第14章 天と時の神殿
華やかな外観の白い建物が僕の目の前に静かに佇み、午後の烈陽に照らされて金色に輝く。中央の高くそびえる塔には金箔が施された時計があり、その横の塔頂には石でできた女神像が、まるで生きているかのように精巧に彫られている。
「行くぞ。さっき連絡済みだから、準備はできてるはずだ。」
ルシアは手を振って、僕に天時堂の重厚な金属製の大門に入るよう促した。
一歩中に入ると、突然、暖かく穏やかなそよ風が吹いてきて、瞬く間に僕とルシアを包み込み、雑然とした思考や感情を奪い去り、信じられないほどの平穏だけを残した。
「ベレスク様、どうぞお入りください。」大門が完全に閉まるのと同時に、冷たくも熱くもない中性的な声が響いた。
ルシアに導かれ、僕は天時堂の奥深くへ進み、小さな休息室にたどり着いた。
ルシアが休息室の両側から去った後、僕、深く息を吸って、最後の扉に手を置いた。力を入れると、重い扉がギィッと音を立ててゆっくり開き、空間が一気に広がった。
目に飛び込んできたのは、豪華絢爛な大ホールだ。
四周には6本の柱が立ち、1階の様子が見える円形の2階廊下を支えている。
周囲の色付きガラスが純白の壁を飾り、燭台の揺れる蝋燭がきらめき、静謐で神聖な雰囲気を醸し出す。一番奥には、白大理石で彫られた灯火の女神像が立っている。
その前方、ホールの中央は数段低くなっており、半径5メートル近い円形の空間が広がり、そこにはこの世界独自の技術――魔法陣が刻まれている。
魔法陣は魔法を放つための不可欠な補助ツールで、簡単な線や記号で構成され、硬い素材に刻めば半永久的に使える。まさに転生作品の王道ネタ……みたいな。
クソ、なんで僕、14年間、こんな知識聞いたことねえんだ?ケイロン先生、わざと教えてなかったんじゃねえか?
「ベレスク様。中央の術式の上に立って、儀式の準備をしてください。」
僕、ゆっくり階段を降り、術式の真ん中にしっかり立って、洗礼の開始を待った。
重心が安定すると、すぐ暖かい流れが伝わってきて、この数日の疲れを洗い流すようだった。頭に残る負の感情、全部一瞬で消え、審判で生じた不安もすぐに消えた。
これが成人礼の「受洗」って段階か……?
「始まるぞ、ノア。しっかり立て。」
ルシアの声、強烈な貫通力で、邪魔なく僕の耳に届いた。その言葉を聞くなり、僕、本能的に準備した。
案の定、次の瞬間――
『闇に瞬く光よ、』
シャッ!
女の声が響くと、静かだった空気が一気に動き出し、安定して燃える燭火が揺らめき、地面の魔法陣が微かに光り始めた。
僕、体内から奇妙な力が湧き上がるのを感じた。心臓の鼓動と血の流れに合わせ、骨と肉を駆け巡り、全身に染み渡る。
「……これが魔力か?」思わず呟いた。
『迷える子に道を示し、道なき罪人を光に導き、救済の灯火で世を再び燃やせ。灯火の始祖よ、天地日月の証のもと、加護を降し、子民を祝福し、万物に恩恵を与え、道を示す灯火を点せ……』
祈祷は続くけど、僕、もう何言ってるか聞き取れなかった。
めっちゃ暖かい――
審判の時と同じ、暖かく柔らかい白い光の粒が周りに漂い、目の前の景色、薄い霧に覆われたみたいに、めっちゃぼんやり。
女神像を見上げると、ちょっと見覚えがある。しばらくして、ゆっくり笑った。
やっぱり、この世界の灯火の女神、ヴィアス(ヴィアス)だろ。
生まれつき女神に畏敬の念持ってるからか、この世界じゃ誰も女神の名前を直接呼ばねえ。王都に来てから忙しすぎて、霊灯神教のこと、ちゃんと調べる暇なかった。知ってるのは、灯火と転生を司る女神を崇拝してるってだけ。
今思うと、確かにヴィアスを描写してる。この像の神聖な雰囲気と合わせて、今、ようやく彼女の正体確信した。
とはいえ、僕の浅い意識じゃ、この像にいろいろ文句ある。
鼻……うん、もうちょっと高くていいだろ。
『サチ?』
五官、深さが足りねえ。目、ちょっと変形しすぎ。体、もっと細長くていい。
『……サチ?』
彫刻家の問題か?なんか、特定のとこ、縮小してる気が……
『あ?(*低く)』
……なんか、翼も縮小してる気が……
『ふぁ……久しぶりだな、サチ――いや、今はノアって呼ぶべきか~?』
「……ヴィアス。」
めっちゃ懐かしい声が耳に届いた。
振り返ると、天時堂の奥、金屬の大門の横、ヴィアス、いつからか扉を開けて、静かにそこに立って、僕を待ってる。
***
『この数日、お前の周り、いろんなこと起きたな。』ヴィアス、軽く笑った。『たった一日で、10章分近く引き伸ばすとは思わなかったぜ。』
クソ、僕、そんなつもりねえよ!それに10章って何だよ、変な形容詞!僕の人生、ネット小説じゃねえぞ?
多分、僕の心の文句、聞こえたんだろ。ヴィアスの笑み、なんかさらに深まった。
二人で天時堂の重い扉を押し開け、白い城の広大な庭園を散歩しながら、午後のそよ風を感じた。
「そういや、なんでお前、ここにいるんだ?忙しいだろ?」
『まぁ、久しぶりじゃん?ちょうど話したいこともあって、このタイミングで来た。せっかくの神の恩寵だぜ?しっかり受け止めなよ。』
「……」こいつ、女神とのデートが名誉だって言いたいのか?
数分後、花壇を抜けて、視界が開けた人工湖のほとりに着き、しばらく美しい景色を眺めた。
ヴィアス、大きく両手広げ、ちょっと色っぽく伸びして、僕を連れて草地に座った。
『ルシアから「スキル」の話、聞いただろ?』
「ああ、さっきルシアがちょっと話してくれた。」
『僕がこっそりお前を呼んだのは、その話のため。聞いてくれ、お前のスキル、めっちゃ危ねえ。』
ヴィアスの表情見て、僕、つい真剣になった。
『天時堂の測定で、すぐお前のスキル分かる。初めての体験で興奮するかもしれねえけど、警告する。お前のスキル、めっちゃ危ねえ。』
「え?」
『マジだ!スキル使う時、絶対気をつけろ。例えば、お前の固有スキル、慢性的な自殺みたいなもんだ。そんで「狂化」スキル!精神汚染、冗談じゃねえ。絶対、絶対、^#!>コントロールしろ!』
「……ヴィアス?」その瞬間、ヴィアスの声、ノイズに遮られた。
『これ以降、%(@>?こんな対話できねえ!僕の干渉、増えすぎて、世*)@が僕の]/.関与を防ぎ始めてる。お前、絶対自分の安全に気をつけろ!*遺#!"たちが動き始めて、ベリナ(ベリナ)すぐ$&(|@……!』
ヴィアスの声、途切れ途切れになった。
その一瞬、巨大で無視できない視線が僕らをじっと見つめてるの感じた。
ゾッとする恐ろしい視線で、僕、震え始め、冷や汗かいた。全身、まるですべて見透かされて、プライバシーゼロで晒されてるみたい。ヴィアスの顔色も一瞬、めっちゃ真っ白に。
「クソ、ヴィアス!」
次の瞬間、僕とヴィアスの間に亀裂が現れ、空間を細かい破片に引き裂いた。全部、転生の時と同じ。
ゆっくり、無限のブラックホールが広がり、強烈な引力が湧き、亀裂から見えない手が伸び、僕を狂ったように引きずり込んだ!
『「大狂&)#」と「神*#>化」、めっちゃ危ねえ!それ*(?#とスキル「*命_#一+!」絶対&)使#!!、覚えとけ!ランキング&#(*^低い!』
ヴィアス、周りの虚像世界の激変に必死で抵抗し、小さい声で叫び続けた。
『ノア!世^(@)#この舞台、@<$?!%^族と&)_&*勇者と魔)_+@(#、吼(!#クソくらえ&#$の*)_干渉!』いつも落ち着いてるヴィアス、めっちゃイラついてる!?
「喂!ヴィアス――!」左手を伸ばしてヴィアスをつかもうとしたけど、引力に勝てず、一瞬でブラックホールに吸い込まれた。
シュッ!世界、また暗くなり、すべての音、一瞬で静寂に。時間が経つ、地面の冷たく硬い感触を感じ、痛む目をゆっくり開くと、ルシアの顔が視界に入った。
「大丈夫か?さっき突然倒れて、めっちゃ心配したぞ。」
ルシア、優しく僕の頭を撫で、その後ろに天時堂の管理人が立ってる。彼らも何が起きたか分からないみたいで、ちょっと心配そうにこっち見てる。
「……大丈夫、ちょっと疲れただけ。」頭がジンジン痛むのを振って、言った。
「……そうか、無事ならいい。もう最後のステップだ。女神像が持ってる水晶球に触れば、測定結果が出て、俺が宅邸に連れてって休ませる。」
なんか、本能的にその要求、拒否したくなった。
ルシアの手を借りて立ち上がり、彼女が指した方向を見ると、確かに女神像が抱えるキラキラした水晶球がある。
ゆっくり階段登って、右手で水晶球に触れた。
その瞬間、さっき感じた全てを見透かす視線がまた現れ、僕の全身、毛穴まで見透かされるみたいにガン見された。
一瞬、鳥肌が立ち、血がザワザワ湧いた。本能的に後ろに下がろうとしたら、ルシアが先に僕を抑えた。
「我慢しろ!」
シッ……骨まで響く痛みの中、左手の甲、ゆっくり白い煙が立ち始め、肌に赤い紋様が浮かび、歪んで変形した。
僕の考えすぎか、なんかその過程で、気色悪い笑顔みたいになった。初めて、こんなクソみたいな場所、早く出たいと思った。
ようやく、吐き気するような視線が終わり、水晶球から虚ろな数字が浮かぶ。僕、急いで水晶球の1メートル範囲から離れ、ビクビクしながら目の前の数字と、白煙の下の腕を見た。
第四位階・第8247位――これが赤い波紋が凝った結果だ。
「第四位階だけ?ありえねえ……」ルシア、眉をギュッと寄せ、空中に浮かぶ数字を信じられないって感じで睨んだ。
でも、マジで、今、僕だけ何が起きてるか分からない状態じゃね?
ヴィアスの足元にへたり込み、長いため息ついて、この数日のクソみたいな出来事を嘆きながら、そのまま倒れ込んで、ルシアが何が起きたかちゃんと説明してくれるの待った。
もちろん、去る前に、答えなんて聞けなかった。