第3話 レベル1追放者、調査対象になる
静寂が支配する部屋。
重厚な机の上に置かれた報告書を、黒衣の男が無言でめくっていた。
「レオン・グリード……」
"レベル1の雑用係" が、単独でオーガロードを討伐。
「どう思う、ユリウス?」
対面に座るのはギルマス直属の監査官、ユリウス・クラウス。
だが彼は、ただの監査官ではない。
彼は、ギルドマスターをも監視する"影の組織"の一員だった。
「——通常ではありえないな」
低く、冷徹な声。
「だが、これが"事実"ならば……ギルドどころか、"組織"にとっても重大な問題だ」
「……そこまでの話か?」
ギルド幹部が眉をひそめる。
「単なる"レベル1の冒険者"が、なぜそんな脅威になる?」
ユリウスは目を細め、椅子の背にもたれかかる。
「……"錬金術"は知っているな?」
「…ん? もちろんだ。金属を精製し、物質を変化させる技術だろう」
「"経験値錬金"……それも同じようなものだとしたら?」
「……?」
「通常なら、戦闘で得られる経験値は一定だ。しかし、"経験値を生み出す"ことが可能なら?」
「……まさか」
「"無限に成長する"存在が生まれる」
ユリウスは、冷たい眼差しで報告書を見下ろした。
「レオン・グリードの持つ力は、それに該当する可能性がある」
「……ならば?」
ユリウスはゆっくりと立ち上がった。
「調査を行う。必要なら……排除も視野に入れてな」
そう言い残し、ユリウスはギルド本部を後にした——。
「……すげぇ」
俺は自分のステータスを確認し、思わず笑みをこぼした。
【スキル:経験値吸収(Lv1)】
戦闘で得た経験値を、2倍にする
【スキル:経験値錬金(Lv1)】
「経験値」を素材として、新たなスキルを錬成する
オーガロードを倒したことで、このスキルが手に入った。
試しに【経験値錬金】を発動してみる。
——《経験値 500》を錬成開始——
選択肢が浮かぶ。
① 身体能力強化(小)(筋力+3、敏捷+3)
② マナ回復速度上昇(小)(マナ回復速度+10%)
③ ランダムスキル生成(初級)
「……スキルまで生み出せるのか?」
迷ったが、③を選んでみた。
——《ランダムスキル生成》発動——
【スキル:《影足》を獲得しました】
「影足……?」
試しに発動すると、俺の足元がぼんやりと黒くなり、次の瞬間——
俺の体が、一瞬で数メートル先に移動した。
「……瞬間移動?」
いや、違う。"影を踏むように"移動している感覚だ。
(これは、戦闘で相当使えそうだな……)
スキルの可能性に興奮しつつ、次の獲物を探そうとしたその時——
「——そこにいるのは、レオン・グリードか?」
不意に、鋭い声が響いた。
俺が振り向くと、黒衣の男が立っていた。
腰に漆黒の剣。
目は冷たく、氷のように研ぎ澄まされている。
「……誰だ?」
「ギルド本部より派遣された"監査官"、ユリウス・クラウスだ」
「監査官……?」
ユリウスはゆっくりと俺に歩み寄る。
「オーガロードを倒したのは、お前か?」
「……ああ」
「ならば、証明してもらおう」
ユリウスは剣を抜いた。
「——俺と戦え」
「……なるほど、そういう流れか」
俺も魔剣を抜く。
その瞬間——
ユリウスが"消えた"。
「——ッ!?」
俺は反射的に《影足》を発動!
俺の体が影と化し、間一髪で横に跳ぶ!
「ほう……その反応速度、なるほどな」
ユリウスは微笑んだ。
「やはり、ただの"レベル1"ではなさそうだ」
……こいつ、何者だ?
「さあ、試させてもらうぞ。"経験値錬金"の力をな」
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