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#2参戦からの目覚め

「流石に疲れたな、、、」

妖精と分かれてから数日、私はひたすら真っすぐ歩いていた。食料を心配していたけどなぜか、この世界に来てからお腹が空かない。自分の身体が例のスライムになっていないか期待した。喉は渇くので違うことが分かった。悔しい。水は川から飲むことでなんとかしている。流石は異世界、川の水でも前世に比べて抜群に綺麗だった。

「そういえば、私、魔法は使えるんかな?」

だとしたらすごく燃える。厨二病の永遠の夢だからな。私の場合、チートなのか、最弱(に見える最強)なのか、それとも単に最弱なのか、、、うーむ、わからん。言語も分かってないからな、わんちゃん魔力なしとかありうるぞ。そういう主人公たちはフィジカルが最強なんだけど、、、あいにく私の身体能力は無に等しい。50メートル走は堂々の12秒だし、シャトルランは7回だ。どうだいっそ恐ろしいだろう。


「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


近くで叫び声がした。

「なっ?!」

まさか、まさか、【あれ】か?【あれ】なんじゃないのか?!そう直感した瞬間、遅い足が動き出していた。

【あれ】、そう【魔物に追われる人々】である。異世界あるあるのシチュエーションを無視する選択肢は無い!!


その興奮で、アズサは気付いていなかった。

自分に戦闘力が皆無であることを。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いや〜やっちまいましたわ」

数十分後、私は洞穴の中で体育座りの姿勢をとっていた。一人でじゃないよ?でかい蜘蛛に襲われてた騎士っぽい人たちとだよ。簡単に言えば、①アズサ、デカ蜘蛛の近くまで行く②自分が戦うすべをもたないことに漸く気づく③逃げる④バレる⑤襲われる⑥騎士っぽい人たちに助けられる⑦洞窟に私と数人(けが人っぽい騎士っぽい人)が逃げ込む⑧今。という具合だ。いや、馬鹿すぎる。何をやってるんだ、私は。要救助者増やしてどうする、、、。

「$%&##$、`@*+;?」

騎士っぽい人たちの内の一人が声をかけてくる。やはり何を言っているかわからない。妖精語だけ聞こえないとかじゃなかったようだ。

「あ〜すみません、何言ってるか分かんないんスけど、、、」

「$%・?#%&&%@*+:%&#”」

「あの、だから、私、言葉がわからなくて!って、私が言っても通じてないよね、、、」

「、、、、」

騎士っぽい人たちは顔を見合わせる。あちらも困っているらしい。だよね。


どごおおおおおお


「わっ」

外で轟音が聞こえる。この洞窟も崩れてしまいそうだ。このままここにいるのは流石に危ない。逃げたほうがいいけどけが人ばっかりだし、外に出るのも危ないよな。一番良いのは外の人があの蜘蛛を倒すこと、、、ちらりと外を見ると、蜘蛛の一振りで5、6人の騎士っぽい人たちが薙ぎ倒されていた。あれではけが人が増えるばかりだろう。このままじゃジリ貧ってやつだ。まさか人生でジリ貧という言葉を使うことがあるとは。

「何か、何かないか?ほっといたら私含めてお陀仏だぞ」

焦る気持ちも出てきて思考がまとまらない。ああ、だから嫌だったんだ。冒険譚は快適な部屋で第三者目線で見るのが一番いいんだって!ああ!なんでこんなことに?!


恐怖と焦燥に染まった人間は案外馬鹿なものだなと、頭の妙に冷静な部分がそう言った瞬間、爆音とともに暗かった洞窟が明るくなる。


何が起こったのか、それより先に理解する。


死んだ。と。


蜘蛛は一撃で山の斜面を削り、洞窟の上半分を吹き飛ばした。


蜘蛛が洞窟を覗き込んで来る。ああ、終わった。そう思いながらも冷静な自分が蜘蛛の目ってきれいだなと言う。ゲームだったら、いいドロップアイテムになるんだろうなとも言う。

「ねぇ、騎士っぽい人たち、、、この蜘蛛の目って、高く売れたりしますかね?」

騎士っぽい人たちはコクリと頷いてみせる。

通じてないのかもしれないけど、頷いてくれるその心意気が嬉しかった。

ああ、ゲームだったら良いのに、ゲームだったら、この人たちを守れるのに、誰にも負ける気がしないのに!!!




刹那、まばゆい光が辺りを照らした。蜘蛛も、騎士もみな目を瞑った。



光が収まると、そこには少女の人影が一つあった。それは、本物の少女ではなく、仄かに光る黄金の魔力の塊が少女を模したものだった。


そして、その人影の側に一人、あぐらをかいてにやにやと瞳を輝かせる少女がいた。



少女の手にはゲームのコントローラーのようなものが確かに握られていた。



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