表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/45

第14章 天と時の神殿

 華やかな外観の白い建物が僕の目の前に静かに佇み、午後の烈陽に照らされて金色に輝く。中央の高くそびえる塔には金箔が施された時計があり、その横の塔頂には石でできた女神像が、まるで生きているかのように精巧に彫られている。


「行くぞ。さっき連絡済みだから、準備はできてるはずだ。」


 ルシアは手を振って、僕に天時堂てんじどうの重厚な金属製の大門に入るよう促した。


 一歩中に入ると、突然、暖かく穏やかなそよ風が吹いてきて、瞬く間に僕とルシアを包み込み、雑然とした思考や感情を奪い去り、信じられないほどの平穏だけを残した。


「ベレスク様、どうぞお入りください。」大門が完全に閉まるのと同時に、冷たくも熱くもない中性的な声が響いた。


 ルシアに導かれ、僕は天時堂の奥深くへ進み、小さな休息室にたどり着いた。


 ルシアが休息室の両側から去った後、僕、深く息を吸って、最後の扉に手を置いた。力を入れると、重い扉がギィッと音を立ててゆっくり開き、空間が一気に広がった。


 目に飛び込んできたのは、豪華絢爛な大ホールだ。


 四周には6本の柱が立ち、1階の様子が見える円形の2階廊下を支えている。


 周囲の色付きガラスが純白の壁を飾り、燭台の揺れる蝋燭がきらめき、静謐で神聖な雰囲気を醸し出す。一番奥には、白大理石で彫られた灯火の女神像が立っている。


 その前方、ホールの中央は数段低くなっており、半径5メートル近い円形の空間が広がり、そこにはこの世界独自の技術――魔法陣が刻まれている。


 魔法陣は魔法を放つための不可欠な補助ツールで、簡単な線や記号で構成され、硬い素材に刻めば半永久的に使える。まさに転生作品の王道ネタ……みたいな。


 クソ、なんで僕、14年間、こんな知識聞いたことねえんだ?ケイロン先生、わざと教えてなかったんじゃねえか?


「ベレスク様。中央の術式の上に立って、儀式の準備をしてください。」


 僕、ゆっくり階段を降り、術式の真ん中にしっかり立って、洗礼の開始を待った。


 重心が安定すると、すぐ暖かい流れが伝わってきて、この数日の疲れを洗い流すようだった。頭に残る負の感情、全部一瞬で消え、審判で生じた不安もすぐに消えた。


 これが成人礼の「受洗」って段階か……?


「始まるぞ、ノア。しっかり立て。」


 ルシアの声、強烈な貫通力で、邪魔なく僕の耳に届いた。その言葉を聞くなり、僕、本能的に準備した。


 案の定、次の瞬間――


『闇に瞬く光よ、』


 シャッ!


 女の声が響くと、静かだった空気が一気に動き出し、安定して燃える燭火が揺らめき、地面の魔法陣が微かに光り始めた。


 僕、体内から奇妙な力が湧き上がるのを感じた。心臓の鼓動と血の流れに合わせ、骨と肉を駆け巡り、全身に染み渡る。


「……これが魔力か?」思わず呟いた。


『迷える子に道を示し、道なき罪人を光に導き、救済の灯火で世を再び燃やせ。灯火の始祖よ、天地日月の証のもと、加護を降し、子民を祝福し、万物に恩恵を与え、道を示す灯火を点せ……』


 祈祷は続くけど、僕、もう何言ってるか聞き取れなかった。


 めっちゃ暖かい――


 審判の時と同じ、暖かく柔らかい白い光の粒が周りに漂い、目の前の景色、薄い霧に覆われたみたいに、めっちゃぼんやり。


 女神像を見上げると、ちょっと見覚えがある。しばらくして、ゆっくり笑った。


 やっぱり、この世界の灯火の女神、ヴィアス(ヴィアス)だろ。


 生まれつき女神に畏敬の念持ってるからか、この世界じゃ誰も女神の名前を直接呼ばねえ。王都に来てから忙しすぎて、霊灯神教のこと、ちゃんと調べる暇なかった。知ってるのは、灯火と転生を司る女神を崇拝してるってだけ。


 今思うと、確かにヴィアスを描写してる。この像の神聖な雰囲気と合わせて、今、ようやく彼女の正体確信した。


 とはいえ、僕の浅い意識じゃ、この像にいろいろ文句ある。


 鼻……うん、もうちょっと高くていいだろ。


『サチ?』


 五官、深さが足りねえ。目、ちょっと変形しすぎ。体、もっと細長くていい。


『……サチ?』


 彫刻家の問題か?なんか、特定のとこ、縮小してる気が……


『あ?(*低く)』


 ……なんか、翼も縮小してる気が……


『ふぁ……久しぶりだな、サチ――いや、今はノアって呼ぶべきか~?』


「……ヴィアス。」


 めっちゃ懐かしい声が耳に届いた。


 振り返ると、天時堂の奥、金屬の大門の横、ヴィアス、いつからか扉を開けて、静かにそこに立って、僕を待ってる。


 ***


『この数日、お前の周り、いろんなこと起きたな。』ヴィアス、軽く笑った。『たった一日で、10章分近く引き伸ばすとは思わなかったぜ。』


 クソ、僕、そんなつもりねえよ!それに10章って何だよ、変な形容詞!僕の人生、ネット小説じゃねえぞ?


 多分、僕の心の文句、聞こえたんだろ。ヴィアスの笑み、なんかさらに深まった。


 二人で天時堂の重い扉を押し開け、白い城の広大な庭園を散歩しながら、午後のそよ風を感じた。


「そういや、なんでお前、ここにいるんだ?忙しいだろ?」


『まぁ、久しぶりじゃん?ちょうど話したいこともあって、このタイミングで来た。せっかくの神の恩寵だぜ?しっかり受け止めなよ。』


「……」こいつ、女神とのデートが名誉だって言いたいのか?


 数分後、花壇を抜けて、視界が開けた人工湖のほとりに着き、しばらく美しい景色を眺めた。


 ヴィアス、大きく両手広げ、ちょっと色っぽく伸びして、僕を連れて草地に座った。


『ルシアから「スキル」の話、聞いただろ?』


「ああ、さっきルシアがちょっと話してくれた。」


『僕がこっそりお前を呼んだのは、その話のため。聞いてくれ、お前のスキル、めっちゃ危ねえ。』


 ヴィアスの表情見て、僕、つい真剣になった。


『天時堂の測定で、すぐお前のスキル分かる。初めての体験で興奮するかもしれねえけど、警告する。お前のスキル、めっちゃ危ねえ。』


「え?」


『マジだ!スキル使う時、絶対気をつけろ。例えば、お前の固有スキル、慢性的な自殺みたいなもんだ。そんで「狂化きょうか」スキル!精神汚染、冗談じゃねえ。絶対、絶対、^#!>コントロールしろ!』


「……ヴィアス?」その瞬間、ヴィアスの声、ノイズに遮られた。


『これ以降、%(@>?こんな対話できねえ!僕の干渉、増えすぎて、世*)@が僕の]/.関与を防ぎ始めてる。お前、絶対自分の安全に気をつけろ!*遺#!"たちが動き始めて、ベリナ(ベリナ)すぐ$&(|@……!』


 ヴィアスの声、途切れ途切れになった。


 その一瞬、巨大で無視できない視線が僕らをじっと見つめてるの感じた。


 ゾッとする恐ろしい視線で、僕、震え始め、冷や汗かいた。全身、まるですべて見透かされて、プライバシーゼロで晒されてるみたい。ヴィアスの顔色も一瞬、めっちゃ真っ白に。


「クソ、ヴィアス!」


 次の瞬間、僕とヴィアスの間に亀裂が現れ、空間を細かい破片に引き裂いた。全部、転生の時と同じ。


 ゆっくり、無限のブラックホールが広がり、強烈な引力が湧き、亀裂から見えない手が伸び、僕を狂ったように引きずり込んだ!


『「大狂&)#」と「神*#>化」、めっちゃ危ねえ!それ*(?#とスキル「*命_#一+!」絶対&)使#!!、覚えとけ!ランキング&#(*^低い!』


 ヴィアス、周りの虚像世界の激変に必死で抵抗し、小さい声で叫び続けた。


『ノア!世^(@)#この舞台、@<$?!%^族と&)_&*勇者と魔)_+@(#、吼(!#クソくらえ&#$の*)_干渉!』いつも落ち着いてるヴィアス、めっちゃイラついてる!?


「喂!ヴィアス――!」左手を伸ばしてヴィアスをつかもうとしたけど、引力に勝てず、一瞬でブラックホールに吸い込まれた。


 シュッ!世界、また暗くなり、すべての音、一瞬で静寂に。時間が経つ、地面の冷たく硬い感触を感じ、痛む目をゆっくり開くと、ルシアの顔が視界に入った。


「大丈夫か?さっき突然倒れて、めっちゃ心配したぞ。」


 ルシア、優しく僕の頭を撫で、その後ろに天時堂の管理人が立ってる。彼らも何が起きたか分からないみたいで、ちょっと心配そうにこっち見てる。


「……大丈夫、ちょっと疲れただけ。」頭がジンジン痛むのを振って、言った。


「……そうか、無事ならいい。もう最後のステップだ。女神像が持ってる水晶球に触れば、測定結果が出て、俺が宅邸に連れてって休ませる。」


 なんか、本能的にその要求、拒否したくなった。


 ルシアの手を借りて立ち上がり、彼女が指した方向を見ると、確かに女神像が抱えるキラキラした水晶球がある。


 ゆっくり階段登って、右手で水晶球に触れた。


 その瞬間、さっき感じた全てを見透かす視線がまた現れ、僕の全身、毛穴まで見透かされるみたいにガン見された。


 一瞬、鳥肌が立ち、血がザワザワ湧いた。本能的に後ろに下がろうとしたら、ルシアが先に僕を抑えた。


「我慢しろ!」


 シッ……骨まで響く痛みの中、左手の甲、ゆっくり白い煙が立ち始め、肌に赤い紋様が浮かび、歪んで変形した。


 僕の考えすぎか、なんかその過程で、気色悪い笑顔みたいになった。初めて、こんなクソみたいな場所、早く出たいと思った。


 ようやく、吐き気するような視線が終わり、水晶球から虚ろな数字が浮かぶ。僕、急いで水晶球の1メートル範囲から離れ、ビクビクしながら目の前の数字と、白煙の下の腕を見た。


 第四位階・第8247位――これが赤い波紋が凝った結果だ。


「第四位階だけ?ありえねえ……」ルシア、眉をギュッと寄せ、空中に浮かぶ数字を信じられないって感じで睨んだ。


 でも、マジで、今、僕だけ何が起きてるか分からない状態じゃね?


 ヴィアスの足元にへたり込み、長いため息ついて、この数日のクソみたいな出来事を嘆きながら、そのまま倒れ込んで、ルシアが何が起きたかちゃんと説明してくれるの待った。


 もちろん、去る前に、答えなんて聞けなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ