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#4牢獄からの任命

「んぅ……ん?」

目を開けると、そこは凄く湿っぽくて、薄暗いところだった。数秒前まで推し作品の展覧会に行く夢を見ていた私、アズサにとって最悪の目覚めといえる。

ここはどこか?考えなくてもわかる。地下牢だ。

少し体を動かそうとして、それが出来ないことに気付く。なぜならガッチガチに拘束されているからだ。両手首には枷がついていて、その枷は壁に直接くっついている。足は膝をつかされた状態で、また枷がついている。その枷からはゴツい鎖が伸びていて、その先にはこれまたでっかい鉄球が。おまけに首輪にも金属の何か、多分首輪、がついて、それも壁に鎖で繋がっている。

つまり今、私はバンザイ膝つきの姿勢でほぼ固定されているのだ。ただのJKにする拘束ではない。


ぐきゅる〜〜〜


それよりも、だ。お腹がへった。まじで結構お腹へった。そういえばこの数日、ほぼ一切口にしていない。今になって空腹がこんにちはしてきている。それに体もめちゃくちゃだるい。こころなしか息苦しくて、呼吸も浅くなっている気がする。今の状態を総括すると『なんかとにかく具合が悪い!!』である。全く、私が何をしたというのだ?いや、蜘蛛は倒しちゃったけど、それがまずかったのか??

「☆€<+$\〒*÷$<€#」

「はぁ…い?な、んて……言って…る…?もー、わかんない、や…」

衛兵的な人が私に声をかける。後ろには偉そうなおっさんが控えていた。背格好からして貴族とかその辺りだろう。牢の鍵が空いて、衛兵的な人は私の拘束を外していく。私の体はやっぱり鉛みたいに重くて、外された所から重力に従って落ちていく。本格的にやばそうだ。

「¥#+>^「」→+€○÷$☆☆♪#+*○」

「だからぁ……うん、もういいよ…、わかった…あんたの、言う、通りに…するって」

衛兵的な人は私を引き摺るようにして、地下牢を出て煌びやかな建物の中をすすむ。多分王宮か貴族の屋敷。私の体は今、立てもしないので移動するにはズルズル引き摺られるしかないんだけど、流石にひどい。首輪の鎖を引っ張るもんだから苦しいし、摩擦が痛い。まじで、JKは大事に扱ってほしいものだ。いや、JKはっていうか、人間は大事にしてくれ。

ズルズル進むと、何かどでかい扉の前に着いた。

中から声がして、衛兵的な人が扉を開ける。

「うわぁお」

中はなんか神々しくて、なんか、語彙力失う程度に綺麗だった。そんで、中央にはこれまた凄く高そうな椅子に座るおっさんと、それに跪きながらもこちらをひどく驚いたように見つめる若い男が一人。そして彼らを囲むように文官、武官がずらっとならんでいる。確信した。ここは王宮で、あのおっさんは王だ。ヲタクの勘がそう言っている。

「#<$?」

「:*〒€$+!」

周囲に控える臣下がざわざわする。文句でもあんのか?そう思ってちょっと睨んでやる。すると、ひっっと短い悲鳴を出して、何人かが後ずさる。蜘蛛と同じ反応である。 


カツン


王が王笏で床を軽く叩いた。その音で皆が静まり、王の声を待った。王の力というのは凄いものだ。

「〒」+・,」

「$€」

王が臣下の一人になにか命じたらしい。命じられた臣下は私の側に寄ってきて首輪を外し、私の頭になにかをぶっかける。緑色の液体で、頭の隅にポーションという言葉が浮かんだ。首輪が外れると、何だか息がしやすくなって、体の重さもましになった。どうやら体調不良はこの首輪のせいだったらしい。

「ご苦労。さて、娘よ。お前の名は?」

「えっ?!…えっと…アズサ、です」

王は満足気に頷いた。私はというとまぁまぁびっくりしている。今まで分からなかった言葉が、今ははっきりとわかる。恐らく、さっきかけられたポーションの効果なのだろう。魔法って凄い。

「ではアズサよ。お前に我ら王国への敵意はあるか?」

王は穏やかな、それでいて感情を読ませない声で話す。恐ろしいな、まったく。

「いえ。そんなことは決して!」

王の目を見て、堂々とした態度を心がけてはきはきと言う。正直、痩せ我慢であるが、ここでなよなよしてはなめられてしまうだろう。そんな態度を見て、王はにこりと笑う。

「嘘はないようだ。ではアズサ、お前に機会を与えようではないか」

「…と、言いますと?」

嫌な予感がした。


「アズサ、お前に勇者一行の護衛を任ずる!!」


「……はぁ…?」



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