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第17章 六つのスキル

 平均的に、この世界の人は成人時の「覚醒」を経て、3~5個の「スキル」を持つ。


 スキル――それは人の本質であり、その性格、能力、未来をある程度表す強大な力であり、この世界で最も上位の法則だ。


 スキルの三大分類の中で、「固有スキル」は特に特殊だ。


 言ってみれば、まるでゲームの必殺技みたいなもので、効果が独特で、力が強く、種類も千変万化だ。


 一つの時代に同じ固有スキルが重複して現れることは通常なく、持ち主が死に、そのスキルが他人に継承されるだけだ。


 そして、それに伴って現れるのが、固有スキルを補助するために生まれた「派生スキル」だ。


 派生スキルは通常2~4個。名前の通り、固有スキルから派生し、固有スキルを補助するために存在する。場合によっては、固有スキルの調整役や発動条件の一つとして機能する。


 詳しく掘り下げるとかなり複雑で、現在のスキル研究学界は主に固有スキルと派生スキルの関係を探求している。


 最後のスキルの形態――天賦スキルは、後天的に得られるものだ。


 でも正直、天賦スキルなんてほとんど存在感がない。だって「天の賦与」を得るには、まず一つの技芸をスキルと同等まで鍛え上げなきゃいけない。普通の人にはまるで天に登るような話だ。


 で、僕? うん……天賦異稟って言うべきかな? 生まれつき6個のスキルを持ってる。固有スキル以外に、派生スキルが5つもある。


 6個だ!


 ルシアによると、人類の歴史でも僕みたいな存在は滅多にいないらしい。6個のスキルを持つ人は、固有スキルの発動条件がめっちゃ複雑か、百年难得一見の天才のどちらかだ。


 でも……ああ、問題はいつだって僕のスキルの数じゃなくて、どんなスキルを持ってるかってことだ。


「ここ見て。」ルシアはテーブルに広げられた4枚の資料を指差した。


「これ、天時堂てんじどうがお前のスキルを調査して、俺たちに整理してくれた結果だ。使い方や注意事項が全部書いてある。スキルをちゃんと活かしたいなら、よく読んどけよ。」


 その言葉を聞いて、僕もその4枚の手書きの調査結果を手に取り、一字一句読み始めた。


 なんて言うか、天時堂は数百年にわたり覚醒儀式を担ってきた組織だけあって、どのスキルもめっちゃ詳細だ。この数枚の紙に書かれた文字や小さな挿絵以外にも、もっとたくさんの関連資料がある。


 僕は紙の資料を詳しく読み始めた。


 派生スキル――「操血そうけつ」。


 自身の血液の組成、形状、質を操る能力を持つ。同時に人体にも影響を与え、持ち主は少ない血液でも生存でき、造血能力も大幅に強化される。


 使用方法:イメージ操作、唱名。


 注意事項:体外に呼び出す際、血液が血管や筋肉を突き破るため、慎重に使わないと重い傷や失血を引き起こす可能性がある。


「操血か……使う時のイメージはなんとなくわかるな。」


「使いこなせれば、このスキルは確かに多くの固有スキルと渡り合える。お前、しっかり鍛えないとな。」ルシアの口角が危うい弧を描いた。


 なんかヤバい予感がじわじわ湧いてきて、頭皮がゾクゾクした……まさかまた訓練って名目で僕を虐待するつもりじゃないよね?


 僕は慌てて首を振って、資料に再び没頭した。


 派生スキル――「超再生ちょうさいせい」。


 スキル「再生」の上位強化版。名前の通り、肉体をある程度急速に治療でき、継続使用すれば、指の切断のような軽度の肉体欠損すら完全に回復可能。


 使用方法:常態発動、唱名。(常態発動時は約2割の効果、唱名で最大効果を得る。)


 注意事項:固有スキル「再生恩典」と異なり、長期間使用すると精神疲労を引き起こす。また、断肢などの重傷は回復できない。


 派生スキル――「危険感知きけんかんち」。


 このスキルの資料は極めて少ない。現在まで、危険を感知して持ち主に警告し、本能で危機を回避させる能力があるとしか確定していない。能力の本質は未来予知に近く、特に致命傷に敏感。


 使用方法:常態発動。


 注意事項:参考資料が不足しているため、データに誤りがある可能性がある。スキル効果は持ち主の状態によって変化する可能性があり、今後正確な情報を提供してほしい。


「うん……生存に役立つスキルが2つか。」


「その通り。この2つのスキルはお前の固有スキルにめっちゃ合う。特に危険感知は、どんな防御スキルにも劣らない強さだ。」


「でも、本能か……」


 本能で危機を回避する。


 シンプルに見えるけど、実際に感じると本能が何なのかよくわからない。


 第六の感覚? それとも直感に近い何か?


「だろ、本能って言葉は口で言うとわかりにくいよな。」


「確かに……」


「まあ、本能ってそんな抽象的なもんでもない……強いて言えば、こんな感じかな。」


 ……え?


 ブーン! 疑問を口にする暇もなく、脳の奥から一瞬で唸りが響き、後頭部から電撃のような刺激が爆発した。


 その瞬間、僕の身体は確かに「本能」で反応した。


 シュッ! ルシアの重く振り下ろした手のひらが空を切り、室内に強い風圧を巻き起こした。間一髪で攻撃を避けた僕、目の前で吹き飛ばされた資料を見ながら、冷や汗を流した。


「どうだ? 本能で反応しただろ?」ルシアがニヤニヤしながら言った。


「……」お前、絶対僕を殺す気だろ?


「まあ、実際、お前の最初の3つのスキルはかなり優秀だ。問題は残りの2つの派生スキルと固有スキルにある。」ルシアがため息をついて言った。


「……」


 その言葉を聞いて、僕、覚悟を決めてテーブルに置かれた、見ただけで不吉な3枚の紙に目を向けた。


 1枚はびっしり書き込まれ、残りの2枚はほぼ空白。まさに両極端だ。


 派生スキル――「狂化きょうか」。


 理性を犠牲にして身体能力を爆発的に上昇させるスキル。持ち主は生物の本能に従って行動し、程度によっては視界内のすべてを破壊する!


 専門のスキル管理機関として、このスキルの危険性を警告します。


 狂化は、まるであなたと正反対の人格を呼び出すようなもので、力を得る一方、普段の生活で溜まった負の感情が注ぎ込まれ、持ち主の暴走を引き起こす。


 このスキルを使用する際は、絶対に慎重に!


 使用方法:唱名。


 *注:過度に使用すると、深刻な精神汚染を引き起こす。


 派生スキル――「此生懸命しせいけんめい」。


 このスキルには一切の資料がない。


 使用方法不明、効果不明。ただし、スキル名の構成学的分析から、ある程度のリスクを伴い、命に関わる代償を直接的または間接的に払う可能性がある。軽率に使用しないでください。


 推測使用方法:唱名。


 固有スキル――「狂戦士之殤きょうせんしのしょう」。


 このスキルも資料が一切ないが、固有スキル「狂戦士」の上位版と推測される。怪我や痛苦を通じて強大な力を得る、極めてリスクの高い固有スキル。


 使用方法:常態発動。


 注意事項:テスト時、必ず「超再生」と組み合わせて使用し、死亡リスクを軽減してください。


 *注:受けたダメージが多いほど、力の加成が高い。


「いや、マジで……刺激的なスキルセットだな。」僕は乾いた笑いを2回漏らし、重い雰囲気を振り払おうとした……まあ、あんまり効果なかったけど。


「心配すんな。」ルシアは右手を顎に当て、目を細めて少し笑った。「勇者選定までに、ちゃんと準備させてやるよ。」


「……ありがとな。」ちょっと恥ずかしくて顔を逸らした。もちろん、普段の訓練がもうちょっと優しかったらもっとありがたいんだけど。


「そういえば、天時堂と俺からお前にちょっとしたプレゼントがある。」


 ルシアは何かを思い出したみたいで、ポケットを漁り、数秒後、精巧な木製の小さな箱が僕の前に現れた。そこにも天時堂の紋章があった。


「これは……!」


「うん、予想通りだろ。」


 ルシアがゆっくり箱を開けると、柔らかくて滑らかなベルベットが中のほとんどの空間を埋め、中央に小さな隙間だけが残され、そこで守られているものが穏やかに輝き、目を引く光を放っていた。


 これ、マジで指輪の箱じゃん!?


「動くなよ。」


 ルシアは慎重に指輪を取り出し、僕の左手を固定した。


 突然の行動に驚いた僕は、ソファの背もたれと一体化しようと後ずさりした。

 でも、ルシアは僕を逃がす気はないみたいで、逆に前に乗り出し、僕をソファの隅に追い詰め、上から見下ろして、そっと指輪を僕の薬指にはめた。


 金属のリングが指を滑り、根元に収まった。その瞬間、銀色のリングから微かな光が放たれ、ゆっくりと縮まり、僕の指のサイズにぴったり合った。


「どうだ、気に入ったか?」


 窓から差し込む陽光が、ルシアの白くてかっこいい顔を照らし、金色の魅力的な輝きを放っていた。


 香りを漂わせる髪が滝のようになびき、尾端が僕の頬を掠めてくすぐったい。


 くそっ……! こいつ、絶対わざとやってるだろ!?


 僕のこの情けない姿を見て、ルシアの気分も上がったみたいだ。笑いながらソファに座り直し、説明を始めた。


「これ、ちょっとしたプレゼントだ。『傷之戒きずのゆびわ』って名前で、お前のダメージの程度を判断する補助用だ。宝石の色は傷の状態で変わる。お前の固有スキルのために特別に作られた道具だ。」


 なるほど、傷の程度と力を調整する魔導具か。


 指輪をじっくり見ると、美しい彫刻の他に、微かに見える魔法陣が刻まれていて、直径はどれも5ミリを超えないのに、センチメートル級の魔法陣に匹敵する複雑さだ。


 確かに、狂戦士之殤を完璧に使いこなすには、常に自分のダメージ状態を確認する必要がある。


 色を数値に換算すると、0%は無傷、100%は死に無限に近い。


 僕の固有スキルの特性上、最弱の下級異獣でも、ある程度のダメージを受けないと対抗できない。


 どうやってダメージを微調整し、最小の損傷で力を得て敵を倒すか。それがこの1ヶ月――いや、残りの3週間で僕が学ばなきゃいけない課題だ。


「訓練の準備できたか?」ルシアが笑って聞いた。


「まあ、そうするしかないよな……」疲れた息を吐き、ルシアと一緒に訓練場に向かった。


 だって、勇者になるって、口で言うだけじゃできないからな。


 浅黄の月の第一週、ルシアの鬼のような特訓で、僕の体力は目に見えて上がった。狂戦士之殤の助けがなくても、六角突から森で無傷で逃げられるくらいにはなったはずだ。


 続く第二週、第三週はスキル訓練が本格的に始まる。ルシアの計画では、「此生懸命」以外の5つのスキルを完全に使いこなさなきゃいけない。


 戦闘特化の狂戦士之殤や操血から、生存特化の超再生や危険感知、さらには危険な狂化まで。


 スキルは自己の延長みたいなもの。それを完全に制御できて、初めて選定儀式の入り口に触れる資格がある。


 魔法も僕の必修リストに入ってる。呪文と魔法陣で構成され、自然の魔素や人体が自然に生み出す魔力で駆動する、スキルのもう一つの形みたいなものだ。


 スキル、魔法、強靭な身体、どれ一つ欠けてもダメ。それが揃って、初めて勇者選定で生き残れる可能性がある。


 ――こうして、資料を読み終えた僕とルシアは、また地獄のような訓練に突入した。


 スキル、体術、知識、魔法。ほぼすべての自由時間を訓練に費やし、身体は常に訓練場の黄砂にまみれてた。


 毎日、毎朝、毎夜、目が覚めてる限り、終わりない課題が僕を待ってた。でも……ルシアがずっとそばにいてくれたからか、意外にも僕、なんとか耐え抜いた。


 時間は飛び、第二週、第三週が白駒の如く過ぎ去り、気づけば浅黄の月22日にたどり着いた。


 この日、僕は短い休暇を得た。

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