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序章 終わりなき災難

 僕の名前はサチ、幸福と幸運の「幸」から取ったものだ。

 でも、多分、この世で僕から一番遠い二つの言葉だ。


 僕、生まれた時からずっと不幸だった。

 遺伝病を持って生まれて、小学生の時、両親が死に、体は生まれつき弱くて力がない。友達は次々と「事故」で離れていった。

 14年間、このクソくらえの不幸のせいで、穏やかな生活なんて一瞬も送れなかった。


 ああ、被害妄想症って思われるかもしれないけど、僕、こう思う――この世界、ありとあらゆる手段で僕を殺そうとしてる。


 転生協会のトラック運転手のこと?いや、違う。広大な海の真ん中で、どこにも行かず「原因不明の故障」で、港の僕に向かって突っ込んでくる超大型クルーズ船だ。

 それとも、数十メートルの高さから落ちてくる金属看板が初キルを獲ると思う?残念だけど、その看板の威力、数億ボルトの雷に勝てなかったら、僕、多分まだ一息残ってる。

 もしくは、どこから来たか分からないランダムな殺人鬼にナイフで刺されて死ぬ?そう言えば、12歳の時、警察とギャングの銃撃戦に巻き込まれて、頭抱えて戦闘範囲から逃げ出した話、しなきゃな。


 多分、前世で許されない罪でも犯したんだろ。僕が一息でも残ってる限り、いろんな災難が集まってくる。時間も場所も関係なく、全部バカみたいに荒唐無稽だ。

 簡単なのだと、看板が落ちてくるくらい、ちょっと横に避ければ安全。でも、猛虎と決闘させられる時もあって、全力尽くしても逃げ切れるか分からない。

 生きるために、泥の中で這う。血が出る傷、僕の体じゃもう見慣れたもの。毎回、生と死の境界線をギリギリで飛んで、死神の爪から何度逃れたか分からない。

 でも……誰でもいい、誰か、僕の叫びを聞いてくれるなら、早く教えてくれ――こんな状況に直面したら、僕、一体どうすりゃいいんだ?

 逃げる?受け身や力の借り方試す?それとも、跪いて神に祈って、加護を乞う?

 だって……飛行機がフェリーに墜落してくるなんて災難、初めてだぞ。


「うわあああ!逃げろ!」「もうすぐ陸だ!早く泳げ!」「お前、頭おかしいだろ!?何キロも先だぞ!」


 みんなの叫び声が響き合い、島と島の間の数十キロの海峡で、不気味なメロディーを奏でる。先生、学生、船員、みんな今、頭絞って突然の死から逃れようとしてる。

 でも、どこに逃げるんだ?

 この果てしない海の上で、「生きる」欲望すら妄想って笑われる。

 フェリーのエンジン、壊れて動かねえ。この前、「小さな事故」で足首捻挫して、泳ぐこともできねえ。

 多分、空を見上げて、青空に米粒みたいな飛行機が燃えてるのを見た時、僕、事態がどうなるか分かってた。

 全ての退路、運命に封じられてた。結末、最初から一つだけ。でも……意外なことに、今、僕の心、めっちゃ落ち着いてる。伝説の走馬灯すら見れず、ただ来る死を見つめてる。


 この日、僕の15歳の誕生日、そんで、僕の命日になる。


 朝からの賑やかな楽しさ、学校が急遽旅程中止して、本島にフェリーで戻ることにした。本来の楽しい卒業旅行、僕一人でぶっ壊した。

 僕の、めっちゃ面倒な体質のせいで、関係ない数百人がこんな災難に巻き込まれた。


「……ほんと、不幸だな。」甲板に立ち、僕、自嘲した。


 笑える話、死ぬ前のこの瞬間だけ、次の瞬間に変な災難が来る心配なく、思う存分周りの景色を楽しめる。変な笑みが頬に浮かび、そよ風が吹く中、空中を滑り落ちてくる銀白の機体に両手広げた。

 死、僕にとって、もうそんな怖くねえ。

 青空は変わらず、炎と濃い煙が空に二つの醜い軌跡を描く。フェリー、徐々に沈み、海水が靴を濡らす。でも、次の瞬間、全部粉々に砕ける。

 世界、止まったみたい。客機の先端の銀白が視界を埋め、エンジンの轟音が耳膜を突き破る。

 一瞬、飛行機がフェリーに衝突して大爆発、巨大な水のカーテンが空高く舞い上がり、人のパニックの声も炎に飲み込まれる。そして……青空に浮かぶ少女も一緒に。


「……え、なんだ?」思わず目を瞬かせたけど、彼女、消えねえ。周りの景色も変わらねえ。


 世界、マジで止まった。

 波、固まり、予想した衝突も起こらず、燃える飛行機、空中でピタッと止まる。想像以上に迫力ある鉄の機体、甲板から3メートルもねえ距離で、僕の心臓、勝手にバクバク加速した。


「な、なんなんだ……?」このちょっとバカみたいな光景見て、思わず一歩下がった。


紀誠幸きせいサチ、初めまして。」少女、軽やかに機翼の端に立ち、静かに口を開いた。声、透き通ってて魅力的、でも、口から出た事実はめっちゃ絶望的。


「残念だけど――お前、死んだ。」


「……」僕、呆然とした。


「現実じゃ、飛行機、フェリーに衝突して、計300人以上が死に、お前もこの災難で死んだ。今見てるこの光景、僕が……」


 正直、その後、彼女の言葉、一言も聞いてねえ。


 いや……いやいやいやいや、なんだこれ?夢?こんなリアルな夢、あんのか?それとも、死ぬ前のバカみたいな幻想?

 小説みたいな展開、実際に直面して初めて分かった。人の頭の中の感覚、言葉で表すの、マジで難しい。

 信じられない、呆然、逃げたい不安と痛み、いろんな考えが絡まってグチャグチャに混ざる。それが、今の僕のリアルな気持ち。


「まぁ、すぐ全部受け入れる必要もねえよ。」少女、軽く頭傾げた。輝きのせいで顔、はっきり見えねえけど――多分、笑ってる。


「僕、ただ……お前に選択肢をやりたかっただけ。」


 彼女、口を開き、声に言い表せない力がこもって、一瞬で世界を飲み込んだ。


「僕の名前、ヴィアス。この世の全ての『灯火』を司り、孤独な魂を『転生』に導く至高の女神だ。」


 ヴィアス、話しながら、ゆっくり右手を上げた。その瞬間、指先の動きに合わせて、薄紫の波紋が手から溢れ出し、周りの世界を震わせた。


「死後、天国も地獄もねえ、でも来世はある。人々の魂、死後、肉体を失い、めっちゃ脆い状態で漂う。百年、千年、万年、そんで記憶失って、また人として生まれ変わる。」


 ヴィアス、一瞬止まり、「でも……お前の記憶、失ってほしくねえ。」


 彼女の純金の瞳から、薄紫の煙がわずかに出て、微かだけどめっちゃ鮮明。

 1秒、2秒、全身を硬直させる力が時間と共に集まり、何度も凝縮して、爆発寸前。

 シャッ!ヴィアスが右手を振ると、強烈な気流が一瞬で周りを巻き込み、幻の光景、すぐ雲散霧消して、無限の空に消えた。

 周りの乱雑な色、赤、青、黒煙、粘土みたいに薄紫の波紋で再び溶け合い、最後、全部一つになって、色、全部失った。

 5秒もかからず、果てしない純白の神殿、突然、僕の目の前に現れた。


「サチ、お前がこの人生で味わった苦しみ、人が耐える量、はるかに超えてる。このまま死んで、全部忘れるなんて、残酷すぎる。そもそも……お前、こんな苦しみ受けるべきじゃなかった。」


「だから、もしお前が望むなら、僕、記憶を残して、新しい世界に転生させる。そこで、絶対、本当の人生味わえる。感じたことない色を体験できる。」


「選べ、紀誠幸。」ヴィアス、口を開いた。至高の姿と違って、今、彼女、悪魔みたいな誘惑の笑みを浮かべた。


「このまま記憶失って、魂、神殿に帰るか。それとも、僕に手伝わせて、人間の暖かい陽射し、親の腕の温もり、もう一度……お前だけの『幸福』を味わうか?」


「……!」僕、思わず呼吸止めた。


 正直、今でも彼女、信じられねえ。転生、幸福、僕には遠すぎる。未来を見通す判断力も、身を守る手段もねえ。

 理想的すぎる選択、全部僕の想像か、悪魔の契約が隠れてるんじゃねえかって疑う。


 でも、それだけだ。


 そう、僕、迷う必要なんてねえ。

 僕の人生、もう十分ひどい。騙されても、利用されても、普通の人生送りたいだけ。今、この瞬間、選択が目の前にあるなら――


「転生させてくれ。」


 最初から最後まで、僕の結論、これだけ。前が地獄でも構わねえ。今みたいな空虚な結末じゃなきゃいい。

 僕の言葉聞いて、ヴィアス、キラキラ笑った。その瞬間、周りの景色、ゆっくり揺れ始め、変な感覚、赤ちゃんの泣き声か、新生の喜びみたいなの感じた。

 祈らせてくれ……本当に異世界に行けて、僕だけの幸福な人生味わえるって。


「そうそう、あの世界、男の地位、ちょっと悲惨だけど、お前の#$%^の世界だから、気をつけなよ~」


 ヴィアス、突然口を開き、言葉にノイズ混じってた。でも、残念、僕、反応する暇なかった。


「……何?」最後、ちゃんとした質問すら言えなかった。


 いや、クソ、彼女、今、なんて言った――!?

 問いかける暇もなく、純白の神殿の景色、バラバラに砕けた。無限の宇宙が広がり、中央の歪んだブラックホール、瞬間、強烈な吸引力爆発して、瞬く間に僕を吸い込んだ!


「ヴィアスあああああ――!!!」


 遠い穴の外、ヴィアス、軽く手を振って別れを告げ、純白の神殿の景色も徐々に消えた。

 でも……クソくらえ、マジで騙されたんじゃねえか?

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