと体が浮いたようになって。ねえここは一体——」
その時、実に可愛らしい声が聞こえてきた。
『こんにちは〜』
天井のあたりから聞こえてきた声は、戸惑う二人に能天気な挨拶をした。
『あれれ。まだ誰も目覚めてない? あっ、二人いましたね。こんにちは、金森銀次さん。胡桃沢都さん』
「誰だ。なんで俺たちの名前を知っている?」
『金森銀次さん。あなたはなぜ自分がこの異空間に飛ばされたか、心当たりがおありでしょう?』
銀次の問いは無視して、声の主は続ける。
「俺は爆発に巻き込まれたはずだ。つまり……ここはあの世——なのか?」
『当たらずとも遠からずってところですね〜』
その返事に銀次は一瞬安心するが、また別の不安が湧き上がってくる。
『正確に言うなら、この場所はあの世とこの世の中間——どちらでもない異空間ってとこですね〜』
「お前が俺たちをここに連れてきたのか?」
『その通り。あなたの記憶に違わず、あなた方は電車内の爆発に巻き込まれました。車内にいた大勢の人間が怪我を負い、病院に運ばれ、何人かは意識不明の重体に陥っています』
「俺もそのうちの一人ってことか。都も」
『話が早くて助かります』
こいつの言うことが正しければ、俺たちの"本体"は今ごろ病院のベッドで生死の境を彷徨っている真っ最中というわけか。
『私はあなた方の魂だけを集めて、この空間に閉じ込めました』
「俺たち以外にも、大勢この電車にいるのか」
『大勢ってほどじゃないですけどね。あなたたちも含めて計12人です。私がある基準によって選出したメンバーです』
「ある基準?」
銀次が首を傾げると、エンジンがかかったように謎の声の主が語り出した。
『ええ。私が選出した12人は全員恋人同士なんです! この方たちには、今から私が主催する"ゲーム"に参加してもらいます!』
「ゲーム……?」
嫌な予感を感じ取ったのか、都が震える指先で銀次の袖を掴む。
『そのゲームとは、いわゆるデスゲームです! 参加者であるあなたたちには、主催者である私が出した指示をクリアしてもらいます! クリアできなかったら、えげつないペナルティが下されるので、逆らわない方がいいですよ。ここでは私が神! 絶対の存在です! 皆さんの命は私が握っているのですから!』
高らかに宣言する"神"に、不快感を覚える銀次。
『あ、ちなみにゲームの開催時期は今から一週間です。それでなんと! 一週間までの間に生き残った"たった一組のカップル"には、神である私が何でも一つ願いを叶えてさしあげま〜す!』
「——何でも?」
銀次が素早く反応すると、主催者がニンマリと笑った気配がした——ような気がした。
『ええ。何でもです。あなたの力ではどうにもならないことも、私ならどうとでもできますよ。不老不死になりたいとかでも、人類を絶滅させたいとかでも、過去に戻りたいとかでも。何たって"神"ですので』
それが本当なら俺は——。
「都」
「なに? 銀くん」
「お父さんとの話し合いはうまくいったのか?」
そう尋ねた瞬間、都の表情に暗雲が立ち込めた。
銀次の心は決まった。
「ゲームのルールについて詳しく教えろ」
『おお乗り気ですね』
「あとな……さっき目覚めてるのは俺たち二人だけって言ってたな。今この瞬間も俺たち以外のメンバーは眠っているのか?」
『ええ。まだ皆さん目が覚めないみたいです。一足早く情報を手に入れたいなら、今がチャンスですね』
銀次は「ゲームで死んだらどうなる?」と尋ねた。
『この世界で死んだら、魂が現世に帰るだけですよ。ですので特に叶えたい願いがないなら、さっさと自殺するのが楽ではありますね』
「じゃあ参加者にそのことを説明すれば……!」
「それはダメだ」
都の言葉を押しとどめる銀次。
「この世界では、人を殺しても"殺人"にはならないってことだ。それを知ってしまえば罪悪感というブレーキがなくなって、俺たちなんか瞬く間に殺されるかもしれない」
何でも願いを叶えられる権利が手に入るよ、と言われて、心が揺らがない人間がいるだろうか。
「おい神。頼みがある。他の参加者にはゲームで死んだらどうなるのか、黙っていてほしい」
『んーその方が緊張感が生まれて、ゲームがさらに面白くなりそうですしね。いいでしょう。ここで死んだらどうなるのか。それを知っているのは、あなた方と私だけってことで』
約束を取り付けたところで、他にルールはないのか確認する。
『大体さっき説明した通りのシンプルなルールですよ? 私が一日一回指示を出しますから、参加者のみなさんにはそれをクリアしてもらいます。クリアできなかったらペナルティ——ちなみにペナルティの内容は私の気分によって変わります』
全ては神の気まぐれ次第というわけらしい。
『ここらでメンバー紹介でもしときますかね。——武田王仁さん、桜綾子さん、田中兼さん、佐々木ほのかさん——』
淡々と参加者の名前が読み上げられていく。
銀次が凪いだ心でそれを聞き流していると、聞き捨てならぬ名前が読み上げられた。
『青井海さん。佐藤守さん——』
「「は!?」」
都と銀次の声が重なる。
『あなたたち、お互いに二股してるんですね。やりますね〜』
「うるせえ。色々事情があるんだよ……てかその場合の組み合わせは、俺と都じゃなくて、先輩と俺、都と佐藤くん、って感じになるのか?」
その場合、都が死んでも俺が、自分が死んでも都が勝ち残ってくれれば、願いは叶えられる。
『あ〜。確かに私は恋人同士の皆さんを集めましたが、別に恋人同士じゃなくても"カップル"にはなれますよ』
「どういうことだ」
『ここでいう"カップル"とは、このゲームを共に乗り切る相棒という意味合いです。あることを行えば、恋人に限らず誰とでも相棒になれますよ』
「その"あること"ってのは何だ」
『誓いのキスですよ。このゲームを二人で生き抜くという"誓い"。それを神である私に証明するために、その行為が必要なんです。最初にキスを交わした相手とカップル成立となります。途中で別の方に乗り換えたりはできないので、ご了承くださいね』
「…………」
銀次は顎に手を当ててしばらく考え込んでいたが、やがて都に告げた。
「海先輩と佐藤くんを"カップル"にする」
「え……」
「もちろん二人にはわからないようにな。俺と海先輩、都と佐藤くんがカップルだというふうに、俺たち以外には思わせるんだ。万が一怪しまれるとまずいから、俺たちは初対面ってことで通すぞ。都も協力してくれるか?」
「う、うん。つまり銀くんは……」
察しの良い都が顔を青くする。
銀次は重苦しい表情で頷いた。
銀次と海。都と守。
表面上はこの二組が"カップル"だと思わせた上で、海と守を殺害する。
そうすれば銀次と都は、他の叶えたい願いを持つ参加者がいても、狙われずにすむ。排除対象から自ずと外れることになる。
一週間を乗り切ることができるのだ。
「銀くんはそれでいいの。いくら本当の殺人じゃなくても、憧れの人と小学生を殺すことになっても——」
「俺はどうしても勝ち残りたいんだ」
その一言と真剣な眼差しだけで、そこまでしても叶えたい願いがあるのだと都にもよく伝わった。
「でも、どうやってキスさせるの? 佐藤くんと海ちゃんになんて説明して……」
「おい。二人はまだ眠ってるんだよな?」
銀次が上を向いて尋ねる。
『そりゃもうグッスリと。しばらくは目覚めそうにありませんね。まあ、お二人の寝つきの良さがいかほどかは知りませんが』
その言葉に、銀次は都の手を引いて歩き出す。
二人がどの車両にいるのか探しにいくのだ。
隣の車両に入ると、人形のように整った顔立ちの美女と、スラリとした背格好の男性が並んで倒れていた。
その横を忍び足で通り過ぎてまた次の車両に入った時、都が「あっ」とうめき声をもらす。
「佐藤くんだ」
小学生くらいの男子が、座席に上半身をぐったりと預けるようにして座っていた。
顔を覗き込むとスヤスヤと寝息を立てていて、肩を揺さぶっても起きる気配はない。
幸いにして寝起きは悪い方なようだ。
さらにラッキーなことに、同じ車両に海もいた。ドアの近くで仰向けに倒れているのを見つけた。
起きないでくれよ、と思いながら、銀次はゆっくりと守の脇に手を入れて持ち上げた。そのまま倒れている海の元へ運んでいく。
海と守の唇が、ちょん、と軽く触れる。
「これでカップル成立、だよな……」
『はい、これで佐藤守さんと青井海さんがカップルになりました! 次はあなたたちの番ですね!』
「わっ! ちょっ……!」
車内に響き渡った大声に、銀次が焦り散らかす。
焦るあまり、守を猫のように抱えたまま隣の車両に移動してしまった。
「先輩が目覚めちゃったらどうするんだよ! こんな状況見られたら言い訳するのが——」
『ごめんなさ〜い』
微塵も反省していなさそうな調子で主催者が言う。
明らかに面白がっているな……。
「おい俺と都のこと、参加者にバラそうとするんじゃないぞ」
『そんな酷いことはしないので安心してください。あなたがみなさんを最後まで騙し抜けることを願っていますよ』
主催者は、
『こういうイレギュラーは期待してなかったので、なんだかワクワクしてきました』
と実に楽しげな声音で言った。
銀次は守を座席に下ろして、車両内を見渡す。
よかった。ここには誰もいない。
となると——。
「他の人が起きる前に、私たちもやっとかなきゃだね」
都が唇を触りながら言う。
「…………ああ」
「なんでそんな世界一苦いものを食べたみたいな顔してんの? そんなに私とチューするのが嫌なの?」
「嫌なわけじゃない。ただ、最初のキスは都が14歳になってからしようと計画してたから……」
こういうことは都の成長に合わせてゆっくり進めていきたかったのに、イカれた奴のイカれた趣味のせいで、大事なファーストキスというイベントが狂わされた。
「えいっ」
「!?」
都が銀次の胸ぐらを掴んで、勢いたっぷりにぶちゅっと口付けた。
三秒程度くっつけた後、都の唇が離れていく。
「別にこんくらい全然大したことじゃないじゃん。高校生のくせに何照れてんの」
顔を赤くした銀次を揶揄うように上目遣いに見てくるが、都もまた耳を赤くしていた。
都は、たまにこうやって背伸びしたがる。
銀次はほてった頬が冷めたタイミングで、都に宣言した。
「これから何が起こるかわからないけど、都は何もしなくていいから。全部俺に任せろ。俺が必ずお前を守るから」
「……それは私が小学生だから? 私が子どもだから守らなくちゃってこと?」
今日だけじゃない。私に対して常日頃過保護気味なのは私を子ども扱いしてるからなのか。
都は毎日不安になる。
銀次が自分のことを対等な恋人ではなくて、庇護すべきか弱い動物のように見做しているのではないか、と。
銀次の中で、自分は"彼女"じゃなくて"子ども"なんじゃないかと。
「馬鹿だな、お前は」
銀次は気恥ずかしそうな声でそう言うと、かゆくもない頭をかく。
そして、やけに視線を彷徨わせてポツリと言った。
「お前だからだよ」
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